「医療法人の設立」によって高い節税効果を得られる
注目される「サ高住」など、介護保険事業への展開を考えるのであれば、医療法人の設立も視野に入れるべきだと考えます。
個人医院でも保険医療機関であれば、「みなし介護保険事業者」として扱われ、居宅療養管理指導や訪問看護、訪問リハビリなどを実施することができますが、本格的な介護保険事業である介護老人保健施設や訪問看護ステーション、デイサービスなどは法人格が必要です。
さらに、将来的に子どもなどに事業を譲りたいと考えた場合、個人よりも医療法人のほうが容易に継承できます。医療法人で開設した診療所や病院の病床は、誰が医療法人を経営していても医療法人の許可病床であって、代替わりなどの影響を受けないからです。
法人税は2段階の比例税率となり、800万円以下なら22%、800万円以上でも30%となります。また、社会保険診療報酬分には事業税がかからないため、実効税率は最高でも約35%程度におさえることができるのです。
さらに、個人診療所の場合は給料という概念がないため、収入を経費にすることはできませんが、医療法人なら理事長報酬を経費にできるうえ、理事にした家族に対して報酬を払うこともできます。所得税に関しても、所得を分散したうえで給与所得控除が適用されるので節税効果が見込めるというわけです。
「余剰金」を自由に使えないというデメリットも・・・
一方で、医療法の規制を受けるという医療法人ならではのデメリットもあります。医療法人は剰余金の配当が禁止されているので、一般法人のように利益が出たからといって出資者に分配できません。また、財産の確実な保全が要求されるため、株式投資などはできませんし、法人の資金を役員に貸し付ける行為なども認められません。
つまり、経営が軌道に乗っても、余剰金を自由に使うことができないというわけなのです。
また、医療法改正にともなって、医療法人を解散した際に、残った財産を出資者で分け合うことができなくなりました。残った財産は、国、地方公共団体、あるいは一定の医療法人等に帰属することになったのです。
つまり、個人事業の場合には、クリニックで築き上げた財産は全てドクター個人のものですが、これからは医療法人にすると、法人がいくら利益をあげ財産を貯めても、最後に出資者に返還されるのは当初出資した金額までになるというわけです。