さらなる人口増加に備え、交通手段の充実に注力するLA
日本に比べるとまだまだ車社会のアメリカですが、ロサンゼルスでは、新しくメトロラインができたり、ライトレール(道路に専用線路がある鉄道)が拡大したりと、近年鉄道を中心とした交通機関の開発計画が進んでいます。渋滞緩和・街の活性化・二酸化炭素削減など理由はさまざまですが、さらなる人口増加に備え、交通手段の選択肢を増やす取り組みは不動産市場にも好影響を与えるでしょう。
2040年頃の開設を目途に、多くの路線計画が発表されていますが、今回はそのなかから、4つのプロジェクトについてご紹介します。
①クレンショー/LAX間路線プロジェクト
LAX(ロサンゼルス国際空港)は、年間5,500万人が利用するカリフォルニア州最大の旅客数を誇る国際空港ですが、長年LAXへとつながる路線の不足が課題でした。もちろん、車やタクシー、バスといった交通手段をはじめ、南を走るグリーンラインというライトレールもありますし、不便ではありません。しかし、渋滞緩和、そしてさらなる旅行者の増加を狙い、より一層快適にLAXを利用できるようにするためには、路線の拡大という選択肢が最適でした。
そして計画されたのが、クレンショーとLAXを結ぶ路線でした。全長8.5マイルで、全8つの駅で構成される予定です。現在すでに建設がはじまっており、開設は来年2019年を予定しています。グリーンラインと同様に、LAXのターミナルまで直接はつながりませんが、非常に混雑する無料シャトルバスではなく、2023年に開設予定のターミナル1~8へとつなぐ「People Mover(全自動無人運転車両)」への乗り継ぎが可能となります。この路線の需要はさらに高まるでしょう。
空港の利便性の向上ももちろんですが、途中の区間に新しい駅ができることで、その周辺のスポット――たとえば、レイマート・パークなどに足を運ぶ人の増加や都市開発の活性化など、メリットも大きいです。
②リージョナルコネクタープロジェクト
2021年に開設が予定されているのが、「リージョナルコネクター」と呼ばれる路線のプロジェクトです。現在、ユニオンステーションと7thストリート/メトロセンターは、「レッドライン」と「パープルライン」という地下鉄でつながっていますが、ライトレールである「ゴールドライン」や「ブルーライン」、「エクスポライン」からの乗車だと、乗り継ぎが発生してしまいます。そこで新しく、ユニオンステーションと7thストリート/メトロセンターを「ゴールドライン」と「ブルーライン」でつなぎ、一本で行けるようにする計画です。完成すると、上から見た路線はちょうど8の字のように見えます。
利便性の向上ももちろんですが、イーストロサンゼルスとサンタモニカの行き来が20分短縮できるようになります。これまで自動車を選択していた方にとって、鉄道利用の検討材料となるため、渋滞緩和にも一役買いそうです。
道路上に専用線路を確保する「BRTプロジェクト」
③バーモントBRTプロジェクト
ここまで鉄道の路線についてご紹介してきましたが、別の交通手段を利用したプロジェクトを見ていきましょう。バーモントアベニューといえば、ロサンゼルスのなかでも屈指の大渋滞通りであり、他の手段が必要となっています。そこで考えられたのが、BRT(Bus Rapid Transit)の利用でした。BRTは、通常のバスと違って、道路上に専用軌道を確保するので、渋滞に邪魔されません。結果として、スピードアップを図ることができます。
区間としては、レッドラインの南と120thストリートを直線で結んでいます。自動車以外のオプションを提供できる点もメリットですが、レッドライン、エクスポライン、グリーンラインに乗り継ぎができるという点でも、さまざまな可能性を見せてくれそうです。2028年に運行開始予定であり、現在はBRTのスペースを確保する方法を検討中です。
④高速鉄道プロジェクト
2029年の完成を目指して、ロサンゼルスとサンフランシスコ間の約500マイルを結ぶ高速鉄道のプロジェクトが進行しています。現在、飛行機以外の交通手段では、寝台電車で約12時間、鉄道とバスを併用しても約9時間かかります。しかし、この高速鉄道が開通すれば、約2時間40分で移動が可能になります。完成すれば、カリフォルニア州全体にとっても大きな経済効果につながるでしょう。
この高速鉄道のプロジェクトは、2つのフェーズからなっていて、上記はフェーズ1となります。予算としては684億ドルを予定しており、アメリカ最大の公共事業といわれています。
呉 純子
WIN/WIN Properties,LLC パートナー(アメリカ代表)