英国の離脱問題が注目のEU。25日に首脳会議が開かれるが、トゥスクEU大統領は離脱案が原則合意に達したとし、同会議の議題にあげられることを公表した。市場は好感する一方で、メルケル独首相を中心に疑念の声もあがっており、予断を許さない状況は続いている。28日にはパウエルFRB議長の講演、30日からはG20が予定されており、今週は市場の不透明感が払拭される「転換点」となる可能性もある。

25日のEU首脳会議で、ブレグジットは合意に至るのか

トゥスクEU大統領は、英国のEU離脱に関する合意案に原則合意に達し、25日に開催予定のEU首脳会議に諮(はか)られると公表した。メイ英首相も閣議での報告後、首相官邸前で記者会見し、EUとの合意が手の届くところまで来ており、それを実現させると述べた。ブルームバーグの報道によると、合意案は、英国とEU間が自由貿易圏を創設し、規制・関税面で密接に協力するという内容である。

 

離脱交渉で最も難航したアイルランド国境問題に関しては、EUと英国双方が永続的な解決策に取り組むとの宣言にとどまった。こうした報道を受けて、ユーロもポンドも値を戻した。

 

ところが、シナス欧州委員会報道官が、スペインの主張しているジブラルタルの意見対立がいまだ合意できていないとコメントしたほか、メルケル独首相もアイルランド問題が未解決のままであるとして、合意が成立したとの見方に疑問を呈した。メルケル首相は合意文書をEU首脳会議前に仕上げることができなければ首脳会議に出席したくはないと表明しており、この週末25日に開かれるEU首脳会議で合意し、調印の段取りが伝えられているが、予断を許さない状況というのが実状だろう。

 

 

28日のパウエル講演、30日からのG20も見逃せない

また、来週11月30日、12月1日にアルゼンチンで開かれる20カ国・地域(G20)サミットに出席するトランプ米大統領と習近平中国国家主席が首脳会議を行う予定である。中国は、今月に入って通商問題に関する協議項目のリストを米国に送付したり、米中両国が事前に協議を続けていたりしており、双方の歩み寄りや対立緩和への期待が高まっている。ただ、貿易摩擦の問題は、短期的に雲散霧消するようなものではなく、より長期的なものになるだろう。

 

他には、28日に予定されているパウエルFRB議長の講演にも注目が集まろう。直近では、クラリダ副議長が、海外の経済成長鈍化にも注意を払う必要があると発言するなど、ハト派的な金融政策スタンスへの期待が高まっている。ただ、足元の経済状況や特に賃金の上昇圧力や関税の影響を考慮すると、市場が織り込んでいる12月のFOMCでの0.25ポイントの利上げは、実施されるだろう。問題は、来年以降の利上げに対するFRBのスタンスで、9月の利上げ実施後のような強気の見方ではなく、慎重で柔軟な姿勢を打ち出せば、金利上昇による米国経済の成長鈍化に対する懸念が縮小するかもしれない。

 

来週は、市場に漂う不透明感を払拭するターニングポイントとなるかどうか期待の高まる週になるだろう。心して臨みたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

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    本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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