後継者不在で事業所の清算を望む企業も
理由⑤ 業績不振・後継者不在:事業所の清算
業績不振による事業所清算の相談もあります。この場合、まず多いのが、債権者である銀行から、債務者の業績不振を理由として、抵当権をつけている債務者の不動産をなるべく高く売ってあげてほしいと紹介されて不動産の売却の仲介をするケースです。
債務者が借金を全額返せない場合、本来なら裁判所の競売手続で、抵当に入れた不動産は売却されます。
ただ、このような競売手続によらないで、宅建業者が仲介して買手を見つけ、抵当権をつけている銀行等と交渉して、全額弁済でなくても抵当権の解除をしてもらって行う売買である「任意売却」を選択することも可能です。
任意売却は、競売より不動産を高くスピーディーに売却でき、売主も競売では難しい引越費用を出してもらえることもあります。そこで、銀行等も競売よりも任意売却できるものはなるべく任意売却で進めることを望みます。
また、債務者から債務整理の依頼を受けた弁護士からの紹介もあります。お金を銀行等から借りている債務者が借入金の全額を銀行に返済できない場合、債務整理の交渉を弁護士に依頼することがあるためです。
この場合も、宅建業者が弁護士から依頼を受けて任意売却による不動産の売却の仲介を行います。他に、破産管財人からの依頼もあります。お金を銀行等から借りている債務者が、債務超過で自分の財産で支払不能となった場合、裁判所で破産宣告を受け破産管財人によって破産者の不動産を売却し、その代金を各債権者に分配します。そこで、破産管財人からの依頼で宅建業者が任意売却の仲介を行います。
次に、後継者不在のため事業所を清算したいという相談があります。後継者不在が主な要因となって「会社を閉じるために事業所を売りたい」という申し出です。
ちなみに日本の企業の99.7%は中小企業ですが、順風満帆の企業は少数で、大半は経営不振や後継者不在などの不安や問題を抱えています。
ニーズの多様化や時代の急変化に適応できない、もしくは必要とされなくなることで業績不振に陥ることもありますし、少子高齢化や後継者となるべき子が安定を求めて大手企業に就職することなどを原因とした後継者不在企業が増えているからです。
経済産業省によれば、今後、中小企業全体の3割にあたる127万社で後継者が不在の状態となる見通しです。
特に、家族経営の小規模事業者の清算が目立っているのは、資金力や営業力などの点で弱く、経済競争の中で淘汰されやすいことや、大企業が下請けのリストラを考えたときに対象になりやすいこと、限られた人員の中で後継者が見つかりにくいことなどの理由が考えられます。
結果として、清算を選ぶ中小企業が増加しているのです。清算によって使用されなくなった店舗や工場などの不動産が売却対象となるのです。中小企業の生き残りは今後も厳しさを増すはずで、清算せざるを得ない企業は減らないでしょう。
理由⑥ 離婚:夫婦の共有名義で購入した不動産の売却
最後は、離婚にまつわる不動産の売却です。離婚後、夫が自分名義のマイホームを売却して妻への慰謝料や子の養育費に充てるとか、夫婦共有名義の自宅を売却して金銭で清算するといったケースがあります。
厚生労働省の統計(人口動態統計)によれば、特に熟年離婚が増えているといった傾向が読み取れます。どのようなことが離婚の原因となったかによって、慰謝料や子どもがいる場合には養育費が発生するという問題もありますが、基本的に離婚時には現在所有している財産についての分与は公平に行われることになります。
共有名義の不動産の場合には夫婦どちらかがそのまま住むとしたら、住むほうは住まないほうに、相手方の持分の代わりとなる何かを提供しなければなりません。例えば金銭などを渡すということになります。金銭がなければ売却して現金化して分割すればよいでしょう。
自宅にローンが残っている場合は、売却代金でローンの残債務を支払って、余りを分配することになります。