ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

英国ポンドは18年後半、金融政策と主には英国のEU離脱交渉を上下の変動要因とする傾向が強まっています(図表1参照)。離脱協定の実質的な交渉期限(18年12月)が刻々と迫る中、ジョンソン閣外相の辞任はEUとの合意を目指したメイ首相の提案が親EU派にも受け入れ難い内容を含んでいたことが示唆されます。

英国EU離脱:メイ政権から、また抗議の辞任 メイ首相の折衷案に疑問

英国のジョンソン運輸担当閣外相は2018年11月9日、メイ英首相の欧州連合(EU)からの離脱方針に抗議するため辞任を表明しました。なお、ジョンソン閣外相は、7月にメイ首相のEUとの関係を重視した穏健路線に抗議して外相を辞任したボリス・ジョンソン氏の弟です。

 

ただ、兄のボリス・ジョンソン氏は強硬な離脱派として有名ですが、ジョンソン閣外相は親EU派と見られています。

どこに注目すべきか: 英国EU離脱、離脱協定、再国民投票

英国ポンドは18年後半、金融政策と主には英国のEU離脱交渉を上下の変動要因とする傾向が強まっています(図表1参照)。離脱協定の実質的な交渉期限(18年12月)が刻々と迫る中、ジョンソン閣外相の辞任はEUとの合意を目指したメイ首相の提案が親EU派にも受け入れ難い内容を含んでいたことが示唆されます。

 

[図表1]英国ポンド(対ドル)レートの推移

日次、期間:2017年11月13日~ 2018年11月12日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2017年11月13日~ 2018年11月12日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

英国のEU離脱に関する報道は、英国とEUとの合意が近い、いや遠のいたと相反する内容が繰り返され、状況が把握しづらくなっています。そこで、現在の交渉の争点を簡単に整理して、ジョンソン閣外相辞任の意味を述べます。

 

EUに加盟している英国は、単一市場や関税同盟を共有していましたが、EU離脱を巡り、EUと離脱の条件を取り決める「離脱協定」を主に現在交渉しています。

 

 

離脱協定の期限は19年3月ですが、「合意」には英国とEU議会の承認が必要となるため、実質的な合意期限が18年12月となっています。離脱協定ではEUとの精算金やEUに居住する英国国民の権利保護など95%の項目は合意に達しています。仮にこの5%が解決し、最終合意に至り、議会承認を得れば、来年3月に離脱しても20年末までの「移行期間」に入ります。この間、英国は事実上、EUに残り単一市場や関税同盟を維持しつつ、EUとの将来の関係を話し合います。いわゆる「秩序ある離脱」です。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

ただ、残り5%で問題となっているアイルランドとの国境問題などが合意できなければ、これまで合意した内容は全て白紙に戻し、移行期間も撤回されます。いわゆる「無秩序な離脱」です。

 

もっとも、英国議会は単一市場アクセスから抜けEUとの関係を希薄とする強硬(ハード)路線と、単一市場アクセスなどを一部残しEUとの関係を離脱後も重視する穏健(ソフト)路線に分かれています。その中で、メイ首相が推し進めている提案はソフト離脱路線です。

 

為替市場におけるポンドの動きとして、以前のソフト路線優勢ならポンド買い、反対ならポンド売りという構図に加え、実質的な交渉合意期限が迫る中、無秩序な離脱なら売り、回避できれば買いの要素が強まったように思われます。

 

メイ首相は7月からEU離脱担当省の役割を縮小、自らEU離脱交渉を指揮しています。このような構図の中で、メイ首相の提案内容の詳細は不明ですが、EUに寄り添う内容と見られます。ジョンソン閣外相だけでなく、他の有力親EUメンバーも、メイ首相の提案に疑問を投げかけています。例えば、アイルランドとの国境検査を回避するために、EUルールに従い続けるといった、英国の強硬派はもちろん、穏健派でも受け入れ難い内容が含まれているとの報道もあります。

 

反対に、EU側からのコメントに「合意は近い」という内容が多かったのも、立場の違いを表したに過ぎない可能性があります。EUとの交渉は12月が期限ですが、たとえそこで合意できても、議会を通過しなければ無秩序な離脱となるリスクはあり、対EUだけでなく、議会との関係に注意も必要です。

 

なお、ジョンソン閣外相は再国民投票の実施に言及しました。メイ首相が首を縦に振らないことから可能性はほぼ無いと見られますが、少なくとも可能性はゼロではないようです。

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

(2018年11月13日)  

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録