本記事では、子どもの考えるメカニズムが動き始める「音読」の方法を取り上げます。

音読をすることで「文字に対する抵抗」をなくす

東大・京大に合格する子どもの育て方、今回は国語の効果的な勉強法を紹介します。

 

国語の勉強法として、お薦めなのが音読です。日本でも江戸時代の寺子屋では、論語などの四書五経を素読させていました。素読とは、辞書には次のように説明されています。

 

「書物、特に漢文で、内容の理解は二の次にして、文字だけを声に出して読むこと」

 

奇しくも、日本人として初のノーベル受賞者となった湯川秀樹博士も、幼い頃から漢文の素読を続けていたそうです。その湯川氏は自伝『旅人ある物理学者の回想』(角川ソフィア文庫)に素読の効果を、こう記しています。

 

「私はこのころの漢籍の素読を決してむだだったとは思わない。(中略)意味もわからずに入って行った漢籍が、大きな収穫をもたらしている。その後、大人の書物をよみ出す時に、文字に対する抵抗は全くなかった。漢字に慣れていたからであろう。慣れるということは怖ろしいことだ。ただ、祖父の声につれて復唱するだけで、知らずしらず漢字に親しみ、その後の読書を容易にしてくれたのは事実である」

 

小学校でも国語の授業では、必ず音読をしています。低学年の時には、音読が宿題となることも多いようです。それでスラスラと読めるようになればよいのですが、中には音読がどうしても苦手な子どももいます。そこで、ぜひ家庭で音読の練習をさせてあげてほしいのです。

音読がスムーズにできなくても、褒めることが大事

そもそも、なぜ音読をスムーズにできないのでしょうか。その理由は、文章中に知らない言葉が含まれているからです。例えば「たどたどしい」と書かれていても、この言葉を知らなければ「たどた・どしい」と分けて読んでしまうかもしれません。

 

そこで読み間違えた時には、決して叱るのではなく、「これは、たどたどしいと読むのよ」と教えてあげてください。この時、絶対にやってはダメなのが、子どもを否定するような言葉を口に出すこと。「こんな文章もきちんと読めないの」とか「ダメねえ」ということも厳禁です。

 

そうではなく「たどたどしいという言葉があるの。今日は、この言葉を覚えようね」と励まします。そして、うまく読めれば、ほめてください。

 

こうして音読練習をすれば、目で文章を見ると同時に、口から発音された自分の声が耳から入ってきます。この一連のプロセスを経ることで、言葉が知識として脳にインプットされます。これを繰り返すことで知識が定着します。寺子屋での素読の狙いは、おそらく漢籍の知識定着にあったのでしょう。

 

ぜひ家庭でも子どもの音読に付き合ってあげてください。音読の場合は、算数で考える訓練をする時と違い、親は何か用事をしながらでも大丈夫です。

 

ただし、その場合は、意識を子どもの声に向けて聞き逃さないように注意すること、そしてできるだけたくさんほめてあげるよう意識しましょう。ポイントは、とにかく気持ちよく読めるように、子どもの気分を乗せていくことです。

 

「良い声で読んでいるね」

「聞いていて気持ちよくなるよ」

「楽しそうに読めているね」

 

とにかくほめるのです。明らかに読み方を間違えた時、初めて読む言葉に出会った時は、読み方を教えてあげてください。

音読が上手になれば、国語の時間が楽しみになる

小学校低学年の頃から、早くも国語の時間に先生から当てられるのを嫌がる子どもがいます。その理由の多くは、音読をうまくできないからです。その状態を放置しておくと、やがては国語嫌いにつながっていきます。

 

けれども、音読は練習すれば、練習した分だけ確実にうまくなります。家で少し練習すれば、効果はてきめん、必ず上達します。音読が滑らかにできるようになると、国語の時間が楽しみになります。

 

その先に広がっているのは、文章を読む楽しさであり、読書の楽しさです。もちろん、読書が、頭を使う訓練となることはいうまでもありません。文章に書かれている内容、その意味を「考え」ながら読むのですから。

早めに音読習慣をつけることで「考える力」を強化

音読ができるようになれば、ぜひ、次に取り組んでいただきたい国語上達法があります。

 

一回目の音読が終わったら「上手に読めたね」とほめて、「もう一回読んでみましょうか。二回目は、きっと、もっと上手に読めるよ」と誘う。最低、二回は繰り返して読ませるのです。

 

繰り返すことにより文章の中身が脳に定着します。仮にわからなかった言葉があったとしても、その意味を覚えることができます。

 

読み終わったら、次は書かれていた語句や言葉の意味について、子どもと話し合ってください。例えば「文化の日」について書かれた文章であれば、「文化ってどういう意味だろう?」と問いかけるのです。

 

質問に対する答えは、すべて受け入れてあげる。「なるほど、確かにそうだね」と相槌を打ってあげる。その上で、時々「なぜ、そう思うの?」と、思考を引き起こすマジックワードを投げかける。

 

こうした練習を繰り返すことで、子どもの国語力は確実に向上します。国語で考える力を伸ばすためには、文章に書かれている内容を、まず頭の中にしっかり収めることが必要です。きちんとインプットすることで、考えるメカニズムが動き始めるのです。

 

音読はインプット作業の第一歩として必要不可欠なトレーニングです。その音読習慣はできる限り早い時期、遅くとも小学校3年生ぐらいまでにつけてあげると、考える力が大きく伸びます。

 

国語ができる子どもは、読書の習慣を幼い頃から身につけています。読み聞かせにも効果はありますが、できれば早い時期から、本の読み方を教えてあげてください。文字を読むこと自体が、すなわち考えることです。

 

読書が好きな子どもは、塾でも国語の授業の時間に問題のプリントを渡した瞬間から、今日はどんな文章かな、とワクワクしながら読んでいます。楽しみながら読むことで、頭は活性化します。そんな読み方を続けていれば、自然と文章に書かれている内容を理解し、物語の場合なら感動を覚えるようになるでしょう。

 

こうして書かれている言葉以上の何かが、心に響くようになれば、その子どもは必ず国語を好きになります。文章を読むことを通じて、頭を鍛えることができるのです。そのための分岐点が、私の経験上からいえば、おそらく小学校3年生ぐらいです。

 

ですから国語の音読には、できる限り早い時期から取り組ませることをお薦めします。

 

 

江藤 宏

関西教育企画株式会社 灘学習院 学院長

 

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