電力会社や通信会社が、事業用とプライベート用を判断して、請求書を分けて送ってくれればいいのですが……残念ながらそうもいきません。
じゃあ、個人の財布から〝持ち出し〟でやるしかないのか?
ご安心ください。こうした事業用の経費と家事上の経費が一体となって出される経費を「家事関連費」といいますが、何らかの形で「仕事で使った」と区分しさえすれば、経費として認められるのです。
仕事で使った経費は「割合」を決めて算出
ただし、経費として計上できるのは、あくまでも「仕事で使っている割合」のみです。ザックリとした計算法は、以下のようになります。
●家賃
一般的に面積で判断します。たとえば、自宅が80㎡で、そのうち半分の40㎡を仕事で使っているとしたら、「年間の自宅家賃×50%」を「地代家賃」として計上可能になります。月の家賃が10万円としたら、5万円×12カ月で60万円を経費化できるわけです。もちろん、割合は目安で構いません。
持ち家の場合はちょっと複雑になります。たとえば、自宅の住宅ローンを返済中という人は、ローンの元本部分は経費にすることはできませんが、金利部分は経費化できます。その他、経費化できるのは減価償却費、火災保険料、固定資産税です。合計し、仕事で使った割合をかけて算出します。
●光熱費、通信費など
電気代についても同様で、床面積や電球の数などを基準に算出します。ガス代、水道代も使用した時間などで判断します。電話料金、インターネットなどの通信費は、通話明細および使用日数、時間を基準に決めることになります。
車関連の費用となる減価償却費、保険料、自動車税、ガソリン代、修繕費などは、走行距離、週何日仕事で使ったか、などで按分します。
もちろん、按分の割合はずっと一定の割合である必要はなく、その年ごとの仕事量なども勘案し、決定してOKです。
領収書は手書きのものだけではなく、レシートでもOK
経費を算出、整理していく上で、その大事な証明となるのが領収書です。では、領収書は、どうやって整理整頓、保管するべきか。今さら聞きにくい領収書に関する素朴な疑問も、この際、解消していきましょう。
1 そもそも領収書とは何を指すのか
領収書といえば、会計時に別途、店に用途や額の記入、押印をお願いし、作成してもらうものをイメージする方が多いと思います。しかし、「いちいち領収書をもらうのは面倒くさい」「取引先との会食などで、スマートに会計をすませたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご安心ください。領収書は手書きのものでなくとも、レシートで問題ありません。むしろ、税務調査などでも、実際に購入したモノ、支出の中身がわかりやすい点で有効な資料と判断されることがあります。つまりはどちらでもOKというわけです。
ただし、手書きの請求書の場合、宛名は「上」などでなく、しっかりと自分の名前や会社名(請求先)を入れてもらうこと。白紙の領収書をもらって自分で書き入れるようなスタイルは御法度です。
スクラップブックに貼れば、紛失リスクも軽減
2 どのようにして保管、管理するべきか
お金と昔もらった領収書で、財布がパンパンという方もお見かけしますが、管理が悪いと、紛失するリスクも大です。領収書やレシートは、税金を算出する上でも、大切な資料です。事業主になったら、たかが紙切れという考え方は捨て、大事に取り扱うようにしましょう。
管理法として、私がお勧めしているのはスクラップブックに貼る方法です。とくにレシートやレジで打ち出す感熱紙タイプの領収書は破れやすいもの。貼っておけば、紛失リスクも軽減され、ぱっと見るだけで自分の支出傾向もわかります。一覧性が高いのもメリットです。「貼るのはメンドー」という方も、どうか確定申告が来るまでの1年間、放りっぱなしにするのはヤメてください。別途、袋や箱に入れておき、月1回、「集計表」に科目ごとに記帳するようにしましょう。
確定申告時に大慌てということにならないためにも、支出をマメに把握するためにも、〝お金は貯めても、領収書は溜めるな〟。コレが正解です。
櫻井 成行
関東信越税理士会行田支部 税理士