本記事は、子どもの成績がぐんぐん伸びる要因となる、「算数」の学び方を見ていきます。

仮説を立て、検証する「算数問題」は教育に最適

試行錯誤は、ものごとを考える時に、誰もが普通に行っていることです。試行錯誤すること、すなわち考えることといってもおかしくはありません。

 

ただし、一つ注意が必要です。例えば図形に補助線を引くケースを考えてみましょう。この時、何も考えずただ闇雲に線を引くだけでは、試行錯誤しているとはいえません。考えていないのだから、その行為には意味はない。

 

一方で「この頂点と、もう一つの頂点を結べば、ここに三角形ができる」といった見通しを立てた上で、線を引くことは試行錯誤といえます。

 

自分なりの仮説を立てて、実行してみて、検証する。といえばビジネスの世界では、いわゆるPDCA(プランを立てて、実際にやってみて、結果を検証して、問題点を修正した上で行動する)サイクルと呼ばれる基本です。これが試行錯誤です。

何らかの見通しを持った上で試行錯誤することが大事

例えば、次のような問題を子どもたちは、どう考えるでしょうか。

 

1+2+3+4+5+6+7+8+9=?

 

もちろん、これぐらいなら順番に足していっても、それほど面倒な計算にはなりません。けれども、単純に足していく以外にも計算のやり方はないかな、と子どもたちに問いを投げかければ、子どもたちの頭は動き始めます。

 

数式を見て(1・9)(2・8)・・・と足して10になるセットを見つける子どもがいます。あるいは1を5-4、9を5+4、2を5-3、8を5+3と考えて、結局5が9つあると考える子どももいるかもしれません。

 

もしかすると数学の天才ガウスが少年時代に考えたように、

 

1+2+3+4+5+6+7+8+9

+)9+8+7+6+5+4+3+2+1

 

と考えて、10×9÷2=45と答えを出すこともあり得るでしょう。(下記の図表参照)

 

[図表]1+2+3+4+5+6+7+8+9=?

 

いずれの場合も大切なことは、何らかの見通しを持った上で、試行錯誤することであり、これが考えることなのです。

 

「なぜ?」「どうして?」を投げ出さずに考えられる

試行錯誤の例をもう一点、あげておきます。魔法陣の問題です。

 

正方形型の9つのマスに、1から9までの数字を一回だけ使い、タテ・ヨコ・ナナメに並ぶ3つの数の和が同じになるように、数字を入れる問題です。

 

でたらめ型の試行錯誤なら、適当に数字を入れていき、それでは解決しないことがわかって諦めてしまうでしょう。これでは考えていることにもなりません。

 

解き方を教えるのではなく、これを使って、子どもの頭が動き続けるようにするにはどうすればよいか。ぜひ、お父さんも一緒に考えてあげてください。非常に面白い問題です。いろいろな解き方があります。

 

例えば、どこか端っこの数字を決めてしまえばどうなるか。こう考えて、他の数字を置いてみるのは立派に試行錯誤です([図表])。

 

[図表]1から9の数字をすべて使ってタテ・ヨコ・ナナメの合計が同じ数になるように並べなさい。

 

何らかの見通しを立てて、試行錯誤しながら考えていく。これは算数に限らず、いわゆる理系科目全般に共通する考え方です。算数を通じて考える力を身につけた子どもは、同じ理系科目の理科も自然とわかるようになります。理科で学ぶ項目、例えばテコ、滑車、バネ、浮力、電気などは、考える力をつけるための良い材料となります。

 

生物分野などは、それこそ「なぜ?」「どうして?」と不思議に思うことがいくらでもあるでしょう。化学や地学、天文学などの領域にも考える力を身につけた子どもにとっては、自分で考えるネタの宝庫みたいなものです。

 

もちろん基礎的な知識はいくつか覚える必要がありますが、それさえマスターしてしまえば、後は考えればわかる。考える力をしっかり養っておけば、小学校はもちろん、中学校、高校と進んでも、理系は得意科目となるはずです。

物事を筋道立てて考える力は、あらゆる科目に応用可能

では、算数で考える力を養えば、その力は国語にも活かされるのでしょうか。結論からいえば、間違いなく活かされます。複雑な文章題を解くカギは、まず問題の意味を理解することでした。つまり、考える力がつけば、文章を読んで理解することができるようになります。

 

文章を読んで理解することは、すなわち、文章として書かれている情報を整理することです。もちろん、算数の文章問題と国語の長文問題を比べれば、文字数は圧倒的に国語の長文問題の方が多くなります。つまり、国語の長文は情報量が多いのです。

 

けれども、いくら文章が長いといっても、全文が一つの文章で書かれているわけではありません。長い文章といっても、結局は短い文章がいくつも集まって構成されているのです。

 

であるならば、一文一文を読んで、書かれている内容を整理していけばよいのです。国語の場合は、年齢を重ねて一般常識などを身につけるにつれて、理解力も増していきます。算数の問題を通じて考える力を養っておけば、国語もできるようになるのです。

 

中学に入って習う英語も同様です。英語の場合、リスニングとスピーキングに関しては、慣れるための反復練習が必要です。けれどもリーディングとライティングについては、やはりものごとを筋道立てて考える力があれば、理解が早くなります。

 

なぜなら、英語は日本語よりもはるかに厳格に、ルールに従って書かれているからです。文章の構造、骨格は、一定の法則によって決められています。基本的な構成を見極めることができれば、後は単語の意味がわかるかどうかの勝負です。意味のわからない単語は辞書で調べれば済みます。

 

では、文系科目の象徴ともいえる社会はどうでしょうか。地理や歴史を学ぶ時に大切なのは、年号や土地の名前、人物などを覚えることだけでしょうか。

 

実は社会を学ぶ時のポイントも、他の科目と同じです。「なぜ?」と「どうして?」から入っていくと、理解しやすく、理解したことなら覚えるのが容易になります。

 

歴史上のほぼすべての出来事は、人によって起こされています。人が行動する背景には、それも何か歴史的な出来事が起こる際には、必ず理由があるはずです。それは時代的背景なのかもしれないし、誰かと対立していたからかもしれません。義憤に駆られた行為や、宗教的な理念に基づいている場合もあるでしょう。

 

けれども、いずれにしても、すべてに何らかの理由があるはずです。であるならば、その理由を考えることができるはずです。いつ、どこで、何が、どのように起こったのかは歴史的な事実であり、その時最も大切なのが、誰が「なぜ」そのような行動を起こしたのかです。

 

さすがに小学校の社会では、そこまで考えることは少し無理があるかもしれません。けれども、中学生以上になれば、歴史、地理、政治経済なども、このように考えて理解することで、それほど苦労しなくても成績を伸ばすことが必ずできるのです。

 

 

江藤 宏

関西教育企画株式会社 灘学習院 学院長

 

東大・京大に合格する 子どもの育て方

東大・京大に合格する 子どもの育て方

江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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