コカ・コーラの大株主バフェット氏がコーラを「偏愛」する理由

本連載は、スパークス・グループ株式会社のウェブサイトに掲載されている「COLUMN / バフェット・クラブの金言」を転載したものです。

誰もが知る、ウォーレン・バフェットの成功物語

幼い頃、コーラを売って小遣い稼ぎをした少年が大人になり、全資産の3分の1をコカ・コーラ株に集中投資し巨万の富を得る。20世紀を代表するアメリカンドリームの具現者で、今でも大好物のチェリーコークを1日に5本も飲むというウォーレン・バフェット氏。彼の成功物語は誰もが知るところです。

 

かく言う私にも、ついに今年、バフェット氏とのコーラのエピソードが生まれました。会社設立以来約30年にわたり私淑してきたウォーレン・バフェット氏との面会が、親しい友人の紹介で実現したのです。ご縁ありバフェット氏お気に入りのネブラスカ州オマハのレストランで、名物「Tボーンステーキ」を食しながら、私は遠慮がちに、こう話しました。「体重が気になるので、私はチェリーコークではなくダイエットコークにさせてもらいます」。

 

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すると、バフェット氏は、「“Thank you!” ダイエットコークの方が10%以上、粗利が高いんだよ」と答えたのです。

 

健康志向によるゼロカロリー飲料市場激化の中で、コカ・コーラ離れの流れを打破し、収益向上を目指す要がダイエットコーラです。それを目の前で美味しそうに飲んで見せる私が、大株主であるバフェット氏の目からみれば、良きコンシューマー代表と映ったのでしょう。そう考えると、“Thank you!”のひとことにも納得がいきます。

 

バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ社が、コカ・コーラの株式取得を開始したのは1988年のこと。その後、世界は大きく変化してきました。2013年からマイナス成長が続くコカ・コーラ株の現状は、決して芳しいものとはいえません。それでも56年連続増配を実現する同社に対し、バフェット氏の信頼はゆるぎないものがあります。そして、87歳になった今でも、5年後、10年後の世界を展望し熱く語る氏に、米国資本主義の良心を感じ、改めて襟を正す思いでした。

なぜバフェットはコカ・コーラの株主になったのか?

コカ・コーラの筆頭株主であるバークシャー・ハサウェイは、発行済み株式の9.27%に当たる4億株を保有しています(2017.3月末時点)。先述の通り取得開始は1988年であり、以降3回にわたる買い入れが行われています。当時のコカ・コーラは、すでに高値更新を続ける超成長企業でした。

 

しかし、毎年15%以上の利益を重ね続ける同社への投資は、バフェット氏にとって決して割高なものではありません。バフェット氏は投資を行う企業に対し、次のように述べています。

 

“今日や明日、来月に株価が上がろうが下がろうが、私にはどうでもいい。その会社が10年、50年経っても欲しいと皆が思うものを作っているかどうかが重要だ。”

 

コカ・コーラのブランド力は、世界に類を見ないといえるでしょう。先進国に住むものであれば誰もが知っていて発展途上の国にあっては豊かさの象徴となります。バフェット氏は「コカ・コーラを飲んだ幸福感は健康上の利益に勝る」(この「名言」までは、私は同意いたしかねますが)、とまで語っています。その真偽はさておき、人々を幸せな気持ちにさせる飲料を作り続ける企業の株は、持ち続けるに値する株といえるのです。

 

バフェット氏は一過性の成長率に惑わされずに、内在する価値に対してこそ投資をすべきと考えています。株式はあくまで企業の一部分を保有することです。短期で上下する株式市場ではなく、自らが良く知り信頼できる高成長企業としてコカ・コーラを選択したのです。

大事にしているのは「自己資本利益率(ROE)」

企業が社会の中でどれだけの収益力や競争力を持っているのか、客観的に見るためには売上だけでは判断できません。資金をジャブジャブとつぎ込んで、そこそこの利益を上げたとしても、得るものが少ないのは当然のことです。経営状況を見るにあたり、資金の効率的な運用の指標となるのが、資本利益率です。できるだけ少ない資金で大きな利益が上げられる企業こそが、本当に儲けている企業といえるのです。

 

利益率にもいくつか種類がありますが、投資にもっとも関連するのが「自己資本利益率(ROE)」です。株主が投資した資本により、どれだけの利益が稼ぎ出せているのかを見るために、純利益を株主資本で割って算出されます。ROEは企業の経営力と株主への利益分配という、大きな2つの要素を表しています。

 

バフェット氏がコカ・コーラ株を取得した1988年時点のROEは34.3%。この時点でかなり高いROEといえます。バフェット氏が買い増しを行った1989年、1994年それぞれの時点のROEは38.5%、55.3%であり、翌1995年にはなんと67.2%をたたき出しています。

 

その後、2012年をピークに売上高は減少傾向にあり、ROEは低下しつつありますが、それでも2018年3月時点で29.83%という高水準を維持しています。バフェット銘柄には、コカ・コーラのように20%程度の高いROEを長期的に維持する企業が多くみられます。
一方、これまで低い収益率と揶揄されてきた日本企業にも大きく変化が出始めています。
日本の上場企業全体のROEは2017年度時点で10.1%の見通しとなり、1982年以来、約35年ぶりの2桁台となりそうです。バブル崩壊と長いデフレにより日本企業はすっかり委縮していましたが、ようやく世界水準に戻りつつあるのです。

ブランド価値の認知こそ、バフェットのイノベーション

これから、このメールマガジンでは、さまざまな投資手法を学んでいきます。

 

バフェット氏のイノベーション、つまり、証券投資の歴史におけるバフェット氏の革新性を一言でいうと、「ブランドをマネタイズした(貨幣価値として定量化した)」と言えるのではないでしょうか。ブランド力というのは、企業の貸借対照表には計上されないため、定量的な評価が容易ではありません。しかし、バフェット氏は、先ほど申し上げたROEなどの尺度からブランド力を推察し果敢に投資することができました。

 

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ちょうど先日、バークシャー・ハサウェイが、アップル株を買い増していることがニュースになりました。この投資が成功するのかどうか、現時点で正確に判断することは不可能です。しかしバフェット氏が、世界の誰もが憧れるブランド力を持つアップルを長期にわたり継続的な利益を生み出す企業と考え、そこに大きくコミットした基本的な考え方は、コカ・コーラへの投資と同じです。

「自分の企業が大好きな社長を私は探している」

バフェット氏との面会は、3時間半に及びました。昼食の前に、まずはオフィスに伺いました。数十年前から使い続けるバークシャー・ハサウェイのオフィス。社員はわずか10数人、会議室は8人しか入れませんでした。普段、バフェット氏は、殆ど人と会わず、ここで、アニュアルリポートや本を読みながら未来を展望しているのだそうです。「良い会社はそう多くはない。だからこそ、見つけたら集中投資する」、これが信条のバフェット氏。

 

では、どんな会社が良いのかと聞いたら、「私が今でもバークシャー・ハサウェイが大好きなように、自分の企業が大好きな社長を私は探している」、そう答えが返ってきました。

 

株式投資における最も有効な戦略は、企業のオーナーとして、その企業の長期的な成長の果実をシェアすることと心得ましょう。そして、優秀な経営者や企業を見つけ長期投資をすること。こうした境地を理解して株式投資に取り組んでいくことで、10年後、20年後に日本のバフェットが生まれるはずです。私もまだその夢を捨てていません。このコラムを通じ、皆さんと共に一歩ずつ前進していきたいと思っています。

 

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(2018年6月1日)

 

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スパークス・グループ株式会社 代表取締役社長

北海道札幌市出身。上智大学経済学部卒。米ボストンのバブソンカレッジでMBA取得。

1981年、野村総合研究所に入社後、ニューヨークのノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルに出向し、米国の機関投資家向けの日本株のセールスに従事。1985年にニューヨークで独立し、ジョージ・ソロス氏から1億ドル(当時の為替レートで約200億円)の運用を任される。

1989年、日本でスパークス投資顧問(現スパークス・グループ)を設立。2001年に上場。2005年、ハーバード大学ビジネススクールでAMP取得。現在の投資対象は日本の上場株だけでなく、アジアの上場株、再生可能エネルギー発電施設や不動産といった実物資産、そして米国、イスラエル、日本などの未上場企業にまで広がってきたが、投資対象の価格と価値の差に着目し主体的に働きかける投資哲学は一貫している。

プライベートでは作詞、作曲、ギター演奏に加え、絵画も描く。

近著に『暴落を買え!-年収300万円から始める資本家入門-』(ビジネス社 2017/5/24)。

著者紹介

連載阿部修平の投資哲学~「バフェット・クラブの金言」より

このコンテンツは、投資勧誘を目的としたものではありません。また、このコンテンツに登場する企業名はあくまでも参考であり、特定の有価証券等の取引を勧誘しているものでありません。投資に関する決定はご自身の判断において行われるようお願いいたします。当コラムに基づいて取られた投資行動の結果については、スパークス・グループ株式会社、スパークス・アセットマネジメント株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。このコンテンツには、コンテンツ編集部制作担当者の見解が含まれている場合があり、スパークス・グループ株式会社およびスパークス・アセットマネジメント株式会社の見解と必ずしも一致しないことがあります。

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