人口増加に伴い、都内の賃貸需要は増加傾向だが…
はじめて不動産を購入しようと考える人は誰でも、都心駅近の物件が欲しいなと考えます。私も同じ考えでしたし、今もそれは変わりません。
地方と比べて都心部には人が集まります。現在、日本は少子高齢化の影響によって人口減少の一途を辿っています。しかし減少しているのは地方の人口です。都市部、特に東京、大阪、名古屋の三大都市及びその周辺市町村は地方からの流入により、人口増加傾向が続いており、それに伴い、都内の賃貸需要は増加傾向にあります。
また、学生需要の増加も考えられます。学生数は、全体では減少しているものの、大学の都心回帰により、明治大学や大妻女子大学、東京理科大学など、郊外にあった大学が相次いで都内へキャンパスを移転しています。そしてこれから大学進学を目指す高校生も、郊外の大学より都心の大学に進学したいと考えるのが自然だと思います。そのため、より多くの学生を集めたい大学側は、次々と東京の中心地へと移転を進めています。
また、2020年の東京オリンピックも「都心人気」に拍車を掛けており、さらに、円安もあってより多くの外国人学生が日本に留学しています。
とはいえ、このようにニーズが増大し、人が集まってきている都内だからこそ取引価格は上昇していますが、どのラインがその投資に見合うのでしょうか。
地価が上昇しているエリア=下落が予想されるエリア
都心における不動産購入の指標としては、土地の価格が投資のひとつの指標になります。土地の価格は「固定資産税評価額」「全国路線価格」「実価格」の三つがありますが、他のエリアと比較できるもの、年度で比較できるものとしては路線価がわかりやすいでしょう。
国税庁から毎年発表される全国の路線価は、「道路につけられた値段」のことです。隣接する道路の値段を土地の面積にかけることで、土地の値段が導き出せます。
この路線価は路線価図での確認が可能です。そこには1㎡あたり98Dや133Aなど、土地に接している道路ごとの路線価が記載されています。この路線価をみていくと、当然ながら銀座、六本木、赤坂などの都内中心部では非常に高価で、1坪で最高4000万円ほどのところもあります。
また、注目するのはその推移です。国税庁の公開する路線価は、最新版のほかに過去6年分のものもあり、あわせてチェックする必要があります。過去の路線価と比較してみて、現在の地価はどうなのかを推測する材料になるからです。
その点を考慮すると、2016年度の都心における物件のデメリットが見えてきます。地価に関していえば、過去30年で2015年は最高額となっています。今後20~30年のスパンでの不動産投資で売却益を得ようと考えたとき、現在の投資時点で既に地価が非常に高いところにまで達しており、これ以上の将来的な値上がりを見込むのは危ういことがわかります。
つまり「現在、土地の価格が著しく上昇しているエリア」は、逆にいえば「今後土地値の下落が予想されるエリア」にもなりえます。それは、建物の経年劣化による価値の下落だけでなく、土地の値下がりによる物件価値下落で、次の売却時に安値でしか売れない不動産になってしまうことを意味します。
そのため、23区内で収益不動産を購入するにしても、地価がもともと安く、下落幅が少ないエリアを選定する必要があります。
路線価ベースで見ると平均㎡単価が安いのは、
1位:葛飾区(33万4800円/㎡)
2位:足立区(33万5160円/㎡)
3位:江戸川区(35万5955円/㎡)
4位:練馬区(39万9353円/㎡)
5位:板橋区(43万3918円/㎡)
の順となり、23区で狙い目のエリアといえます。当社においても中古の不動産を取得する際、上記のエリアの物件が非常に多いです。
また、東京都下、神奈川、埼玉、千葉西エリアは、23区を取り囲むエリアであり、市場が大きく動いたとしても都心部よりその影響、つまり上昇幅は少ないですが、下落幅もまた少ないと考えることができます。
ただし、次のエリアは23区と同等かそれ以上のエリア平均路線価格ですので、購入前提で探してもなかなか難しいのが実情です。
武蔵野市(88万6952円/㎡)
三鷹市(48万4981円/㎡)
立川市(48万0166円/㎡)
小金井市(38万9500円/㎡)
国分寺市(37万5687円/㎡)
1990年には大暴騰する土地バブルがありましたが、今後西東京、相模原エリアの坪50万円が100万円に上昇したり、半分の25万円になったりすることは考えられません。ただ、新宿、渋谷、目黒の坪400万円が300万円にまで下落する可能性は十分にあります。不動産価格の上昇局面だからこそ、地価の下がりづらいエリアに投資する必要があるのです。
[図表1]東京都の市区町村別地価ランキング(2015年)