10月の株価調整は長期金利の上昇が主要因
年前半の株価調整要因とは異なる
■今年の米国株式市場は今回を含め3回の調整局面があります。株価調整局面について要因を整理しました。
S&P500種指数の推移
■調整局面(1)1月26日~2月8日
1月下旬にかけS&P500種指数は史上最高値を更新しました。その後、良好な雇用統計などを受けての利上げ観測の強まりなどから米10年債利回りが上昇し、また、VIX指数(恐怖指数)の上昇なども米国株式市場下落の一因となりました。当社の推計によれば、国内金融(長期金利の上昇)が株価の下落要因ですが、より大きなインパクトを生んだ要因が貿易摩擦との結果になりました。貿易摩擦に対する懸念などもVIX指数に影響を与えたのかもしれません。
調整局面(1)
■調整局面(2)3月9日~3月30日
トランプ大統領による鉄鋼とアルミニウム関税賦課計画の発表や500億ドル規模の中国製品に対して関税を課す大統領令に署名するなど、貿易戦争の激化に対する懸念が拡大しました。一方、国内景気(企業業績)も下落要因となりました。フェイスブックの情報漏えいを発端にテクノロジー関連株が売られたことなどが反映されました。
調整局面(2)
■調整局面(3)10月1日~10月19日
引き続き米中を中心とする貿易摩擦が株価調整要因ですが、今回の調整は国内金融(長期金利の上昇)要因が大きなインパクトをもたらした点で過去2回の調整局面とは異なります。米10年債利回りが9月中旬以降3%台に乗せ、10月5日には3.2%台になりました。
調整局面(3)
株価上昇のけん引役は業績
不透明要因の中心は米中貿易摩擦
■2018年を通してS&P500種指数の年初来の変動を週次で要因分解(トレンド除去)すると、貿易摩擦と国内金融が下落要因で、国内景気・企業業績が上昇要因となっています。10月以降大幅な調整となっていますが、過去の下落局面との相違は、国内景気・企業業績の要因が堅調に推移している点です。米国は景気の拡大が続き、利上げが進む中、緩やかながら10年債利回りが3%台に乗せてきました。しかし、2019年以降は景気の拡大ペースも緩やかに鈍化する見通しで、今後10年債利回りが上昇を続ける可能性は限られると見られます。米国株式市場は、業績に軸足を置いた業績相場の色彩を強めている中、不透明要因の中心は、やはり米中貿易摩擦と考えられます。
S&P500種指数の変動要因分解
まずは、中間選挙の結果待ち
■7-9月期の決算はトムソンロイターズ(10月22日発表)によれば、前年同期比+21.9%と10月1日予想(+21.6%)に比べて堅調な滑り出しとなっています。主力の「情報技術」は同+20.5%、「ヘルスケア」が同+11.5%、「金融」が同+43.2%と予想利益全体をけん引しており、企業業績は株価を下支えすると期待されます。
■焦点は、あと2週間と迫った11月6日の中間選挙とその結果です。中間選挙は、上院は共和党、下院は民主党がそれぞれ議席の過半数をとるとの見通しが大勢を占めています。ただ、上下院とも共和党の可能性もあり、まずは中間選挙の結果待ちだと思われます。中間選挙の結果を踏まえ、トランプ政権の対中戦略の強硬な姿勢が弱まったり、米中対話が再開されるなど、一定の前進が見込まれれば、米国株式市場のマイナス要因も縮小すると考えられます。
S&P500種指数の1株当たり予想利益の見通し
(2018年10月23日)
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