仮想通貨の動きはITバブル時の急騰・暴落に重なるが…
2017年、仮想通貨とその基幹テクノロジーであるブロックチェーンが大きな注目を集めた。
2018年8月30日時点で仮想通貨市場に入っている資本は、約2280億米ドル(約25.5兆円)程度と、世界の全資本のごく一部だが(CoinMarketCapより)、2009年にビットコインの誕生によって始まったばかりのこの市場は、わずか10年足らずで劇的な成長を遂げている。
2017年には、熱狂を帯びた仮想通貨市場の急騰と、その後の大暴落を経験しているが、これはITバブル当時の急騰と暴落に重なって見える。そこからわかるのは、有望なものを見抜いて、その恩恵を享受できる人とそうでない人で、「富の格差」が生まれるということだ。
仮想通貨取引所に口座をつくり、資産を形成するチャンスは誰にでも平等に開かれている。数十万円程度の資産を億単位に増やし、日本でも「億り人」と呼ばれる仮想通貨長者が現れていることはご存じだろう。
日本円や米ドルなどの法定通貨は、国家の都合で大量に発行され、その価値を一方的に引き下げられてしまうリスクがある。金融緩和によって大量の日本円が供給されれば、実質的に減価する。その政策が間違っていたとしても、実質的な日本円の価値の下落というツケを払わされるのは国民だ。このとき、資産を防衛するには、法定通貨を値下がりしにくい稀少資産や有価証券などに替えるしかない。
資産形成の王道は、「分散投資」だが、自分の資産ポートフォリオに、今後は仮想通貨を加えることが投資家の間でも主流になっていくだろう。
リテラシーを高めれば、大きな果実が手に入る可能性も
株式投資の世界では短期間に株価が10倍以上に急騰する銘柄を「テンバガー」というが、2017年には、1年で価格が10倍以上になった仮想通貨が数多く登場した。たとえば、ビットコインは2017年初に1BTC=約10万円だったが、同年12月には約220万円まで上昇。10倍どころか20倍以上になった。他の仮想通貨をみても、リップルは約330倍、ネムが約250倍、リスクが約130倍、イーサリアムやダッシュが約90倍、ライトコインが約50倍と、テンバガーどころではない値上がりを見せた。
しかし、2018年に入り、仮想通貨価格は軒並み下落した。2018年8月時点のビットコイン価格は2017年の最高値から約3分の1となる約70万円近辺で推移している。この価格の下落には様々な要因があるが、仮想通貨に対する法規制が各国でまだ明確になっていないことがその主因だろう。
ITバブル当時も一般の人のなかには、「本当にインターネットは世の中を変えるほどの力があるのか」という疑心暗鬼が渦巻いていた。仮想通貨も2009年にビットコインが登場して以降、たくさんの仮想通貨が発行された。その数は2018年8月30日現在、1900種類以上にまで増えている。仮想通貨もITバブル当時のベンチャーと同じように玉石混交であることは明白だが、約1850種類以上ある仮想通貨のすべてがニセモノかといえばそうではないだろう。このなかには、次のグーグルやアマゾン・ドット・コムが紛れ込んでいる可能性がある。それらに投資できれば、法定通貨のインフレヘッジの投資商品として、有力な選択肢になり得る。リテラシーを高めることで、将来大きな果実を手に入れる可能性は高まるはずだ。
今後は情報による「新たな時代をとらえる力」が重要に
すでに成長の萌芽が見え始めている仮想通貨とブロックチェーン技術は爆発的な普及を目前にしている。これから本格的に始まるであろう「仮想通貨社会」は、インターネットがそうであったように、すぐに目に見えるような変化は起こらない。気づいたころにはインターネットは重要な社会インフラになっていた―という状況と同じことが起こるはずである。
今後、デジタル資本主義時代が本格化すれば、マネーそのものの力より、情報による新たな時代をとらえる力が重要になるに違いない。その代表的なテクノロジーともいえる仮想通貨とブロックチェーンが社会に浸透すれば、大きなパワーシフトが起こる。かつて商業資本主義から産業資本主義へ移行したときや、産業資本主義からポスト産業資本主義に移行するときと同様に、その流れに乗れる人、乗れない人で優勝劣敗がはっきり分かれるだろう。
歴史は繰り返す。ITバブルでグーグルやアマゾンを見つけることができれば、大きな果実を手に入れることができたように、インターネット以来の大発明といわれる仮想通貨とブロックチェーンの普及前夜にいる私たちは大きな果実をもぎとる機会を与えられているのである。