フィンテック技術で「金融の民主化」
仮想通貨もフィンテックの一種だが、金融事業において、2030年にはより一層デジタル化が進んでいることは間違いない。フィンテック技術は銀行や証券会社などが寡占してきた事業を一般企業や個人にも開放し、「金融の民主化」をもたらすと考えられる。
金融事業は金融庁による厳格な規制領域であり、今まではその規制が参入障壁となることで、少数精鋭の金融業が既得権益を享受してきた。これからはどうなるだろうか。
クラウドファンディング
インターネットは、資金調達の分散化、大衆化を加速させている。今まで金融機関が資金調達に手を貸さなかった中小規模のプロジェクトの実現も、それに賛同する個人が少額の支援を行い、それを集約させることで大きな額を集められるようになっている。プロジェクトの主催者はその成果物などの関連品を「リターン」として提供する。
近頃では、クラウドファウンディングを、新しい企画や製品の世間的需要を試験的に測定する目的でも用いられることが増えてきた。クラウドファンディングのプラットフォーム企業は、仮想通貨技術を使った資金調達の増加も取り込みながら、2030年まで着実に成長していくと考えられる。
bitFlyerは独自の仮想通貨クラウドファンディングシステム「fundflyer」を展開する。また、プロジェクト単位ではないが、個人にビットコインで出資し、その配当を受ける権利を株式のように売買できる「VALU」も注目されている。
ソーシャルレンディング
これまで金融機関が融資を避けてきたベンチャー企業や個人事業主に対しても、個人投資家が少額の融資を実行し、金融機関よりも高率の利息をリターンとして得られる仕組みである。このソーシャルレンディングの場(プラットフォーム)を提供できる仮想通貨のスマートコントラクトによって、返済を受ける機能を自動管理できるようになれば、毎月の収益が確保された確実性の高い投資のひとつとして、個人の参加が増えてくるだろうと考えられる。
SBIホールディングス〈8473〉は、2011年から「SBIソーシャルレンディング」のサービスを提供しており、業界を牽引している。
富士キメラ総研は、2022年までに国内ソーシャルレンディング市場が、約9000億円にまで拡大するものと試算している。これは2016年時点と比較して、13.8倍にもなる規模だ。
多層構造の機械学習が、さらなるAIの進化を促進
AI(人工知能)も、第四次産業革命の基幹ともいえる技術である。莫大な量の「ビッグデータ」を解析し、今まで把握できなかった現実社会の真相に迫ることができるようになる。さらに、ビッグデータはAIによる機械学習の要になるため、物事のパターンを分析して取り込むことで、AIが自律的により良い処理方法を見つけ出していくようになる(少なくとも人間の目には、AIが「成長」しているように映る)。社内メールのやりとりの文面から、パワハラやセクハラの動向を自動検知するAIも開発されており、コンプライアンスの強化にも活用される事例が増えていくだろう。
ビッグデータは、現在単に生のデータを膨大に集めるのでは不十分で、AIが学習しやすいように加工編集などを行う必要がある。当分の間は、AIを動かすにも人間の介入が必要だ。ただ、2030年までには、インターネット上に存在する生データをそのまま取り込んで、自動的に学習を繰り返す「Deep Learning(深層学習)」を使った多層構造の機械学習がAIをさらに進化させていると予想される。
自動翻訳
画像認識・音声認識といったセンサーとの組み合わせで、文章や音声を自動的にAIが読み取り、別の言語への出力も文章や音声で行う。すでに商品化されている技術でもあり、東京五輪で外国人観光客とのコミュニケーション需要が急激に高まる2020年までには、その翻訳精度も急速に高まっていくだろう。
ソースネクスト〈4344〉のPOCKETALK( ポケトーク)は、Wi-Fiによるインターネット利用が可能な環境下で使うことを前提とした高性能自動翻訳機である。AIの音声認識により、短い日常会話なら問題なく翻訳し、音声で出力できる。一方、ログバーの「ili」(イリー)は、Wi-Fiが繋がらない環境でも使える小型の自動翻訳機であり、海外での行動範囲が広い旅行者に重宝されている。
マーケティング
従来のテレビCMや新聞広告のように、多数の人に知らせることを目的にする宣伝活動でなく、顧客情報からセグメント化して分析し、適切な層にピンポイントで情報を届ける「スモールマス・マーケティング」が、AI時代の主流になっていくだろう。
また、小売店に設置された監視カメラで、売り場の顧客の動きをビッグデータ化したAIが、売上アップのコンサルティングを行うこともできるようになる。
さらに、1台の工業製品を発注すると、在庫を確認し、必要な部品を自動的に製造・調達するオンデマンドシステムの構築もAIによって管理できる。そうなれば、過剰在庫は不要となり、製造プロセスは大幅に合理化できるだろう。
自動運転・輸送
AIの応用技術で最も期待が高いもののひとつが、自動運転だろう。運転手不要の完全自動運転車が2030年までに実用化されていることは、ほぼ間違いないだろう。まずは地方の高齢者にとっての有力な移動手段として普及していくものと考えられる。また、タクシーや長距離トラックなども無人化されと事故などが大幅に減少。自動運転トラックは休憩が不要のため、輸送時間の短縮が期待される。
自動運転の技術開発において、国際的には米国と中国が主導し、日本は出遅れているといわれている。だが、トヨタ自動車〈7203〉は自動運転ソフトウェア開発の専門会社「TRIAD」を立ち上げており、また、日産自動車〈7201〉は高速道路上で車線変更しないことを条件とした、限定的な自動運転技術「プロパイロット」をすでに実用化させている。他社も、「安全運転支援技術」などの名目で、状況に応じて自動的にブレーキやハンドルの操作などを行う技術開発を続けている。
また、クボタ〈6326〉はGPS制御による「直進アシスト機能」を搭載した農機「ファームパイロット」によって、ほぼ自動の田植えや稲刈りを実現させる田植え機やコンバインなどを実用化させている。