ロボットが社会に溶け込み、共存する時代に
IoT(モノのインターネット)は、PCやスマートフォン、ゲーム機だけでなく、家電や生活物資などのあらゆるものをインターネットに繋げる技術である。そしてロボティクス(ロボット工学)の応用によって、社会の中にロボットが溶け込み、共存している光景が、ごく自然なものとなろう。また特に日常生活においてこの技術の恩恵を感じることができ、我々にとってより身近で当たり前のものとなっていくと予想される。
政府は「2020年までにロボットのある日常を実現し、日本を『ロボット・ショーケース』として世界に発信する」という内容の、「ロボット新戦略」を打ち出している。農林水産業や工業だけでなく、サービス業や娯楽、癒やしの分野にもロボットがより浸透していくだろう。すでにソフトバンク〈9984〉のPepperやソニー〈6758〉のAIBOは商品化され、消費者の目に触れる身近な存在になっている。
自動運転車やドローンも、ロボティクス技術の一環にある。これらは、警備監視や災害救助、遠隔地への配送事業などへの応用が期待できる。
IoT(物のインターネット)
IoTはたとえば、買い置きするものを冷蔵庫に入力すると、足りなくなったタイミングで冷蔵庫がその商品を自動発注することができる。なくし物や忘れ物が多い人は、大切な財布や身分証などの位置情報を知ることも可能だ。
お互いに離れた場所にある家電や機械同士で通信し合う「M to M(Machine to Machine)」の技術も鍵となる。路上に設置されたITS(高度道路交通システム)の機器と自動運転車が交信し合い、リアルタイムの渋滞回避ルートを選択するなどの実例が挙げられる。IoT社会は、2030年までに本格化するだろう。すでに、IPアドレス(インターネット接続端末の識別番号)のパターンを天文学的な桁数まで増やす「IPv6」の普及が進められている。
ただし、自動車から部屋の鍵まで、大小あらゆるものをインターネットに繋げるとすれば、小型の通信チップやセンサー、高い効率の電池などを開発する必要があるだろう。
「高度な暗号技術」の需要もさらに高まる
これからの時代、インターネットがさらに日常生活に不可欠なインフラとなっていく。その時流に伴い、ネット利用の安全性をより一層に高めなければならない。ネット上に、企業や個人が管理するデータを預けるクラウドコンピューティングも、高度な暗号技術の需要が高まっていくだろう。
セキュリティソフト関連事業
どんなに画期的なクラウドサービスも、クラウド上に預けてあるデータにつき、仮にハッキング攻撃への脆弱性が発覚すれば信頼度が低くなり利用されなくなってしまう。データの改ざんが不可能なブロックチェーンが普及すれば、それ自体がハッキング攻撃への強力な防御策となる。現在、セキュリティソフトを提供している企業は、それまでの経験の蓄積を活かしてブロックチェーン事業に参入する可能性もある。
国内のハミングヘッズが開発した次世代セキュリティソフトの「DeP」は、PCの内部で少しでもコンピュータに害を与えかねないおかしな挙動をしたプログラムを100%検知し、追跡、排除することができる。パターン解析に頼らず、未知のウイルスも防御できるセキュリティ方法として、注目されている。
OS開発事業
外部からインストールして導入するセキュリティソフトだけでなく、PCやスマートフォンの基本システムそのものも、サイバー攻撃から防御できる構造になっていれば、なお良い。ほかにも、IoTでのインターネットに繋がる家電や端末も含めて、セキュリティ対策が標準装備となるものと考えられる。
特に自動運転車がハッキングされた場合には、テロなどの犯罪行為にも用いられかねないため、厳重なセキュリティ対策が求められる。今まではユーザーが任意でセキュリティソフトを導入していたが、自動運転車に関しては法律で義務づけられる可能性もある。
悠々自適の高齢者はわずか、生活防衛のための労働も
2030年の日本では、65歳以降の人口が30%を超えることが確実視されている。国立社会保障・人口問題研究所によると2030年にはすべての都道府県で人口が減少し、2045年までに日本の総人口は1億642万人になると予想されている。人口減少に伴って、ひとりあたりの税金や社会保障費はますます引き上がっていくに違いない。可処分所得が減ることにより、人々の生活防衛意識が高まっていく。つまり、価値のある商品やサービスしか売れなくなる傾向が、ますます強まっていくだろう。
少子高齢化
限られた家計の中で1〜2人の子どもを大切に育てる風潮が、しばらくの間は日本社会の主流になっていくと考えられる。2030年には夫婦共働きが家庭の前提として、社会の仕組みが再構築されていくことになろう。待機児童の問題がますます深刻化し、保育園や認定こども園についても規制緩和せざるをえず、都市部での新規開設ラッシュが続くと予想される。しかし、少子化傾向が現在よりもさらに進めば、保育園などが供給過多になるリスクもある。
また、進学塾や留学支援などのビジネスも、堅調に推移するだろう。共働き家庭がますます一般的になれば、小学生を放課後に預かる学童保育の需要も高まっていくに違いない。
一方、長寿世界一の国である日本が世界屈指の超高齢化社会となる見込みは変わらない。人々の平均寿命だけでなく「健康寿命」も延びていく。長生きがめでたいことではなく「リスク」として受け止められ、収入が減っていくのに医療費などが増えるおそれがある。悠々自適に暮らせる高齢者はわずかで、年金収入を補うため、生活防衛のために働かなければならない。
若者の専売特許だったフリーターに70歳以上の高齢者が加わるかもしれない。
高齢者の移住支援などが行われることもありうる。高齢者向けに住宅や医療機関、老人ホームなどが、都市部のひとつのエリアに集約された「スマートタウン」の造成も各地で進んでいくと考えられる。
人手不足
2030年には高齢者もそれなりの確度で働くことが当たり前の世の中になっていくだろう。とはいえ、コアの生産年齢人口は少子化の影響でしばらく減少し続けていくことになる。人手不足は人件費の上昇をもたらすため、人件費削減のためにロボティクスによるロボット労働者が増加していくだろう。この分野はAIとも密接に関連している。
また、外国人労働者も規制緩和によって、家政婦や介護職など機械化されづらい業態に進出するようになる。また、そのための法整備や各会社の就業規則などで、受け入れ態勢が整っていくと考えられる。