2030年の未来予想…仮想通貨の需要と能力に見る可能性

今回は、10年後の未来予想とともに、仮想通貨の世間需要と潜在能力について考察します。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2018年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、これから変化していく経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

深刻な社会課題の解決が、新たなビジネスにチャンスに

10年後といえば西暦2030年になろうとする頃である。私たちはこの今、未曾有の変化の真っ只中に足を踏み入れている。人工知能やブロックチェーンなどが世の中を牽引する第四次産業革命時代の到来を迎える一方、人口減少問題やインフラ設備の老朽化など、社会課題が突きつけられるようになっている。第四次産業革命時代の叡智を用いて、これから深刻化する社会課題を解決することからも新たなビジネスチャンスが生まれてくるはずだ。

 

そこで10数年後の2030年の未来予想について、いくつかのジャンルに分けて検討していくことにする。ただし、これらのジャンル分類は便宜的なものであり、実際にはジャンルの枠を飛び越えて、互いに密接に関わり合っている技術や課題も多い。その点に留意しながら読み進めていただきたい。

 

仮想通貨リアルタイム情報サイトのCoinMarketCapによれば、2018年9月7日現在で、世界には少なくとも1921種の仮想通貨が存在していることがわかる。2018年に入り、国内の大手仮想通貨取引所であるコインチェックから、仮想通貨「NEM(ネム)」が不正に流出するハッキング事件が発生した。仮想通貨業界全般への不信感が蔓延するようになってもいる。管理・発行主体のあるSuicaなどの電子マネーと異なり、特定の国家や企業の管理すらも飛び越えた仮想通貨には、どれほどの世間需要と潜在力が秘められているのだろうか。

 

少額送金

 

法定通貨は、海外送金に多大なコストと時間がかかる。外国へ100円送金するのに数百円の手数料が徴収され、タイムラグを要する本末転倒の状況にある。それを限りなくゼロに近いコストに抑え、1円や1セントを世界中へ気軽に送れる社会が実現すれば、売買や謝礼、寄付などが行われる頻度が爆発的に高まると考えられる。お金がインターネット並みの速度とコストで流通する世の中は、日常の景色を一変させてくれるだろう。

 

ICOトークン発行

 

仮想通貨は、スタートアップ企業などが証券取引所を通さずに世界中から資金を調達できる仕組みを生み出した。それがICO(仮想通貨技術を利用した資金調達手段)である。企業のプロジェクトに賛同し、資金を提供した者にはICOトークンが付与される。株式では、会社法によって定められた「株主の権利」を投資家に対して与えるのに対して、ICOでは、その権利を発行者が自由に設計できる。

 

ICOトークンの保有者に、会社は経営権や発言権などの一部を渡す義務や配当を出す義務もない。資金調達をカジュアルに行える仕組みとして、これから世界の起業家の間で本格的に普及し、一般化するものと考えられている。ただし、プロジェクトの実態が存在しないにもかかわらず、ICOにより多額の資金を調達し、その後行方をくらます「詐欺ICO」が世界各地で横行したことから、日本を含む各国で、ICOへの規制が厳格化されている。とICO包囲網」は、むしろICOの信頼強化と本格普及に向けての布石といえるだろう。

「キャッシュレス決済」が日常化するか

マイニング

 

マイニングとは、仮想通貨の取引記録に矛盾や二重決済などがないかを、ASICと呼ばれる高速処理が可能な集積回路を利用して作成したマイニング専用機を用いて点検する作業である。マイニングを行うと、報酬として新規に発行された仮想通貨を受け取れる。このことから、現在マイニングは世界各地で大規模な企業活動と化している。

 

特にビットコインのマイニングには電気代がかさみ、しかも稼働中のASICが高熱を発する。そのため、電気代が安く、比較的寒冷な地域における事業者の集中がみられる。今や、世界中のビットコインマイニングに要する消費電力は、EUの20 以上の国を含む世界の159カ国の各消費電力よりも多い(2017年、power compareより)ほど莫大なものとなっており、地球環境問題のひとつに数える向きもある。また、主力のマイナー企業がビットコインのバージョンアップに反対し、改善の芽を摘み取るなど、マイニングシステムの非効率性も徐々に露わとなっている。

 

日本国内では、クラウドマイニング事業を開始、あるいは準備中の企業がある。クラウドマイニングとは、マイニング企業への出資によって、その出資割合に応じてマイニング報酬から配当を得ることができるサービスである。クラウドマイニングでは、自分でマイニング用のPCやASICを用意する必要がないために、個人でも参入するハードルは高くない。だが、出資先のマイニング企業が万一、経営的に破綻した場合には、出資額を失うリスクがある。

 

DMM.comとGMOインターネット〈9449〉は、すでにそれぞれDMMビットコインとGMOコインという仮想通貨取引所を開設しており、SBIホールディングス〈8473〉は、早い段階から仮想通貨リップルに出資し、仮想通貨取引事業への参入も準備している。三者ともに資本的背景は十分で、仮想通貨に親和性があることから、マイニング事業への新規展開も自然な成り行きといえる。中でも、GMOインターネット〈9449〉は世界最高性能のマイニング専用ASICチップを開発しており、今後はマイニングマシンの販売に専念していく構えだ。

 

決済受入

 

クレジットカードや、SuicaやEdyのような電子マネーよりも、ビットコインなどの仮想通貨は決済手数料がはるかに安い。そのため、決済手数料を店舗負担としているのであれば、導入のメリットが大いにある。

 

実店舗で仮想通貨決済を受け入れている全国区の小売チェーンとしては、家電量販店のビックカメラやコジマが代表的である。そのほか、各都道府県に様々な業態でビットコイン決済を受け入れている店がある。大手インターネットサービスでは、CAMPFIREなどでビットコイン決済を採用している。

 

2020年までには「ビットコイン払いなら全品5%OFF」など仮想通貨決済でのメリットを前面に押し出す小売店が現れることで、消費者の間で仮想通貨を取得する積極的な動機づけが明確になるといった事態が予想される。店舗側にとっては仮想通貨決済導入のほうがクレジットカード決済のような費用がかからないため、消費者へ利用を促すメリットがあるからだ。2030年までには、仮想通貨などによるキャッシュレス決済が日常の風景に溶け込んでいるかもしれない。

株式会社フィスコは、株式・為替など金融情報全般を扱う情報配信会社。ロイター、ブルームバーグ、クイックなどプロ向け端末や証券会社のほか、ヤフーファイナンスなど20以上の主要ポータルサイトに情報を提供する、投資支援サービスのプロフェッショナル集団。

写真はフィスコアナリストとして株式市場・個別銘柄や為替市場を担当する田代昌之氏。ビットコインなど仮想通貨についても造詣が深い。

著者紹介

連載10年後の日本に到来する「デジタル資本主義」とは何か?

FISCO 株・企業報2018年冬号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報2018年冬号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

実業之日本社

フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議 本誌掲載の「仮想通貨のゆくえと日本経済」の執筆を行った、フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議とは、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経…

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