2棟目3棟目の融資が簡単ではなくなる理由とは?
1〜2棟物件を買えた後で融資が引けなくなり、それ以上買うことができない、というパターンに陥っている人をよく見かけます。
その多くは、最初の物件を購入するときに、決算書や必要書類をすべて人に任せており、物件選定も融資つけも業者任せという「依存系」の人たちです。こういう人たちは、そもそも良くない物件を買ってしまっている場合が多く、当然ながら、銀行開拓も全くしていません。
最初にラクをしたツケが、後になって出てきているのです。言ってみれば、自業自得です。
融資の仕組みを簡単に説明しましょう。最初の1棟目は、個人の属性に頼った融資を引くことができるため、物件の評価がイマイチだったとしても、意外にあっさり買えることが多いものです。先に出た「一法人一物件スキーム」は、この1棟目は買いやすいという融資の特性を利用した手法です(関連記事『不動産投資の「一法人一物件スキーム」…そのデメリットとは?』参照)。しかし、2棟目3棟目となると、銀行から事業者として評価されるため、融資を引くことが簡単ではなくなります。
決算書の影響もあります。物件を買うことで、諸費用の他にも修繕費や広告宣伝費などもかかってくるので、現金が減っています。特に決算期間際で買った物件は、まだ売上が決算書に反映されていない状態で、長期借入金だけが載ってくるので、自己資本比率も債務償還年数も悪くなります。そうすると、決算書の内容がどうしても悪くなってしまうのです。
不動産以外の事業が儲かっていて、悪い決算書をカバーできるならそれでも問題なく買っていくことができますが、属性に頼った融資の引き方をしていると、債務超過として見られてしまいます。
その場合は、地道に残債を減らし、銀行の評価を上げていくしかありません。買値と同額程度で売れそうであれば、一旦売却してリセットすることもできますが、それができる人ばかりではないでしょう。
メガ大家を目指すのに、この段階で躓(つまづ)いていてはいけません。
物件を短期間で買い続けるための3つの重要なポイント
何棟も買い続けることを想定して買っていくには、スタートの段階からしっかり銀行の開拓をして、各銀行の融資に対する特徴を押さえておくことが必要です。
●属性や決算書を重視するのか
●担保評価を重視するのか
●買いたい物件に、どのくらいの評価を出すのか
それらをしっかり把握して、なるべく多くの銀行から評価を出させた上で、評価の高い物件を買うことが重要です。
物件評価を重視する銀行の場合、融資額が物件評価を上回らなければ、次に買いたい物件の融資づけの際に足枷になることはありません。それどころか、融資余力があれば2棟目を買うときに、1棟目を他の銀行で共同担保にすることもできます。さらに、複数の銀行が評価を出してくれるのであれば、いざ売却となったときにより高く、スピーディに売れる可能性も高くなります。
評価の出る物件を選ぶには、次の点を意識することです。
●積算評価が売価より高い物件
●収益性の高い物件
言い換えれば、「相場より安い物件」を買うということです。
ちなみに、銀行の担保評価は積算評価を採用するのか、収益還元評価を採用するのか、それらの混合なのか、銀行によって方法が異なります。そのため、同じ物件でも、融資が出る銀行と出ない銀行があるのです。各銀行の評価方法を知ることで、それに合った物件を持ち込むことができます。
以上をまとめると、
●評価の出る(積算評価が高く、相場より安い)物件を買うこと
●銀行を開拓し、各行の評価方法や評価額を押さえること
●出口を意識して買うこと
この3つが、物件を短期間で買い続けるための、重要なポイントになります。
補足になりますが、もしも、ダメな物件を買ってしまい、次の融資を引くことが困難な場合は、どうしたらいいのでしょうか。打開策としては、次のようなものがあります。
●小ロットのボロ物件を現金で買って再生する
●銀行では融資が付かない高利回り物件を、ノンバンクの融資を引いて買う
ボロ戸建など、小ロットの物件を再生して、売却を絡めながらキャッシュを増やしていくのです。このやり方を選択肢の一つとして知っておくと、苦境から抜け出すための武器になってくれるでしょう。
木下 たかゆき
不動産投資家