相続税の税務調査において、税務調査官が「録音」を嫌がる理由と家の中を見たがる理由を紹介します。

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トラブルに備えて税務職員とのやりとりは必ず録音を

調査官はいろいろな質問をして、相続人の申告漏れを指摘しようとします。前回ご説明した「除外」に話をもっていこうとしたり(関連リンク『税務調査官の「除外」という言葉に注意すべき理由』参照)、中には「ここで認めてくれないと調査が長引きますよ」と半ば脅しのような言葉を吐いたりする人もいないわけではありません。勝手に机の引き出しやキャビネットを開けるなど、法的に許されていない行為をする人もまれにいます。

 

また、税務調査のケースではないのですが、税務相談に来られた納税者に対して税務職員が誤った指導をし、その通りに納税者は申告処理したのに、後から税務署側の意見が変わり、結局修正申告になってしまったという異例なケースもあります。

 

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こうしたことを後からいくら訴えても「いった」「いわない」の水掛け論になるのはよくあることです。私はこのような場合に備えて、税務職員とのやりとりや税務調査の立ち会いのときは、必ず録音をするようにしています。後で起こるかもしれないトラブルを証明するのに、もっとも有効な手段だからです。

 

ただし正面切って「録音させてください」といっても、調査官は首を縦には振りません。「録音はやめてください」と断ってきます。これは、録音した内容が万一どこかで関係者以外の第三者に聞かれて、調査内容が漏れ伝わってしまった場合の責任を意識しての言動といえます。それを恐れて録音を許可しようとしないのです。

 

だからといって法律的には、税務調査の録音は禁じられてはいません。自分が立ち会っていない場所に録音機器をしかけて録音すれば、それは「盗聴」であり、違法行為ですが、自分自身がその場所にいる場合の録音は「記録」であって「盗聴」ではありません。

 

残念なことに調査官の中には、強引だったり無礼な態度を取ったり、違法な調査を行う人もいます。このような場合には、担当調査官の直属の上司や税務署の総務課にクレームとして報告します。その際、録音データが非常に有効なのです。

税務調査では「一通り家の中を見られる」と考えておく

また調査官は、何か財産に結びつくものはないかと室内を注意深く観察しています。一歩玄関に足を踏み入れたときからそれは始まっていて、居間や応接間など、相続人の話を聞く部屋の中に飾られているものにも目を光らせています。

 

そしてほとんどの場合、午前の部のヒアリングが終わったあたりか、午後一番くらいで「家の中を一通り見せてください」と切り出してきます。必ず行われるわけではありませんが、税務調査では一通り家の中を見るものと考えて、整理しておいたほうがいいでしょう。

 

目を付けられやすいのは、カレンダーやタオルなど、金融機関からもらいそうなものです。調査官が「トイレを貸してください」といったら、ほぼ間違いなくタオルをチェックされると考えたほうがいいでしょう。

 

最近は少なくなりましたが、昔は金融機関の名前入りのポケットティッシュや人形、貯金箱などもよくありました。これらの品があれば、調査官は「この金融機関と取引があったんだな」と考えて、申告書と突き合わせ、きちんと申告されているかを確認します。

 

室内の装飾では、絵画や書画骨董などにも目を留めます。もし、高額なものがあれば鑑定に回すということもあるかもしれません。それも自分たちで数字を出そうとはせず、私たち税理士に「評価してください」と振ってきたりします。

 

デパートで買った何万円かする絵や美術品などについては、家庭用動産一式でひっくるめて申告すればすむことですが、美術年鑑などに掲載されている絵画等ですと、注意が必要です。

 

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最近は携帯電話のデータに入れてしまうことが多いのであまり見なくなりましたが、ちょっと前まではどこの家庭でも必ず電話帳を作っていました。「見せてください」といってページをめくり、申告書には出ていない金融機関を探そうと躍起になる、というシーンもよく見られたものです。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

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本連載に記載のされているデータおよび各種制度の情報はいずれも、出典元である服部誠著『相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法[改訂版]』(幻冬舎メディアコンサルティング、2017年)の執筆時点のものであり、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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