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税務調査官の「除外」という言葉に注意すべき理由

相続税の税務調査で調査官が好んで使う「除外」という言葉の意図と、「預貯金」に関する質問をされた際の注意点などを見ていきます。

「除外」という言葉が意味する内容とは?

午前中の調査は、時間にして2時間程度です。調査官からすると、これで外堀を埋めたようなもの。ここで得た情報と事前調査とを突き合わせて矛盾点を探し出し、午後からそこを突いていく作業を行います。つまり午前中の質問は、申告内容と事実がきちんとかみ合っているかどうかを探るためのものなのです。

 

私は午後の調査が始まるまでの1時間のうちに、お客さまと午前中の質問に関する打ち合わせをするようにしています。「この質問にはこういう答え方をしていたので、午後の現物を見ながらの調査では、こんな方向に話をもっていきましょう」というように、午前の質疑応答との整合性が保たれるようアドバイスをさせてもらいます。

 

午前中の調査で、調査官はただ漫然と決められた通りに質問をしているわけではありません。質問の裏には必ず何らかの意図があります。ですから、受ける側は、その質問でもって調査官が何を聞き出そうとしているのか、何をいわせようとしているのかを意識しなければなりません。

 

調査官は、さまざまな事前調査を終えていながら、それを隠して質問してきます。自分たちが知り得た事実と、相続人の答えに矛盾点がないかどうかを探っているのです。

 

そのあたりをよく理解して、どういう答えなら不利にならないかを考えながら答えていかないと、不用意に調査官の言葉を肯定したり、なんでも話してしまったりして、墓穴を掘ることにもなりかねません。

 

たとえば、調査官が好んで使うものに「除外」という言葉があります。先ほどもご説明しましたが、調査官からすると、家族名義の名義預金が一番見つけやすい申告漏れなのですが、それに結びつけることを意図して「この預金が申告漏れになっています。申告の際に除外したんですか?」などと聞いてくるのです。

 

ここで「はい」と答えてしまうと、後から突かれる羽目になります。というのも「除外」とは、「相続税を軽減するために故意に申告しなかった」ことを意味しているからです。事実は単なるうっかりミスだとしても、「除外」を認めてしまったことになるのです。

 

こんなとき、私は「『除外』したわけではなくて、ついうっかり漏れてしまっただけですよね」とブレーキをかけるようにしています。そうでもしないと、税務調査に慣れていないお客さまが誘導的な質問に乗せられ、不用意な発言をしてしまうことがあるからです。

 

また、調査官は質問に答えるときの表情もよく観察しています。ですから、きちんと目を合わせて、しっかりと確信を持って答えることが大切です。視線をそらしたりオドオドした態度を取ったりすると「ウソをついているな」と思われて、よりいっそう突っ込んだ質問をたたみかけてきます。気迫負けしない、気持ちの強さが必要です。

 

私は常に、税務調査の1週間くらい前までにお客さまとの打ち合わせの席で、リハーサルをするようにしています。実際のお客さまの答えを基に「それだと申告の内容と合致しないので、ここを突っ込まれますよ」などとアドバイスさせてもらいます。

 

これを行うことで事実と申告内容が一致しますし、「こんな質問にはこんな答えを」というのがわかって、お客さまも安心できるようです。

 

「どんなことを聞かれるのかわからない」「どう答えればいいのかわからない」ということが、初めて税務調査を経験する人にとっては、一番不安なことなのではないでしょうか。その不安を拭い去るのが、事前の打ち合わせとリハーサルなのです。

預貯金に関する質問で「控えめな答え」はNG

ではここで、申告漏れの指摘の多い名義預金につながる質問について、補足しておきましょう。

 

午前中に行われる「ヒアリング調査」でよく聞かれる質問項目のなかに、相続人である妻に、自分の親の財産相続の有無、亡き夫からの贈与の有無、妻自身の収入の有無の確認があります。調査官はこれらに対して「そういうものは私にはなかったです」という言葉を引き出したいと思って質問してきます。

 

もしこの言葉を引き出すことができれば、通帳などの現物を見ながらの調査のとき、「この預金は奥さん名義になっていますが、奥さん自身の財産ではありませんよね」という方向にもっていけるからです。

 

「ご両親の財産を相続しておらず、亡きご主人から贈与も受けていない。専業主婦でご自分の収入もなかったということは、これはご主人の財産ですよね。だからあなた名義の口座であっても、相続財産であり相続税の対象になります」ということにしたいのです。

 

調査官のなかには、話しやすい雰囲気を作り、苦労話などをうまく引き出しながら、相続人がついうっかり本当のことを話すのを待つ人もいます。

 

「奥さんはずっと専業主婦だったんですよね。仕事で忙しいご主人が不在がちで、1人でお子さんたちを育てるのは大変だったんじゃないですか」など、巧みに「専業主婦で収入のない期間が長かった」ことの裏を取ろうとする場合があります。

 

こうした質問に対しては、事前の打ち合わせのときに、親から財産をもらっている場合には、「けっこうな財産を相続した」と、独身時代に働いた経験のある人なら、当時の収入金額から貯金できる金額を推定し、「高金利の時代に複利で運用していたので相当の金額になっていることを説明できるようにしておきましょう」とアドバイスするようにしています。

 

相続人である奥さんたちに共通していえるのは、概してみなさん控えめだということです。打ち合わせのときに「ご両親の相続財産は?」とか「結婚前の収入は?」と尋ねると「人さまにいうほど多くありません」と遠慮がちに答える人が多いのですが、税務調査ではこれが不利に働いてしまいます。

 

一般的な感覚からすると、専業主婦だった人が3,000万〜4,000万円の預貯金を自分の財産として持っているというのは、ヘンな感じがするかもしれませんが、決してあり得ないことではありません。

 

ここ20年ほど預金金利の低い時代が続いているので、世の中の人の多くが忘れているかもしれませんが、昭和の終わりから平成の初めにかけてのバブル時代を思い出してみてください。当時、複利で計算すると10年で2倍近くになる元本確実な高金利の金融商品が数多くありました。

 

独身のころ、ある程度の預貯金を持っている人なら、それに親の相続財産や夫からの贈与を合わせてまとめて運用すれば、決して作れない金額ではないのです。

 

ある程度の年齢の調査官だと、こうした時代背景を説明すれば、妻の高額な財産について納得してくれます。その時代を知っているので、理解が早いのでしょう。ですが、若い調査官の場合、自分が大人になったときすでに低金利時代が始まっていたので、なかなか納得が得られません。

 

余談ですが、生活費に関する質問についても同様です。若い人の場合、自分の生活水準が基準になりがちなので、毎月の生活費が40万円とか50万円かかるというのが、理解しがたいようなのです。

 

そんな場合は「それはあなたご自身の生活水準に照らせば多いかもしれませんが、世の中にはいろいろな生活水準の人がいるんですよ。これだけの資産のある家なら、生活費もそれなりにかかることが普通にあることなんですよ」とお話しするようにしています。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

税理士法人レガート 代表社員・税理士

昭和34年1月生まれ。中央大学商学部卒。昭和58年6月税理士登録。
人と人とのつながりを大切にした「誠実な対応」「迅速な対応」「正確な対応」をモットーに、税・財務の専門家として、個人の資産運用や相続・事業承継に関するコンサルティング、相続申告業務において多数の実績を持つ。相続申告・贈与申告・譲渡申告等の関与件数は1000件を超え、その経験を基に雑誌などのメディアや書籍の執筆活動なども行っている。

著者紹介

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本連載に記載のされているデータおよび各種制度の情報はいずれも、出典元である服部誠著『相続税の税務調査を完璧に切り抜ける方法』(幻冬舎メディアコンサルティング、2013年)の執筆時点のものであり、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

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