今回は、判断能力の低下に備えて知っておきたい、「成年後見制度」の概要をお伝えします。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

「成年後見をご存じですか?」といった質問に「ボランティアかなにか」と答えた方がいらっしゃいました。この方の頭の中では「せいねんこうけん」を「青年・貢献」と変換されたのでしょう。若者が社会貢献をする姿が浮かんだのかもしれませんね。そういうケースもあるかもしれませんので、あながち間違いとは言いきれません。

 

昨今、成年後見という言葉を世間でも耳にする機会が増えました。言葉くらいは聞いたことあるけど詳細まではわからないという方も多いかと思います。

 

また、成年後見制度は成人の知的障害者に対する制度で、高齢者には関係ないものと勘違いされている方もちらほらお見受けします。成年後見制度は知的障害者はもちろん、その他精神障害で判断能力が欠けている方や認知症を患い判断能力が衰えた高齢者等も対象となる制度です。

 

特に高齢化が進む我が国において、認知症高齢者数は右肩上がりに伸びています。現在四百万人以上いるといわれていますが、そのうち成年後見制度利用者は一割にも満たない数字です。制度自体の認知度があまり高くない事が要因のひとつと言えます。

 

認知症等で判断能力(事理を弁識する能力)が欠けてきた、もしくは失ってしまった方に対して、財産管理や身上監護の面でサポートする制度である成年後見制度、ご自身のもしもの為に、もしくはご家族のもしもの為に、言葉と概要くらいは覚えておく必要があります。

 

 

誰でも歳を重ねるごとに物忘れが多くなってきたなと感じることがあるかもしれません。

 

これが年々ひどくなり、次第に物事を判断する能力が衰えて、ある日突然、認知症と言われるような状態になってしまったら、ご自身の財産や年金をしっかり管理できるでしょうか? 介護が必要になった際、ご自身で要介護認定の申請や介護事業者との契約を結べるでしょうか?

 

なかなか難しいかもしれません。そんな時に大変役に立つのが成年後見制度です。判断能力が衰えた方の財産管理と身上監護を成年後見人等(以下、後見人)がサポートしてくれます。

 

この成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の二種類があります。

 

簡単に説明すると、前者は既に判断能力が衰えたり失われた方が対象です。認知症等に陥り、すぐにでもサポートが必要な方に対して、親族等が家庭裁判所へ後見人の選任を申し立てることにより行います。

 

それに対して、後者は当事者間の契約によって、自らが元気なうちに将来サポートしてくれる任意後見人や代理権の内容を選んでおく制度です。後々、認知症になってしまった場合には事前に自分で結んだ契約によって自らが選んだ任意後見人がサポートしてくれる仕組みになっております。ちなみに、任意後見契約の締結は、公正証書により行わなければならないことになっています。

 

自分をサポートしてくれる後見人を自分で選べるか否かが、法定後見と任意後見の大きな違いといえます。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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