今回は、未成年の遺言や夫婦の遺言はどう残し、何に注意するべきかをお伝えします。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

遺言に関する本をよく見かけるようになってからしばらく経ちますが、現在でも、一般的には「遺言は年を取って死が迫ってから作るもの」というイメージが強いのではないでしょうか。

 

もちろん、若くて元気なうちでも遺言をすることはできます。では、何歳からできるのかというと、これは民法にきっちりと定められていて、ずばり十五歳からなんですね。ですから、十五歳以上であれば未成年でも遺言をすることができるわけです。

 

ところで、ヨーロッパの一部などでは、「大人なら遺言を書いていて当然」といった考え方もあるようですが、日本ではそのようなことはありません。文化の違いはもちろんあるのですが、原因はそれだけではないようです。

 

そもそも日本は戸籍制度がしっかりしていて、亡くなった後でも家族のつながりを把握できることから、遺言がなくても相続手続をなんとか進めることができるのです。このようなことから、遺言の必要性がそこまで高くないような一面もあるようです。

 

とはいえ、遺言があるとないとでは、相続手続の手間がけっこう違ってくるのも事実です。なにしろ十五歳からできるのですから、「自分にはまだ早い」などと思わずに、元気なうちに遺言についていろいろ調べ、自分に必要だと感じたら積極的に活用するとよいのではないでしょうか。

 

 

「おしどり夫婦」という言葉があります。何をするにもいつでも一緒で仲睦まじい夫婦といったところでしょうか。家でも一緒、買い物にも旅行にも、どこでも一緒に出かけて趣味も一緒で・・・。まあ当然、最後は同じお墓に一緒に入る事になるのでしょう。

 

夫婦仲が良い。それはそれで結構なことなのですが、遺言だけは一緒にしないでくださいね。

 

民法には「遺言は、二人以上の者が同一の証書で行うことができない」と共同遺言の禁止が規定されています。共同遺言、すなわち一つの遺言書に夫婦連名で遺言を残すようなことは認められてはおりません。

 

そもそも、遺言の効力は遺言者の死後に発生しますので、二人以上の人間が連名で遺言を残してしまった場合、一人は亡くなっても一人は生きているとなると、その遺言の効力発生において問題が出てしまいます。

 

また、本来遺言は自由に書かれるべきものです。しかし二人で同じ遺言を残そうとした場合、どちらかの意見が制約を受けてしまう場合が多々あるでしょう。故に、どんなに仲が良い夫婦でも、それぞれが自らの意思で、別々に遺言を残す必要があります。

 

老後、「私達もそろそろ遺言書でも作成しておかないとねぇ」と夫婦で話し合い、不動産は長男に、預貯金は長女に・・・と、ひとつひとつ相談しながら決めていくこと自体はかまわないのですが、それを一枚の自筆証書遺言に一緒に記入し、最後に夫婦連名で署名押印、ということはしないで下さい。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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