今回は、「争族」を防ぐ遺言書の概要と、その法的効力についてお伝えします。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

「争族」という言葉を目にする機会があるかと思います。明確な定義があるわけではないのですが、相続における親族同士の遺産分割をめぐる争いを意味した造語と考えてよいでしょう。

 

いざ相続が発生しますと、遺言書がない場合には、一般的に相続人全員が集まって遺産分割協議を行うこととなるわけですが、結局は財産の取り合いですので、まったく揉めないほうがレアケースなのかもしれません。表面的には揉めなくても後々、遺恨を残すケースも多いようですし。

 

ただでさえ、親族間でお金の話をするのは嫌なものです。また、いったん「争族」が始まってしまえば、相続人それぞれが疲弊するとともに、裁判にもつれ込めばそれ相応のコストもかさんできます。正直いいことはひとつもないように思えます。

 

そんなとき、遺言者の意思をしっかり書き記した一通の遺言書さえあれば、残された大切なご家族間での相続トラブルを未然に防ぐことができたのに・・・というケースは多いようです。

 

遺言書には、遺産分割割合を書き記す以外にも、遺言者の気持ちを書き記す「付言事項」というものがあります。なぜこのような相続割合にしたのか、なぜ兄弟で相続分に差を付けたのか等々書き残すことで、相続人は亡くなった方のお気持ちを知ることができ、不要な親族間での争いを避けることにもつながるでしょう。

 

大切なご家族が、相続を原因に争うことのないよう、そろそろ遺言の準備をお考えになってみてはいかがでしょうか。

 

 

最近「遺言書」への関心が高まっているように思います。ご自身の最後の意思を遺族に伝える為、もしくは残されたご遺族間での無用なトラブルを避けるために遺言書を残される方が増えてきました。

 

「遺言書には、何か書いてはいけない事柄ってあるのでしょうか」というご質問を頂いたことがあります。お答えとしては、「遺言書には、何を書いてもいいが、法的効力が生じる事項は法律で決まっています」ということになります。法的効力が生じる事項を「遺言事項」と言います。ここで遺言事項全てを列挙することは避けますが、代表的なものをいくつか見てみましょう。

 

まずは、子供の認知や未成年後見人の指定など、身分に関する事があります。次に、相続分の指定や遺産分割方法の指定、遺贈や寄付など、相続における財産処分に関する事があります。その他、遺言執行者の指定なども、遺言書に書いてあれば、当然に法的拘束力を生じる遺言事項ということになります。

 

逆に言うと、遺言事項以外のことを遺言書に残しても、それに関して遺族が法的に縛られることはありません。例えば、葬儀は盛大にやってくれと書かれていても、遺族が近親者のみの家族葬を選ぶ事も可能です。骨は太平洋に散骨してくれと書かれていても、遺族が先祖代々のお墓に納骨してしまえばそれまでです。

 

やはりこの辺りのご希望は、生前しっかりご家族と話し合っておく必要がありそうです。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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