今回は、「公正証書遺言」のメリットと、その原本の保管期間についてお伝えします。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

公正証書遺言は、その名のとおり公正証書による遺言です。

 

法律では、本人が口伝えした趣旨を公証人がその場で記録して、本人と二名の証人に内容を確認させるように定められています。といっても、実際には、あらかじめ公証人と打ち合わせをしておき、当日は公証人が用意しておいてくれた証書を証人と一緒に読み聞かせてもらうのが一般的なようです。

 

いずれにせよ、法律の専門家である公証人が作成に関わるのですから、内容に不備のある遺言が作られる可能性はきわめて低くなります。また、公証役場では、原本を長期にわたって保管してくれますので、偽造はもちろん、紛失の心配も無用です。

 

そして、相続開始後に家庭裁判所での検認がいらないのは、この公正証書遺言だけとなります。検認不要につき戸籍の収集もかなり省略できるうえ、信頼性が高いので大抵の手続きは順調に進められます。ですから、公正証書遺言があると、相続人の負担が一気に軽くなるわけです。

 

筆記用具と認め印だけで作れる自筆証書遺言と比べると、公正証書遺言の作成には手間も費用もかかります。ですが、後々のことまで考えると、それだけの価値はあるのではないかと思われます。

 

 

公正証書遺言を作成した場合には、公証役場にてその原本が保管されます。「原本保管の期間はどれくらいですか?」というご質問をよく頂きます。

 

公証人法施行規則には、公正証書の原本保管期間は、原則二十年間と規定されています。そうしますと、六十五歳で公正証書遺言を作った場合は八十五歳までしか原本保管がされないということになります。遺言は、遺言者の死亡時に初めて効力を生じるわけですから、遺言者のご存命中に保管期間が満了してしまっては困りますね。

 

故に、公証人法施行規則には、「保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない」という規定もあるのです。

 

公正証書遺言はまさしくこれにあたりますので、少なくとも遺言者のご存命中は保存されることになっています。具体的な保管期間については、各公証役場で取り扱いが異なるようですが、概ね遺言者が一二十歳になるまでは保管する事になっているようです。この年齢につきましては、日本人の最高年齢の方の年齢をおおまかな基準としているようです。

 

また昨今、東日本大震災のような大災害に備えて、公正証書遺言については、作成時に原本と電磁的記録とを二重に保存しておく、原本の二重保存制度が構築されました。

 

このあたりを考慮しますと、やはり自筆証書遺言よりも多少費用がかかっても、公正証書で遺言を残す意味がご理解して頂けるのではないでしょうか。

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