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全米一位になったこともあるハワイの賃料相場
需要と供給のバランスを見る限り、ハワイの賃料の高さは容易に想像ができます。では実際のところ、どの程度高額なのでしょうか?
アメリカの不動産ポータルサイト大手のZillowの統計データによると、2018年7月において、ホノルル市郡の1ベッドルーム賃料の中間価格は1,695ドル、2ベッドは2,100ドル、そして3ベッドは2,700ドルとなっています。
1ベッド 1,695ドル
2ベッド 2,100ドル
3ベッド 2,700ドル
Zillowでは、物件タイプによる誤差などをなくし、地域ごとの実質賃料(中間値)を独自に算出しているZRIという数値があります。下記図表1は、最新の2018年7月のZRIを州別のランキングにしたグラフです。
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ワシントンDCを除けば、カリフォルニア州に次いで全米で2番目に賃料が高い州に位置づけられているのです。ニューヨーク州やボストンのあるマサチューセッツ州を差し置いて2位です。しかも、月別に過去の数値を見ていくとカルフォルニアを抜いて1位だった月も。この太平洋の真ん中にあるハワイが、全米でトップクラスの賃料とは、改めて驚くべき数値だと思いませんか?
しかしこちらも、これからどうなっていくかというのが重要です。下記図表2は、同じくZillowのデータをもとに、参考として2ベッドの賃料の中間価格の推移をグラフにしたものです。
家賃に関しては、いくつかのポータルサイトがそれぞれ統計を発表していますが、共通していえるのは、2015年前半をピークに、その後は現在まで横ばいか緩やかに減少傾向にあるといえそうです。
ミリタリーは政策の影響で減少するリスクも
ここまで見てくると、賃貸ニーズは高そうであること、賃料は高く設定できそうであることなどから、オーナー目線で考えると非常に良い環境のように見て取れます。そして加えて、もう1つハワイの賃貸需要、さらには経済を支えている大きな要素にミリタリーの存在があることを忘れてはなりません。
最新のハワイ州のデータによると、ミリタリーがハワイ経済に与えるインパクトは、10万以上の雇用創出と約87億ドルもの所得に貢献し、それらはGDPにおいて約10%を占めています。当然、不動産においての影響も大です。ハワイには約45万世帯ありますが、そのうち約19万4,000世帯が賃貸です。そのうち、1万~2万世帯がミリタリーによる賃貸といわれています。つまり、全賃貸物件のうち10%程度はミリタリーがテナントということになります。
ミリタリーには、Basic Allowance for Housing※1(BAH=住宅手当て)があり、扶養家族の有無やランクによって約1,500ドル~4,000ドルと決められています。オーナーからすれば、このBAHがあるため賃料の滞納不安が少なく、ミリタリー関係者はとてもいいテナントとして人気でもあるのです。
※1 https://militarybenefits.info/bah-rates-state/hawaii/
ミリタリー人員の推移を見ていくと、過去80年代、90年代と緩やかに減少傾向が続き、2009年以降増員が続いています。下記図表3はオバマ大統領によるアジア重視政策のため、地政学的に重要なハワイへの増員が続いてきたようです。見方によっては、ミリタリー人員の増減は政治的意思によって常に変更となる、という不確定性をはらんでいる事実は認識していたほうがよいかもしれません。
もう1つ、興味深い統計があります。
実はハワイでは、2017年1月現在、1万人に51人がホームレス※2といわれています。これはワシントンDCを除く50の州の中で最悪の数字です。経済も順調、失業率も低いのに、同時にホームレスになる人々は増え続けているのです。前回でも触れたように、州外へ出ていく人数も増えてきています。これらの大きな要因は「物価の高さ」にあると指摘されています。住宅価格の高さはすでに触れましたが、加えて電気代も全米1高く※3、全米平均の倍以上です。ハワイは大陸から離れた島ですので、どうしても輸送コストがかさみ、食品、建材、その他生活必需品全般に高くなってしまうのです。
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※2 The 2017 Annual Homeless Assessment Report(AHAR)to Congress
※3 https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=34932
では、賃金もそれ相当に高いのでしょうか? 下記図表4は民間セクターの年平均賃料を表したもので、全米一高い物価に対し、賃金は全米の平均以下で、州別では下から数えたほうが早いという状況です。平均賃金は約4万5,000ドル、月にして3,750ドルです。
これに対して、家賃の平均は2ベッドで2,100ドル。半分以上が家賃で消える計算になります。ローカルに向けた賃貸運営は、どうしてもこのような事実も考えながら検討しなくてはなりません。
一方で、観光客は順調に増え続けています。ハワイを訪問する観光客数は過去7年連続で過去最高を更新し続けています。訪問者数としてはアメリカ本土からが圧倒的に多く、国外では日本からの観光客が長年一位の座を守っています。ハワイには、ホテルコンドミニアムやバケーションレンタルなどの運用方法があるので、観光客も賃貸テナントとして考えられるのです。
もちろん、ローカルへの賃貸と違い、火山や台風などにより影響を受けやすいというリスクもあります。ハワイで不動産投資を検討される場合、どのようなテナント向けの物件を購入するのかで大きく方向性が変わります。それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握し、じっくりと検討してみてはいかがでしょうか。
田村 仁
株式会社Crossover International 代表取締役
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