今回は、「相続放棄」はどのような状況で選択し、いつ行うべきなのかをお伝えします。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

相続財産と聞くと、不動産や預貯金といったプラスの財産をイメージしがちです。遺産分割で揉めるのも、やはりプラスの財産の取り合いといったケースが多いかと思います。

 

しかし、「相続」とは相続人が被相続人の有していた権利と義務を引き継ぐ制度です。故に、原則的には借金等のマイナスの財産も当然に引き継ぐことになります。例えば、「プラスの財産が一切なくマイナスの財産だけを父が残して死んでしまった」とか、「夫が亡くなって、家は残してくれたがそれ以上に莫大な借金が残っている」など。

 

このようなケースで残された相続人は、どうしてもマイナスの財産を相続しなければならないのでしょうか? もしそうだとすると誰しもが突然借金を抱えてしまうリスクを負っていることになります。

 

こんなとき、民法では「相続放棄」という制度があります。「相続放棄」した者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされます。故に、遺産相続における一切の権利と義務を負わないことになりますので、マイナスの財産だけでなくプラスの財産も引き継がなくなるわけです。

 

「相続放棄」をするには、相続開始を知ってから三ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てを行う必要があります。期限を忘れてたとか、期限なんて知らなかったでは済まされませんので気を付けてください。

 

 

相続放棄をするときには、原則的には相続開始を知ったときから三ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。この三ヶ月間は「熟慮期間」といわれ、放棄も承認もしないままこの期間が過ぎると、相続人はその相続について単純承認したものとみなされます。

 

つまり、プラスの財産もマイナスの財産も合わせて、すべての遺産を受け継ぐことになるわけです。ですから、亡くなった人の借金が問題にならない場合などは、そのままにしておいても大丈夫といえば大丈夫なのですが、危ないのは、借金の影響が大きい場合です。この「三ヶ月ルール」を悪用して、相続開始から三ヶ月以上が経過するまで借金の存在を黙っているような業者もいるそうです。

 

ただし、このようなときでも、家庭裁判所が「借金の存在を知っていれば放棄していただろう」と認めた場合などは、相続開始から三ヶ月が経っていても放棄できる可能性はあります。また、借金の存在を調べるのに時間がかかってしまう場合などは、家庭裁判所に熟慮期間の延長を請求することもできます。

 

ちなみに、三ヶ月を経過する前に相続人が相続財産の一部または全部を処分した場合も、単純承認したものと見なされます。亡くなった人が貸していたお金の返済を相手に請求した場合などもこれに当たりますので、ご注意ください。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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