本連載では、海外移住に関する情報や、現地のインターナショナルスクールなどでの子女教育についてご紹介します。今回は、香港における「ヘルパー(お手伝いさん)」の利用についての最新事情を、日本人エージェントのインタビューを通じて紹介します。※本連載は、小峰孝史が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。

香港では普通の家庭でもヘルパーを雇うことが一般的

香港に住む香港人・欧米人の間では、富裕層でなくても、お手伝いさん(ヘルパー)を雇うケースが多くあります。しかし、たいていの日本人はヘルパーを雇った経験がないため、香港で暮らすことになっても、どうやって雇えばいいのか悩んでしまうでしょう。

 

ヘルパーを雇いたい場合は、エージェントに頼んで探してもらうのが一般的です。おそらく香港唯一の日本人エージェントであるHKO ARIGATO LIMITEDの昆久子さんにお話を聞いてみました。

 

フィリピン人のヘルパーが「1ヵ月4,410香港ドル(約6万円)」で雇える!

 

OWL:香港には、フィリピン人とインドネシア人のヘルパーが多いと思います。貴社が派遣するのは、どちらの出身のヘルパーですか?

 

:弊社は、香港のローカルのエージェント会社と共同で運営していますが、フィリピン人のヘルパーを紹介しています。

 

OWL:ヘルパーの1ヵ月あたりの給料はいくらですか?

 

:ヘルパーの給料は、その出身国の政府が香港政府と協議して決めるので出身国によって異なるのですが、フィリピン人のヘルパーの場合、1ヵ月あたり4,410香港ドル(約6万円)です。

 

OWL:日本人の感覚からすると、フルタイムのヘルパーを約6万円で雇えるのは非常に安いですね。この給料以外でヘルパーに支払うお金はないですか?

 

:5年間以上雇用したヘルパーを解雇するときには退職金が必要ですね。そのため、5年経過する前にヘルパーを解雇してしまうということは結構あります。ですから、解雇されたヘルパーだからと言って、ダメなヘルパーだとは言い切れません。

 

来てもらうヘルパーはどんな流れで決める?

 

OWL:ヘルパーを雇う場合、どういう流れでヘルパーを決めるのですか?

 

:ヘルパーを雇う場合、複数の候補者の履歴書の中から何人かを選んで面接し、採用する人を決めます。

 

OWL:エージェントから見て、香港人と日本人でヘルパーの決め方に違いがありますか?

 

:一般的に、香港人は候補者と面接して気に入ったら、すぐその候補者と契約します。一方、日本人の場合は、奥様が良さそうな候補者を見つけたあとに、改めてご主人との面接を希望したり、ご主人との面接の後も、再度確認のためにさらに面接を希望をする方が多いですね。そのような、二度・三度の面接だけで10日間ぐらい経ってしまい、その間に候補者が別の雇い主との契約にサインしてしまうことも少なくありません。

 

OWL:それは、どこに原因があるのでしょう? 日本人が遅すぎるのでしょうか、フィリピン人がせっかちなのでしょうか?

 

:契約満了で新しい雇用主を探そうとしているヘルパーの場合、契約満了から2週間たったら、フィリピンに帰国しなくてはいけません。ですから、契約満了前から就職活動をしているのですが、その就職活動は、日曜日を使って行うか、休日をもらって行っているわけで、ヘルパーたちも時間勝負なのです。

 

OWL:なるほど。そうであれば、フィリピン人のヘルパーたちが急いで契約しようとするのも仕方ないですね。でも、日本人としては納得する人でなければ契約したくない・・・。どうしたら良いでしょうか?

 

:少ない回数の面接で契約締結まで行けるよう、お客様の日本人家庭のご希望を予めよく聞いて、ご希望に合いそうな候補者を引き合わせるよう、心がけています。

 

日本人がヘルパーに求めるものとは?

 

OWL:日本人のお客様は、どういった家庭が多いのでしょうか?

 

:弊社の場合、日本人同士のご夫婦の家庭と、日本人女性・外国人男性のご夫婦の家庭が、だいたい半々ですね。私の見る限り、日本人女性と結婚している外国人は、香港人・欧米人など様々です。

 

OWL:日本人がヘルパーに特に求めるものは何でしょうか?

 

:料理上手な人、きれい好きな人というのは、日本人のお客様に限らず、一般的な要望ですね。あと、お子さんのいる家庭の場合、子どもの世話をきちんとできる人を希望されることが多いですが、これも日本人家庭に限りません。日本人のお客様は、外国人(香港人・欧米人)のお客様に比べ、ヘルパーに英語力を求める傾向があるように思います。子どもたちの教育上、きちんとした英語を話してもらいたい、と考えるお客様が多いようです。

 

エージェントとヘルパーの信頼関係が重要

自宅に入る・お金を預けるヘルパー・・・気をつけるべき点は?

 

OWL:ヘルパーを雇った経験のある日本人は多くないと思いますが、どういった点に気を付けるべきでしょうか?

 

:やはり、他人を自宅に入れるわけですから、貴重品管理が重要ですね。貴重品はカギのかかる場所にしまうなどした方がよいでしょう。

 

OWL:鍵のかかる場所にしまう以外にも、防犯上の対策はありますか?

 

:防犯カメラを取り付ける家庭もあります。子ども(とくにまだ話せない赤ちゃん)のいる家庭の場合、カメラによるチェックを行うことがありますね。

 

OWL:日々の買い物もヘルパーにお願いしますから、お金の管理も気になりますね。

 

:できる限り毎日、買い物のレシートと預けているお金をチェックするとともに、ヘルパーにも、しっかり管理していることを知ってもらいましょう。

 

エージェントが雇い主の代わりになって、ヘルパーに希望を伝えることも可能

 

OWL:買い物の方法、お金の管理など、ヘルパーに慣れない日本人では、指示しにくいような気もしますが・・・。

 

:そうですね。香港人や欧米人は、いわば「上から目線」で使用人に接することに躊躇しない人が多いのですが、日本人の場合、英語が堪能であっても、「上から目線」で命令しにくいと感じる人がいるかもしれません。弊社にご依頼いただければ、買い物の際のお金の管理など、お客様に代わって指示することもできます。雇用開始後のサポートですので、別料金にはなりますが、ヘルパーを雇い始めの最初のときだけでも、きちんと指示しておくことで、後々のトラブルのリスクの抑制にもなります。

 

OWL:それでもトラブルがあったら・・・?

 

:お金の管理や掃除のやり方、衛生面などの感覚的なズレは、なかなかゼロにはなりません。例えば、日本人は土足のエリアと靴を脱ぐエリアを明確に分けますが、日本人以外はそこまで明確に分けないので、日本人からするとヘルパーの行動にぎょっとすることもあるでしょう。そうした感覚的なズレがありましたら、弊社がお客様にかわってヘルパーに伝えることもできますよ。

 

OWL:そのように言っていただけると頼もしいですね。

 

:厳しく対応すべきときには厳しく対応しますが、フィリピン人のヘルパー達と心を通わせることも、非常に重要だと思います。香港に住むフィリピンの人々は、自分たちでファッションショーをやって楽しんだりすることがありますが、そうしたイベントで、審査員として呼んでもらうなど、私たちも様々な交流をしています。

 

 

OWL:フィリピン人のヘルパー達からそれだけ信頼されているからこそ、厳しい対応もできるのですね。今日は、有難うございました。

 

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