海外に暮らして英語を習得するなら、早いに越したことはない
近年では、節税のほか、日本での生活以上に快適な生活を求め、海外移住を検討する富裕層の方が増えています。しかし、海外移住のメリットは、金銭面や生活面ばかりではありません。お子さんがいらっしゃる方の場合、現地校やインターナショナルスクールにお子さんを学ばせることで、バイリンガル教育ができるからです。
グローバル画が進むいまの時代、英語が話せないことは大きなハンデだといえます。英語を自由に話すことができれば、外国での就労も容易ですし、人生の自由度が違ってきます。
長期的な目線で考えるなら、節税や生活の利便性よりも、バイリンガル教育のほうが、メリットはずっと大きいといえるかもしれません。
海外で英語を学ぶ場合、「何歳で学ぶのか」は非常に重要であり、それによって学びの効果は大きく違ってくるでしょう。
幸い筆者の周囲には、小中学校時代に海外で学んだ帰国子女から、社会人になってから留学した人まで、さまざまなケースがあるので、タイプごとに英語のレベルをまとめてみました(図表1)。
左から、
①小中学校時代に海外で勉強した人
②高校時代に海外で勉強した人
③大学時代に海外で勉強した人
④社会人時代に英語で勉強した人
の順に並べています。
海外に住んでいた年数もバラバラなので、あくまでも身近なデータの収集でしかありませんが、小中学校時代に海外で勉強していた人がもっとも英語がうまく、社会人時代に海外で勉強した人はそれほどではありません。これは皆さんの感覚とも近いのではないでしょうか。
実は筆者も「④社会人時代に英語で勉強した人」に該当します。留学前は、英語ペラペラになって帰ってくるのかな…などと期待していましたが、そうはなりませんでした。
もし、お子さんと一緒に海外移住できるのなら、早いほうがいいでしょう。
幼稚園時代の2年間だけ海外に住んでいたという程度だと、英語を忘れてしまうこともありますが、小学校4、5年生ぐらいで英語を話せるようになっていれば、しっかり身について、忘れることはないでしょう。
小学生で「英検準1級」の取得も可能に
では、英語力はどの程度になるのでしょうか。
英語力を測定するうえで最もポピュラーなのは「英検」ですが、筆者がお手伝いしたご家族のケースでは、小学校時代に英検準1級を取れるぐらい、というのが通常のラインです。もちろん、なかには1級を取れるお子さんもいらっしゃいます。
英検の会場に行くと、小学生にしか見えないお子さんが大勢入っていくので驚きます。
英検のリスニング試験では選択肢の読み上げがあり、明らかに誤りの選択肢もあるのですが、それを大真面目に読み上げる音声が流れてくると、嘘か本当か、小学生のお子さんたちがどっと笑うといった光景も見られるといいます。
受験英語を一生懸命学んできた大学生が、必死の思いで受験する英検準1級を、海外で学んだ小学生のキッズたちが笑いながら合格していくというのは、日本における英語教育の実情を実によく表しています。
中学受験、帰国生は一般生の「2倍のチャンス」が与えられている
海外で学び、そのまま英米の大学に進学する子もいますが、途中で日本に戻る子もいます。首都圏に戻る場合は、中学受験のタイミングに合わせるケースも多くあります。
中学受験は、東京では、2月2日や2月3日以降に受験日のある学校もありますが、一般に本命とされる学校の受験日は2月1日に集中しています。そのため、一般生が普通に中学受験をする場合、3校ほどしか受験のチャンスはありません。
東京・神奈川の中学校の受験日の日程をまとめた図表2を見ていただけると、より実感できるかと思います。
一方、すべての中学校に帰国生入試が設けられているわけではありませんが、帰国生入試は12月から1月にかけてバラバラに受験日が設定されています。そのため、帰国生入試は受験のチャンスが多いのです。受験する学校のレベルにもよりますが、3校くらいは受験できるでしょう。それだけでなく、帰国生は一般入試も受けることができます。つまり、チャンスは2倍あるといってもいいでしょう。図表3をご覧ください。
また、帰国生入試と一般入試では受験科目が違うので一概に比べられませんが、帰国生入試の方が一般入試より少しハードルが低いといわれています。
もちろん、帰国生入試は一般の入試と受験科目が違うため、準備はそれなりに大変ですが、ほとんどが2月1日の一発勝負で、最大でも3校くらいしか受験できない一般生から見たら、帰国生は非常に恵まれているといえます。
大学受験、帰国生は英語で「無双」できる
受験のなかで最も厳しい戦いになるのが大学受験ですが、この大学受験ではどうでしょうか?
帰国生向けの大学入試もありますが、一般入試で見てみましょう。
一般入試の場合、同じ問題で受験して特別枠もありませんから、帰国生だから有利という制度上の優遇はありません。
制度上では有利な点がなくとも、帰国生であることは大学受験で圧倒的に有利に働きます。私立文系の場合、英語・国語・社会の3科目入試を実施している大学が大半かと思いますが、この3科目のなかでも英語の配点が高い大学が多いのです。配点が高い英語が得意な帰国生は、大学受験で無双できるのです。
筆者も、中学受験の帰国生入試で出題される英語の入試問題をいくつも解いたことがあります。非帰国生ながらオックスフォード大学に留学しMBAを取得した私ですが、恥ずかしながら、中学受験の帰国生入試は、英語だけで勝負するとあちこちの中学で不合格になりそうな難易度です。
一方で、そうした中学入試の帰国生入試の英語を解いたあとで、大学入試の英語の試験問題を見ると、かなり易しいように感じます。つまり、帰国生にとって大学入試の英語の問題はかなり楽勝だと思います。
数学0点でも東大文系に合格!?
もう1つの例を考えてみましょう。東大入試です。
国公立大学を受験する生徒たちが受ける共通テストで、英語は95%、その他の科目は90%取れたとします。そして、二次試験(各大学ごとに出題される試験)で、東京大学の文系を受験するとします。
東大文系の場合、二次試験は英語120点、国語120点、数学80点、社会(2科目)120点という点数配分です。
多くの受験生は、50%から55%くらいの得点で争っているため、国語120点中60点、社会120点中60点と仮定しましょう。そして、苦手な受験生も多い数学は、極端ですが、0点と仮定します。
一方、英語(120点満点)は、多くの受験生は60点~70点の範囲でしのぎを削っています(ちなみに、大学受験時代、英語が苦手だった私は、120点中60点くらいしか取れませんでした)。そんななか、帰国生は120点中100点以上取れることも少なくありません。このシミュレーションでは100点としましょう。
そうすると、二次試験の合計は、英語100+国語60+数学0+社会60=220点。
これに共通テストの点数(二次試験の得点との加算時に110点満点に調整され、100.22点)を加算すると、合計320.22点になります。
合格最低点は、年によって変化しますが、たとえば、2022年度の文科一類(法学部進学コース)の場合、302.6点です。
さきほど計算した、数学0点の帰国生の点数(320.22点)は、この合格最低点を上回っています。つまり、数学で80点中0点であっても東大に合格できるという衝撃の結果になるのです。
このように、子どものうちに海外で数年間英語教育を受けるだけで、英語力が身につき、日本で大学受験をするにしても、大学がワンランクアップするという、非常にハイリターンな結果が得られる可能性があるのです。
小峰 孝史
OWL Investments
マネージングディレクター・弁護士
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