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香港金融界と中国本土のIT企業…相性抜群な理由とは?

ニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界3大金融センターのひとつである香港。つねにアジアの金融ビジネスをリードしてきたこの地に、早ければ年内にも初のバーチャルバンク(仮想銀行)が誕生する見通しだ。バーチャルバンクの誕生によって香港の金融ビジネスはどう進化するのか? 利用者はどんなベネフィットを享受できるようになるのか? 現地より最新事情をレポートする。第5回目のテーマは、香港金融界と中国本土のIT企業が相性抜群な理由。

歴史と地理的な優位性 アジアのフィンテック・ハブへ

フィンテックを応用した革新的な金融サービスは、さまざまな国・地域で発展を遂げている。香港の中央銀行に当たる香港金融管理局(HKMA)は、それらを積極的に受け入れ、選別や融合、化学変化などを促すことによって香港をアジアのフィンテック・ハブにするという壮大な構想を掲げている。早ければ香港で今年末にも認可されると言われるバーチャルバンクは、その扉を開くことになるだろう。

 

世界中のテクノロジーが集まる場として、香港ほどふさわしい土地はない。1997年に中国に返還されるまで155年も英国の植民地であった香港は、国際貿易港として西洋と東洋の国々を結び付ける重要な役割を担ってきた。

 

その歴史および地理的な優位性を活かして、欧米やアジア、なかでも中国本土のテクノロジー企業を積極的に受け入れ、その技術やサービスを集積することによってフィンテックの発展を促そうとHKMAは考えているようだ。

 

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地の利についていえば、香港は「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深圳と隣接している点も非常に有利である。深圳には、いまや出荷台数でアップルを抜いて世界2位のスマートフォンメーカーとなったファーウェイや、スマホによるQRコード決済サービス「ウィーチャットペイ」を提供するテンセントなど、中国を代表するIT企業がある。

 

これらの企業が生み出し、すでに中国本土で数億人が利用している革新的なテクノロジーや金融サービスを積極的に受け入れれば、HKMAの構想は実現に向けて大きく前進するであろう。

 

すでに日本でもかなり報道されているが、中国本土におけるフィンテックの発展と普及には目を見張るものがある。テンセントが提供する「ウィーチャットペイ」の利用者は約8億人、アリババが提供するQRコード決済「アリペイ」の利用者は約5億人だ。いまや中国の消費者は現金よりもスマホ決済で買い物をすることが多く、財布を持たずスマホだけ持って街を歩く人が増えているという。

 

そもそも中国では、QRコード決済が普及するまでは現金決済が大半を占めていた。なぜなら、銀行口座を持っていない国民が多く、クレジットカードやデビットカードなどを利用できる層が非常に限られていたからだ。

 

ところがQRコード決済が普及した結果、銀行口座を持たなくてもキャッシュレスで買い物ができる環境が整った。

 

中国の人民元は最高額紙幣が100元(約1,600円)なので、現金で高額の買い物をすると札束がかさんで面倒である。しかも日本と違って、中国では偽札が日常的に出回っている。そのため、不便で信用性の低い現金で買い物するよりも、QRコード決済のほうが手軽で安全という認識が定着するまでに、さほどの時間はかからなかった。こうして「ウィーチャットペイ」や「アリペイ」はまたたく間に普及したのである。

深圳と緊密に連携、Win - Winの関係を目指す

一方、香港では早くから伝統的な金融サービスが普及したため、クレジットカード保有率は世界トップレベルにある。スーパーでの買い物などの少額決済にもカードが使えるので、中国本土のようにフィンテックを応用した革新的なキャッシュレス決済が導入されることはなかった。すでに世界トップレベルの金融インフラが整っているので、革新的なテクノロジーが入り込む余地は限られていたのである。

 

しかし、今後香港が国際金融センターとしての地位を保っていくためには、世界の潮流であるフィンテックを応用した金融サービスを積極的に採り入れ、変化を巻き起こしていかなければならない。そこでHKMAは、域内へのフィンテック投資の拡大を促すさまざまな措置を取り始めたのである。バーチャルバンクの認可は、その代表的な動きである。

 

HKMAが2018年5月30日に発表した「バーチャルバンクライセンスの認可に関するガイドライン」の改訂版は、金融機関だけでなく、IT企業が主体となってバーチャルバンクを開設することも認める内容になっている。これによってテンセントやアリババ、ファーウェイといった中国本土の巨大テクノロジー企業が香港の金融サービスに参入する機会も開けることになった。いずれ香港でもQRコード決済が急速に普及する可能性がある。

 

中国本土のIT企業にとって、香港で金融サービスを始めることは世界市場への布石にもなる。香港には中国本土のような金融取引やネットアクセスに対する規制が少なく、サービスを進化させやすい。しかも、香港は欧米をはじめとする世界との接点でもあるので、ここで生み出した技術や金融サービスはグローバルに展開できる。

 

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ビジネスのグローバル化によって成長したい中国本土のテクノロジー企業と、本土企業を呼び込んでフィンテックを発展させたい香港金融当局は、完全にWin - Winの関係にあるのだ。

 

すでにHKMAは深圳市政府金融発展服務弁公室との連携をスタートさせており、両地の協業関係は深まりつつある。中国本土との緊密な連携をテコに、香港のフィンテック・ハブとしての地位は今後ますます強固になるだろう。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

京都大学卒、MBA(神戸大学)。 シティバンク日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、2000年にシティバンク日本のリテール部門で商品開発や市場営業部門のヘッドに就任。2002年にシティグループ・プライベートバンクのマーケティング部門ヘッドに就任。 2004年末、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に移り、マーケティング責任者として活躍。2009年からはアジア・リテール戦略を担い、2010年は香港にてBTMUウエルスマネージメント事業の立ち上げに従事。 2013年よりNippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク/日本ウェルス)を創業し、COOに就任。2017年3月よりCIOを務める。

WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載バーチャルバンク(仮想銀行)が年内誕生へ… 「香港」最新フィンテック事情レポート

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

 

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