近年重視されるようになった「通勤利便性」
【え】沿線を 選べば空室 怖くない
マンション投資において物件の立地選びは、入居者確保のために一番重要といっても過言ではありません。後程詳しく紹介しますが、「買い物」や「コミュニケーション」をスマホで出来るようになった現在、都内のオフィスに通勤する社会人にとって「通勤利便性」は、部屋選びの際により重きが置かれるようになりました。
一方で、入居者の部屋選びは、図表1のようにネットで探すのが基本です。そのため、自分が所有する部屋が、部屋選びの際に閲覧されなければ、いつまで経っても入居者の獲得ができません。そのためにも、物件の立地選びには、こだわりが必要になってきます。
自身の物件が閲覧されるには、「最寄駅」と「最寄駅の沿線」が重要になってきます。入居者は、「会社の最寄駅」→「乗車時間」→「最寄駅から自宅までの距離」を逆算して、部屋を探すのです。そのため、「複数のオフィス街を結ぶ路線の物件」もしくは、「複数の路線が利用できる物件」を選べば、自分が所有している物件が閲覧される確率は上がります。なぜなら、20代の社会人は、それだけ「通勤時間」に重きを置いているからです。
皇居から「半径5キロ圏内」が狙い目
具体的に「複数のオフィス街を結ぶ路線」とは、東京の2大環状線「山手線」と「大江戸線」です。「大江戸線」は、「勝どき」「汐留(新橋)」「大門(浜松町)」「六本木」「新宿」など、日本でも有数のオフィス街を結んでいます。このように複数のオフィス街を結ぶ路線だと、「会社の最寄駅」という最初の判断基準をクリアしているため、検索に引っかかりやすくなります。そうすることで、自身の物件の閲覧数も増えていくのです。もちろん、「山手線」のニーズは説明の必要もないでしょう。「山手線」の東側をカバーする「京浜東北線」も検討できる路線の1つです。
そして、「複数の路線が利用できる物件」も、入居者に検索されやすいポイントになります。例えば、日本橋大伝馬町にあるワンルームマンション。この物件の最寄駅は、日比谷線の「小伝馬町」ですが、徒歩10分以内で利用できる路線は、「銀座線」「半蔵門線」「都営浅草線」「都営新宿線」「総武線快速」「山手線」「京浜東北線」「中央線」など、9路線が利用できます。もし、この物件を所有していれば、9路線ものユーザーから閲覧される可能性があるのです。
このように複数の路線が利用しやすい立地は、「千代田」「港」「中央」の都心3区と「渋谷」「新宿」「豊島」「文京」「台東」「荒川」「墨田」「江東」の各区で、皇居から半径5キロ圏内に入っていることが特徴になります。都心に通勤しやすい路線は、「山手線」「京浜東北線」に加え、東京メトロ各線と都営地下鉄「浅草線」「新宿線」「三田線」「大江戸線」です。鉄道インフラは、通勤や通学を基本に設計されているため、都心に通勤しやすい路線が開通し、都心周辺区の利便性が向上したのです。
一般的に世界的なメガシティは、中心から半径5キロ圏内に「産学官」の中枢を集積させる街づくりを行っていることが多く、官庁のほとんどは千代田区に、上場企業の本社は「千代田区:219社」「港区:217社」「中央区:181社」「新宿区:82社」「渋谷区:78社」といったように、これらのエリアに収まっているのです。
日本を代表する大学である東京大学は「文京区」にあり、日本の伝統ある大学の多くも「文京区」「千代田区」「新宿区」と、このエリアの中にあります。つまり、このエリアに通勤・通学しやすい物件を所有することで、入居者は確保しやすくなるでしょう。
入居需要が2倍・3倍にもなる「山手線沿線」の物件
一方で、同じ23区でも私鉄沿線になってしまうと、終点を代表とするターミナル駅の需要に左右されてしまうのです(図表3参照)。つまり、私鉄は乗り換えありきの路線で、通勤時間を短縮したい20代の社会人の入居需要を確保しきれません。例えば、「小田急線」の利用者は「新宿」に行くには便利ですが、「東京」や「新橋」に通勤する社会人のニーズは満たせないのです。
一方、「山手線」であれば、「東京」や「新橋」はもちろん、「新宿」に通勤する社会人のニーズも獲得できます。そのため、「山手線」の沿線に物件を所有できれば、入居需要が2倍・3倍になる立地で、マンション投資を行っているといっても過言ではありません。
一般的に23区の地価は西高東低の傾向にありますが、図表4のように23区の賃料は中心から放射状になっているのが分かります。社会人にとって「通勤利便性」は、大きな付加価値なのです。それほど沿線選びは、重要なポイントになります。
仲宗根 和徳
株式会社和不動産 代表取締役