前回は、住宅の土地を選ぶ際の注意点を説明しました。今回は、格安で購入できる「狭小地・変形地」特有のデメリットと対策のポイントを見ていきましょう。

トラックが入らず「別途料金」を請求される場合も

周辺相場よりも圧倒的に安価で、設計力次第で快適な間取りプランも実現できる狭小地・変形地。しかし、安いからには理由=デメリットがあります。今回からは、狭小地・変形地で家を建てるうえでのデメリットとその解決方法を解説します。

 

部材や設備を搬入するトラックが入らない

 

狭小地・変形地の多くは、入り組んだ街中にあります。そのなかには部材や設備を乗せたトラックが入っていけないところも少なくありません。

 

こういった立地では、住宅会社によっては「建築できません」と言い切ってしまうケースもあるようですが、多くの場合は「小運搬費」という名目で別途料金を請求されます。

 

これは職人さんが部材などを担いだりして運ぶ費用です。大体はトラックが入れるところから建築現場までの距離で費用が決まります。相場は1mあたり1万円といったところでしょう。

 

例えば、30mならば30万円です。それでも「高い!」と思う人もいるかもしれませんが、これはあくまで1回の往復に対しての費用です。梁を運んで、柱を運んで、システムキッチンを運んで、と何往復も繰り返したら、あっという間に数百万円単位になってしまいます。これではローコスト住宅とはいえなくなります。

 

この問題を解決するには、とにかく狭小地・変形地の建築に慣れた住宅会社を探すしかありません。慣れていない会社は、問題が起こっても対処できるように多めに予算を確保します。

 

一方で慣れていれば「この部材とこの部材は一緒に運べるな」「これは前に運んだことがあるから問題ない」と少なめに見積もってくれるのです。それどころか職人さんも慣れているので「これくらいならタダで運んであげるよ」となるケースも珍しくありません。その結果、慣れていない会社と比べて小運搬費が半額以下になることもあるのです。

 

「たかが運搬費」と思うかもしれませんが、これだけで何百万円も差が出ることもあります。決して無視はできません。

 

慣れていない、慣れている、の判断は見積書を見ればできるでしょう。他社と比べて明らかに安いところは慣れていると考えていいはずです。

 

間取りの一つひとつが小さくなる

 

私たちの業界用語で「図面映え」という言葉があります。これは図面上は住みやすそうに見えるが、実際に建ててみると使い勝手が悪い、という意味です。

 

狭小地・変形地の図面には、この「図面映え」のいい間取りプランが多々あります。下駄箱付きの玄関土間、収納の多いシステムキッチンなど図面映えのいい家には、必要なものがすべて設置されています。

 

ところが実際に建ててみると、玄関では土間が90㎝四方と狭く、かがんで靴が履けない。キッチンでは後ろのカップボードまでの距離が70㎝しかなく、人がすれ違えない、といった問題が生じます。これでは快適な生活は実現できません。

 

設計力とは、間取りに必要なものを詰め込むことではありません。必要なものと必要ではないものをしっかり見極めたうえで、必要なものを使いやすく配置することです。

 

提案された間取り図を確認する際は、必要なものが入っているかだけでなく、実際に生活している場面を想像してサイズ感もチェックしましょう。

収納スペース」が足りず、荷物を処分する羽目に!?

収納スペースが足りない

 

マンションに住む人に不満な点を聞くと、ほとんどが「収納スペースが足りない」と答えます。「だから一戸建てに引っ越したい」と言うのです。

 

ところが、ただでさえ生活空間が小さくなりがちな狭小住宅で、十分な収納スペースを確保するのは至難の業。多くの狭小住宅では収納スペースをあきらめ、マンションに住んでいた人でも荷物を処分してから引越し、というケースもあるようです。

 

しかし、あきらめてはいけません。やり方はあるものです。狭小住宅で満足できる収納スペースを確保する秘訣は、まず、どこに何を入れるかを把握することです。特に大きなものはすべて書き出して、どこにしまえば便利に使えるか設計士と一緒に考えます。

 

例えば、あるお客様からリビング内に子ども二人分のランドセルをしまう場所を確保してほしい、というリクエストをいただいたことがあります。そのお宅では、子どもはリビングで勉強させるようにする予定だというのです。

 

しかし、リビングは家のなかでもっとも家族が集うところ。いくら収納スペースをつくっても足りないくらいです。しかも、そのお客様はインテリアにも非常にこだわりがあり、できるだけスッキリ見せたい、というご希望もありました。

 

そこで考えたのがキッチンカウンター下のスペースです。通常、そこは奥行き十数㎝程度しかないので、収納スペースとしてはグラスやティーカップ用として活用することが一般的です。

 

しかし、そこにランドセルが入るだけの奥行きがある収納と、そのサイズに合った天板を設置しました。しかも、両方とも既製品で探してきたので、費用もリーズナブルに納めることができたのです。天板は鏡面仕上げでシステムキッチンとの相性も申し分ありません。通常ではあまりないキッチンカウンター下の奥行きのある収納ですが、まったく違和感のない空間に仕上げることができました。

 

このように工夫次第で、収納スペースはつくり出せるものです。考え方の例を挙げれば、横方向に空きスペースがなければ縦方向につくります。例えば、2階や3階の天井につくるロフトです。ロフトならば場合によっては6畳程度のスペースを生み出すことも可能です。荷物置き場としてはもちろん、書斎スペースとしても利用できます。

 

ほかには1階ならば階段下、2階以上ならば階段上の空きスペースも収納にはうってつけです。毎日使う掃除機などの大型家電も入るくらいの容量は確保できるので、有効に活用したいところです。

 

 

奧本 健二

フォーライフ株式会社 代表取締役社長

本連載は、2018年6月29日刊行の書籍『年収400万円で建てる 都心の注文住宅』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

年収400万円で建てる 都心の注文住宅

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奧本 健二

幻冬舎メディアコンサルティング

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