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M&Aによる事業拡大…買い先の「業種」を絞り込むメリット

M&Aで成功する秘訣をひとつあげるならば、対象先の「業種」を絞ることがある。闇雲によさそうな案件ならば手を出すのではなく、まずは手がけるビジネスの大枠を決めていくことが、M&Aの成功確率を上げるコツだ。本記事では、M&Aで買い先を選定する際に業種を絞り込むメリットについて取り上げる。

M&Aの成功確率を上げるコツは「業種」を絞ること

M&Aの成功要因についてよく質問を受けます。残念ながら、100%成功するような秘訣は存在しません。ただし、成功確率を上げるコツはあります。そのひとつが「業種」を絞ることです。

 

対象を絞ることで、情報感度が上がり、良質な情報量も増えてきます。その結果、目利きができるようになります。以下に、業種を絞るメリットをM&A実務の各ステップに沿って説明してみます。

その1 案件発掘

業界用語で「ソーシング」「ファインディング」と呼ばれる分野です。M&A仲介会社やアドバイザーに依頼することが多いでしょうが、そう簡単ではないかもしれません。いい案件ほど表には出てきにくいものだからです。また、業種が絞り込めていないと、本気度が伝わらず、紹介の優先順位を落とされてしまうこともあります。

 

ただし、案件情報を持っているのはM&A仲介業者だけではありません。実際にM&Aを継続的に行っている投資家は、複数の情報ルートを持っているものです。たとえば、経営仲間・役員の関係者、納品業者、士業、生保営業マン、金融機関、事業再生コンサル、趣味仲間など様々です。

 

このような方々から情報を得るためには、まず買手として認知してもらい、案件紹介を受ける際に備えて「投資基準」を設定しておくことが必要です。また、どの業界の表裏にも精通したプロが必ず存在します。そのような方々からの案件情報ほど、表には出にくい良質なものが多いと実感しています。

その2 初期判断スピード

業界に特化し案件情報を得たとします。そこで、前に進めていいのかどうか判断に迷うことがあるはずです。「投資基準」を決めていれば、早い段階で判断ができます。断るタイミングを逃すと相手は都合のいいように解釈するもので、トラブルの要因ともなりかねません。断るときほどスピードが重視されます。

 

業界に特化して検討していれば、過去に検討した案件などと「比較」することが可能で、判断スピードを上げることができます。初期判断を誤ると、自社のみならず、関係する方々も含め多大な時間とコストをかけてしまいます。業界毎に見るべきポイントが必ずあります。技術、サービス、人、立地、顧客など、数字を見なくてもある程度判断できる要素があるのです。

その3 デューデリジェンス

資産査定ともいいますが、M&Aにおける重要なポイントです。デューデリジェンスの代表的なものには、財務、法務、労務、システムなどがあります。

 

小規模のM&Aにおいてもっとも重要なものは「ビジネスデューデリ」と呼ばれるもので、対象会社の強み・弱み、サービスの特徴、顧客、シナジー効果などの分析を行います。対象先のサービスを自社ならどう展開するか、マーケティング視点で経営者としての感性も入れて判断することも重要です。

 

財務・法務などは、ある程度の外部委託ができますが、「ビジネスデューデリ」はそう簡単にはいきません。譲渡後に対象会社をどう生かすかを考えるのは、買手にしかできない仕事です。そのためにも、業界を絞り込みビジネス感度を高めておく必要があります。

その4 PMI業務

PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、日本語訳すると「経営統合業務」となります。筆者も本格的にM&Aの世界に入ったのはPMI業務からです。M&Aは買ってからが大事なので、PMIはとても重要な業務です。比較的大きな案件になると、譲渡後の係数管理から、社員モチベーションアップ、各ステイクホルダーとの調整まで多岐にわたります。


小規模M&Aで大事なことは、まずは移籍した社員のフォロー、重要取引先への挨拶、そして想定通りに利益を上げて回収期間を短くすることです。PMIも事前に業界特性などを調べ、デューデリジェンスの時点から譲渡後をイメージして進める必要があります。

その5 再売却

残念ながら、投資の目的を達成せずに、再売却を検討することがあるかもしれません。その際に業界ネットワークがあれば、自ら相手先を見つけることも可能です。

 

また、再売却しやすい業種・業態というものも存在します。会費モデル、消耗品、継続課金などのストック型モデルというものです。時代背景により求められるサービス、ニーズも違ってきますので、常にアンテナ感度をよくしておく必要があります。

 

M&Aの買い方がうまい方は、だいたい売るタイミングもうまいものです。売却というと後ろめたいイメージがあるかもしれませんが、新たな、よい嫁ぎ先を見つけるというような感覚で捉えるといいのかもしれません。

成長企業の経営戦略にM&Aが必須の時代に

業種を絞り込んだら、是非とも「隣接地帯」への拡大に挑戦してみてください。たとえば、印刷業からチラシ、広告、Webマーケット、メディア運営事業のようなイメージです。外から見ると連続性がないように見えても、実は隣接業界を連続的にM&Aしながら拡大している事例は増えてきています。

 

経営戦略にM&Aを取り入れるのは、成長企業として必要な手段となってきているのかもしれません。

 

 

 

齋藤 由紀夫

株式会社つながりバンク 代表取締役社長

株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

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