前回は、投資用不動産の購入の際に注意を払うべき「表面利回り」について取り上げました 。今回は、アパマン業者が口を閉ざす、不動産投資に付随する問題点を見ていきます。

中古になれば、新築時より家賃が下がるのは当然

不動産賃貸事業は、30年、40年という非常に長いスパンの中で行うビジネスであることにも注意を要します。

 

はじめは新築だったアパート、マンションも入居者が入った瞬間から“中古”になります。そのため、今いる入居者が出ていった後は、新築時よりも低い賃料しか得られなくなるのです。そして、中古物件の賃料は年数が経つにつれどんどん下がっていきます。

 

この築年数の経過がもたらすリスクについては、金融庁も全国信用組合中央協会あての文書の中で以下のような指摘を行っています。

 

(ア)築年数の経過とともに空室率は上昇する。

(イ)賃料水準は、築後15年程度を経過した後は低下しやすい。

(ウ)結果として、築後15年程度を経過すると、物件収支(キャッシュフロー)が赤字となる割合は増加する。

 

アパマン業者は、こうしたネガティブな事実に関してはあまり積極的に伝えようとしません。それどころか、中には意図的に買い手の判断を誤らせるような情報を提示する者さえいます。

 

具体的に述べると、中古物件を取り扱う業者の中には、物件から得られる想定賃料を示すときに、一番高い部屋のレントロール(不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもの)を基準にその金額を導き出す者がいます。

 

例えば、間取りや部屋の広さ等が同じ5部屋のアパートの場合で、A、B、Cを月5万円、残りのD、Eを月4万円で貸しているような場合には、「5万円で貸せますよ」とだけ伝えてくるわけです。

 

確かに当初は、すべての部屋を月5万円で貸すことができたかもしれません。しかし、このケースであれば、A、B、Cの部屋に関しては、借りている人が新築時からずっと住み続けていたから家賃が変わっていないのに対して、D、Eの部屋は入れ替わりがありそれに伴って家賃を下げたと推測することができます。つまり、物件の老朽化が進んだため、D、Eの部屋は家賃を下げなければ入居者を確保できなくなったわけです。

 

だとすれば、A、B、Cの部屋に関しても、今いる人が出ていった後には、おそらく家賃を下げざるをえなくなるはずです。

 

このような事情を知らずに「5万円で貸せる」と思い込んで購入してしまったら、その期待を大きく裏切られるような羽目に陥ることになるかもしれないのです。

元から持っている土地でのアパマン経営は危険

また、もう一つ、強く注意を促しておきたい点があります。それは、「元から持っている土地にアパート、マンションを建てることはこのうえもなく危険な選択になる可能性がある」ということです。これは、とりわけ多くの土地を持っている地主の人が賃貸経営を行う場合に陥りがちな大きな落とし穴といえるでしょう。

 

「なぜだ、もともと持っている土地の上にアパート、マンションを建てるのなら、土地代がかからなくていいじゃないか」と思う人もいるでしょう。

 

しかし、先に述べたように、確実に入居者を確保できる立地は、今や非常に限られています。例えば、持っている土地が、駅から20分も歩くような場所だったり、バスでなければたどり着けないような場所にあるのであれば、アパート、マンションを建てても人が入ることはまず期待できないでしょう。

 

アパマン業者の中には、そのような場所でも平気でアパート・マンション建築を勧めてくる者が少なくありません。しかし、安易な決断は絶対に禁物です。建てても空き室だらけで、十分なキャッシュフローを確保できず、ローンの返済が難しくなる――そんな最悪の未来を避けたいのであれば、絶対に業者の勧めに応じてはいけません。

 

ここまで述べてきたように、相続税対策を目的として賃貸経営を行うことには数々の問題やリスクがあります。そして、それらを見逃したまま、アパート、マンションを購入・建築しトラブルに巻き込まれている人も少なくありません。

 

例えば、「弁護士ドットコム」や「Yahoo!知恵袋」といったインターネット上の相談サイトなどには、業者との間に発生した不動産投資を巡るトラブルに関してアドバイスを求める人達の声が数多く寄せられています。

 

「相続税を減らしたい」という思いだけで、十分な考えもなく安易に収益物件を購入してしまうと、そうした“被害者”たちとまったく同じ轍を踏むことになりかねないのです。

 

 

 

福本 啓貴

株式会社イーミライ・ホールディングス 代表取締役

イーミライ・ホールディングス統括執行役員

最高経営責任者

 

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