公的な規制がほとんど存在しない「サブリース契約」の問題点

前回は、サブリースを巡る深刻なトラブルを取り上げました。今回は、公的な規制がほとんど存在しない「サブリース契約」の問題点を見ていきます。

サブリース契約の「3つの問題点」

サブリース契約に関して一般的に指摘されている問題点をまとめておきましょう。

 

①賃料の減額を請求される

家賃保証がうたわれ保証期間が30年となっていても「10年経過後は2年ごとに改定」などというように定期的に賃料を見直す決まりとなっていることがあります。そのような場合には、入居状況の悪化や近隣の家賃相場の下落により賃料の減額を求められる可能性があります。

 

また、借地借家法32条では、一定の要件が満たされた場合に借主が賃料の減額を請求できることが認められています。この賃料減額請求権はサブリース契約にも適用されるというのが最高裁の判例です。サブリース業者が、こうした借地借家法32条の賃料減額請求権や判例を根拠に賃料の減額を求めてくることもあります。

 

②契約期間中でも解約されることがある

「30年一括借り上げ」とうたわれていても、サブリース業者から契約期間中に解約されることがあります。ことに賃料の減額が求められて、それを拒んだような場合に解約されるケースが目立ちます。

 

③修繕費用等の請求

賃貸住宅の老朽化等による建物や設備の修繕費用等については、通常、オーナー側が負担する契約になっています。その額がオーナーの想定していた以上に膨らみ、トラブルの原因となることがあります。

 

①賃料の減額請求と②解約に関しては、契約書の中でその可能性について触れられていることが多いはずです。ただ、「賃料が減額されたり、途中で解約されたりするのなら契約したくない」となるのを避けるため、業者の側がそれらの点に関してオーナーに対して十分な説明を行っていないケースが少なくありません。

現状、公的な規制の仕組みは存在しないが・・・

ここまで見てきたようにサブリースは様々な問題を抱えており、それが原因となったトラブルによって多くの被害者も生まれています。

 

しかし、現状ではサブリースを正面から規制する公的な仕組みは存在しません。そのため、「悪質なサブリース業者から被害を受けることを避けたい」という場合にできることは非常に限られています。

 

まず、第一は「賃貸住宅管理業者登録制度」の活用です。同制度は、2011年に賃貸住宅管理業務の適正化を図ることを目的に導入されました。賃貸住宅の管理の他にサブリース事業も対象となっており、登録業者に対しては次のような義務が課されています。

 

●貸主に対する重要事項説明と書面交付

●借主に対する重要事項説明と書面交付

●賃貸借契約の更新・終了時における書面交付や敷金精算額の書面交付等

●財産の分別管理、帳簿作成と保存

●断定的判断の提供や重要事項の不告知、不正行為の禁止

●誇大広告の禁止

 

さらに、平成28年の改正により、賃貸住宅管理業者が建物所有者に対し、契約締結前に、将来の借り上げ家賃の変動に関する条件を書面で交付し、一定の実務経験者等が重要事項として説明することが義務づけられています。この実務経験者の設置に関しては、平成30年7月以降、登録制度の登録を受けているすべての賃貸住宅管理業者に対して義務化されています。

 

これらの義務に反したサブリース業者に対しては、国土交通大臣の指導や、登録抹消などのペナルティが課される場合があります。

 

賃貸住宅管理業者登録制度はあくまで任意の登録制度に過ぎませんが、「登録をしているかどうか」を確認することによって、サブリース業者の信頼性をある程度判断することは可能でしょう。

 

また、民法、特定商取引法、消費者契約法では一定の要件を満たした場合に、契約を取り消す権利(取消権)が認められています。業者からのしつこい勧誘などを受けてアパート、マンションを建てる契約をつい結んでしまったものの、後からとりやめたいと思ったときには、それらの取消権を行使することで契約を取り消せる場合があります。

 

それぞれの法律において取消権が認められる場合としては、以下のようなケースが考えられます。

 

●民法

業者の勧誘行為が詐欺や脅迫と認められた場合。

 

●特定商取引法

訪問販売などにより契約をした場合には、特定商取引法のクーリング・オフを行使することが可能なケースもあると考えられています。なお、宅地建物取引業者による宅地・建物の売買は宅地建物取引業に当たるので宅建業法の対象となり、特定商取引法は適用されません。

 

●消費者契約法

「オーナーが同種の行為を反復継続的に行っていない場合には、サブリース契約は消費者契約法第2条第3項に規定する消費者契約に該当する場合があり、その際には同法の適用を受けることとなる可能性があります」と、消費者庁は同庁のホームページで述べています。

購入者側も、契約に潜む「リスク・問題点」の認識を

このようにサブリースに対する規制は現状ではほとんど存在しません。そのことが、サブリーストラブルが、現在、相次いで発生している大きな原因の一つにもなっています。

 

そのため、サブリースビジネスに対する規制の強化を求める声もあがっています。

 

例えば、日本弁護士連合会(日弁連)は、2018年2月に「サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書」を国土交通大臣および内閣府特命担当大臣(金融)に提出しました。

 

この意見書では、具体的に以下のような提案がなされています。

 

<①サブリース業者と同一ないし関連会社である建設業者がサブリースを前提とした賃貸住宅の建設を勧誘する場合、建設業者は、建設工事請負契約締結前に、注文主となろうとする者に対し以下の説明を行うことを法令で義務づける。

 

(1)借上げ家賃の変動リスク及び借上げ期間の限定ないし中途解約のリスク等に照らして、将来の家賃収入が保証されているものではないこと

(2)金融機関からの融資完済までの賃貸住宅の維持修繕内容、これにかかる費用、及び請負代金額を含めた投下資本回収のために必要な月額賃料額

(3)相続税対策として検討する際には、相続税の軽減とともに事業収支の成否を併せて検討する必要があること

 

②賃貸住宅管理業者登録制度を義務的登録制度とする法整備(または少なくともサブリース業者について義務的登録制度とする法整備)を行うとともに、サブリース業者である登録業者に対しては、上記①と同様の説明義務を課すべきである。

 

③金融庁は、銀行法施行規則において、金融機関が、賃貸住宅のローンの融資に際し将来的な賃貸物件の需要見込み、金利上昇や空室・賃料低下リスク等を説明すべきことを明記すべきである。>

 

サブリーストラブルが今後も続くようであれば、国はこうした提案も踏まえつつ、サブリース業者や金融機関等に対して何らかの規制強化を行わざるをえなくなるはずです。

 

一方で、物件を購入する側も、サブリース契約に潜む前述のようなリスクや問題をしっかりと認識することが大切です。

 

そもそも、賃貸市場が不透明な状況の中で、30年はおろか数年先でも業者が賃料を約束通りに支払えるだけの十分な収益を確保できるかどうかという点に関しては、慎重な判断が求められるはずです。ことに、立地がよいとはいえない場所であるにもかかわらず、「ここに、アパートを建てましょう。家賃は30年間、当社で保証します」などと言われたら、まず疑ってかかるのが賢明でしょう。

 

 

福本 啓貴

株式会社イーミライ・ホールディングス 代表取締役
イーミライ・ホールディングス統括執行役員
最高経営責任者

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    株式会社イーミライ・ホールディングス 代表取締役
    イーミライ・ホールディングス統括執行役員
    最高経営責任者

    平成6年、不動産業界に飛び込む。競売物件や権利関係が複雑な物件などの売買を通じ、着々と不動産コンサルタントとしての腕を磨く。平成15年独立。イーミライ・グループ各社を設立し、代表取締役に就任する。現在はイーミライ・グループ統括執行役員、最高経営責任者となり、数多くの相続対策を複数の専門家と連携をしサポートを行なっている。

    著者紹介

    連載地主を破滅に導く「危険」な相続税対策・・・アパ・マン建設の落とし穴

    地主を破滅に導く 危険な相続税対策

    地主を破滅に導く 危険な相続税対策

    福本 啓貴

    幻冬舎メディアコンサルティング

    入居率、利回り、節税効果、不動産会社のセールス全てが嘘っぱち。地主の資産を狙う「相続税対策ビジネス」の実態と確実に資産を残す方法を徹底解説。

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