中国経済をいわゆる新常態へ移行させるためには、経済構造の改革が必須であり、中でも国有企業の改革が重要な柱となっている。本連載では、習近平政権下において国有企業改革がどう進むのか、詳しく検証していく。

明らかになってきた習政権の国有企業改革

中国経済がいわゆる新常態への移行を成功させるためには、経済構造の改革が必須と指摘されているが、その改革のもっとも重要な柱のひとつである国有企業改革について、2015年9月、国務院と中共中央委が懸案であった「国有企業改革深化に関する指導意見」(以下、指導意見)を発表した。その内容は10月、共産党中央委員会第5回全体会議(5中全会)での「第13次5ヶ年計画建議」の中でも確認された。

 

それでは、これらの動きは、国有企業改革の歴史の中でどう位置付けられるのか、また、それは改革の前進を意味するのか、あるいは後退を意味するのか?

国有企業の生産額、利潤、就業者シェアは年々低下

主として2つの問題がある。第1に、国有企業(国企)の国民経済に対する寄与は、2000年以降、傾向的に顕著に低下している。生産額シェアは2000年47.3%から2012年25.3%へ低下、また利潤、就業者シェアも2000年から13年にかけ、各々、54.8%から24.2%、35%から16.6%へと大きく低下している。

 

昨年1-9月は、上場国有企業(子会社を含む)の21%が赤字、ワースト10企業だけで135億元の赤字を記録、赤字企業の30%は鉄鋼、非鉄製錬、20%が石炭、その他は船舶など、いわゆる過剰設備産業だ(2015年12月3日付北京青年報)。

 

他方で、国企の効率性は私企業に比べ低い。国企は企業として利潤を追求するだけでなく、より大きな社会的責任を負っていることから、その効率性を考えるにあたっては、経済効率だけでなく、いわば社会的効率を考える必要があり、単純に私企業と比較できないとする原則論はある(国務院新聞弁公室、2013年12月18日付経済日報等)。

 

その通りではあるが、国家統計局のマクロ統計で効率性を検証してみると、たとえば利潤総額の対総資産比(総資産貢献率)、対生産コスト比(コスト利潤率)は、2013年全産業ベースで、国企が各々11.93%、6.46%に対し、私企業は19.86%、6.87%、2010年以降一貫して、いずれの指標でも国企の効率性は私企業を下回る。おそらく国企の場合、その特権的地位から原材料の調達等生産コストの一部が低く抑えられているため、費用との関係で見た効率指標は私企業とあまり差がないが、資産規模との関係では、私企業に比べ、その効率性は著しく低い。

 

また、国企が企業数では10%前後だが資産ベースで5割以上を占める石油加工・核燃料加工、鉄道等交通運輸設備製造、鉄製錬・圧延加工の各セクターについて見ても、石油加工の総資産貢献率を除いて、国企の方が総じて私企業に比べて非効率的だ。これらは、国企は効率性が低く、資源をより多く消費しているにもかかわらず、その国民経済への寄与は年々低下していることを意味している。

 

(出所)中国国家統計局より筆者作成 
(注)国企は、国有独資、国有控股企業(国が50%以上を出資する国有絶対控股企業、国の出資は50%未満だが出資比率は最大である相対控股、および最大の出資者とはなっていないが、実際上国が支配している協議控制)の合計。
就業者シェアについては、国企は国家統計局就業統計の「国有単位都市部就業人数」、私企業は「私営企業都市部就業者数」と「個人企業都市部就業者数」の合計を、各々、「都市部就業者数」で割った比率。
(出所)中国国家統計局より筆者作成
 
(注)国企は、国有独資、国有控股企業(国が50%以上を出資する国有絶対控股企業、国の出資は50%未満だが出資比率は最大である相対控股、および最大の出資者とはなっていないが、実際上国が支配している協議控制)の合計。
 
就業者シェアについては、国企は国家統計局就業統計の「国有単位都市部就業人数」、私企業は「私営企業都市部就業者数」と「個人企業都市部就業者数」の合計を、各々、「都市部就業者数」で割った比率。

 

(出所)中国国家統計局より筆者作成
(出所)中国国家統計局より筆者作成

 

(出所)国家統計局統計より筆者作成
(注)総資産貢献率=(利潤総額+税総額+利子支出)/平均資産総額
   コスト費用利潤率=利潤総額/生産総コスト
(出所)国家統計局統計より筆者作成
 
(注)総資産貢献率=(利潤総額+税総額+利子支出)/平均資産総額
   コスト費用利潤率=利潤総額/生産総コスト

 

次回は、国有企業の抱える2つ目の問題点について見ていきたい。

 

 

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