中国経済をいわゆる新常態へ移行させるためには、経済構造の改革が必須であり、中でも国有企業の改革が重要な柱となっている。今回は、「国企改革深化に関する指導意見」から中国当局の狙いを検証する。

市場のニーズにしたがって国有企業を商業化

「国企改革深化に関する指導意見」の担当部局である国資委は、指導意見の意義を次のように説明している(2015年9月14日付新華網)。


①国企は全国民の所有に帰属するもので、改革の深化は国有資産をよりよく保全、使用、発展させ、国企を強く、優良で大きなものにする(做強做優做大)ことに資するものでなければならない。
②国企を真に独立した市場主体とし、そのために一連の市場規律改革措置を導入、企業活力を向上させる。
③国有資産保全のため、国企の情報公開、政策決定や監督責任を問う制度(問責)を強化し、国企の腐敗防止を図る。
④党の国企に対する指導を強化・改善、国企内での党組織の役割を企業のガバナンス規定に明記し、その政治的役割が発揮される経路や方式を変革する。

 

最も重要とみられる②について、指導意見は、政治と企業活動や資本との分離、所有権と経営権の分離の原則を堅持し、企業が法人としての財産権や経営自主権を行使すること、市場経済に則って経営体制や株主制度を改革、各種の資本を導入すること、商業性のある国企は、市場のニーズにしたがってその商業化を進めることなどが強調されている。「市場」という文言を、文書の中で何度も登場させる形でハイライトしている。

 

総じて、制度面で所有制改革、ガバナンス改革を進め、国有資産の効率的な配分と管理強化を通じて、革新的で国際競争力のある国有企業を育成すること、一定の成果を2020年までに上げることが目指されている。

国有資本投資会社、運営会社を設立し、権利行使を授権

注目すべき特徴として、以下の3点が挙げられる。

 

第1に、これまで国資委が直接国企に対して出資者としての権利を行使していた体制を改め、国有資本投資会社、運営会社を設立し、そこに権利行使を授権する形としたことである。

 

政府と市場の間に一種の隔離体を設け、国有資本投資会社、運営会社を通じて出資者としての職能を果たすこと、さらに両会社は「経営管理」から「資本管理」に重点を移すことによって、政府の市場への過度の介入を防ぐことをねらいとしている(一部には、シンガポールのテマセク方式が念頭にあると言われている)。

 

第2の特徴は、混合所有制の体系の中で、国企を、以前のように規模の大小によって分けるのではなく、商業性国企と公益性国企という機能で分類、商業性をさらに競争的領域と国家の安全保障や国民経済の命運を握る領域に分け、各々について、異なる改革の方向や資本構造等を提示したことである。

 

●国有企業の類型化

(出所)9月8日付華尔街見聞
(出所)2015年9月8日付華尔街見聞

 

第3に、国企における党の法的役割を明文化し、党の国企に対する指導管理を強化することが強調されている。特に、企業幹部に対する日常的な指導管理とパフォーマンス評価、幹部の腐敗汚職防止を図ることが明記されている。

 

混合所有制の推進は、民間資本や外資の一層の導入を意味する一方、上記で述べた第2の類型化で示されているように、戦略的な部門での国有が維持されると同時に、競争的領域でも必ずしも国有資本が排除されるわけではないとされている。

 

この点について、政府のシンクタンクである社会科学院も、「混合所有制の推進は、権力、資金、資源を幅広く分散させ、それを通じて国有資産の価値を高め、経済の基本的なシステムを強固にするもので、公有所有制という基本を揺るがすものでは全くない」としている。

 

 

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