中国経済をいわゆる新常態へ移行させるためには、経済構造の改革が必須であり、中でも国有企業の改革が重要な柱となっている。最終回となる今回は、国企改革の成否のカギを握る要素について見ていきたい。

中国らしい漸進的プロセスを踏む国企改革だが・・・

中国では、様々な改革は漸進的に行われ、あり得る混乱を回避しつつ、それなりの成果を挙げてきた。国企改革も、経済の実体や成熟度を勘案しながらの漸進的プロセスの中にある。

 

指導意見で大胆な民営化方針が示されず、むしろ党や政府の支配強化が打ち出されていることをもって、単純に国企改革が後退したと判断するのは早計だろう。実際、混合所有制の推進によって、国企の合併・再編、その過程で民間資本や外資の一層の参入も見込まれる。

 

しかし、指導意見でうたわれている、国の役割を「経営管理」から「資本管理」に移していくこと、市場規律に基づいた企業ガバナンスを確立していくこと、さらには幹部の腐敗汚職防止といったことについて、国企としての形態を保ったままで、かつ国企に対する党の指導強化を図る中で、どれだけ成果を挙げることができるのか、不確実性が高い。

国企が抱える問題解決を党や政府に委ねた「指導意見」

例えば、もともと2003年に国資委が設立されたのは、「九龍治水」、多くの部署に分散して整合性がなかった党や政府の国企に対する管理監督を一元化することを狙ったものだが、逆にそれが国資委の国企に対する過剰な管理・介入を生んだ。その反省から、国有資本会社、運営会社の設立という方針になったが、これが第2の国資委になるおそれも充分ある。実際「另起炉灶」、別の方策を考えるのではなく、2003年に国資委を設立した時の原点に戻ることが重要との指摘が早くも出ている(国務院発展研究中心、2015年9月14日付国研視点)。

 

腐敗汚職防止にしても、まさに多くの国企幹部が党や政府から送り込まれていること、国企の党や政府によって保証された独占的な地位、両者の癒着関係が腐敗汚職の温床になっているという現実がある。

 

指導意見は「市場」を盛んに強調しているが、実際には、国企が抱える低い効率性、腐敗汚職の蔓延といった問題の解決を、「市場」という「見えざる手」ではなく、党や政府の清廉さ、政策立案・実行能力という「見える手」に委ねたことになった。その意味で、国企改革の成否は、これまで以上に、党や政府に依存する形となったと言うべきだろう。

 

 

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