今週(7/28〜8/3)の国際マーケットレポートをお届けする。米の関税強化措置に対する、中国の「次の一手」などが注目だ。

今週(7/28〜8/3)の国際マーケットレポート

 

・トランプ大統領が利上げに不快感を示すなか、9月の実施を示唆したFRB。堅調な米国経済に市場の反応は?

 

・欧州との実務協議開始に合意した米政権が、中国への関税をさらに強化。対抗措置のない中国の次の一手に注目

 

・日銀の新方針で日本国債の利回り上昇。債券買い入れで金利上昇圧力を抑える日銀だが、市場の反応は?

米国経済は引き続き堅調、市場は一歩引く構え

今週までの経済指標から、現状の米国経済状態を評価すると、やはり堅調と言わざるをえない。第二四半期の米国GDP成長率は、年率4.1%と高い伸び。市場が注目する3日の米雇用統計発表も、7月の非農業部門雇用者数の市場予想は19万人増(6月は21万3,000人増)と安定している。

 

米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)も、1日の公開市場委員会(FOMC)で景気判断を上方修正するなど、足元で異変の兆候は見られない。ちなみに、FRBは9月のFOMCでの利上げ実施を示唆した。トランプ大統領が利上げに不快感を示し、FRBの独立性に市場の注目が集まるが、実施されれば、今年3回目の利上げとなる。

 

一方で市場は、堅調な経済状態への追従には慎重だ。不安視されているのは、米中貿易摩擦を巡る懸念が深まりつつあること、そして、FRBの果敢な利上げ継続による金利上昇が米国経済の腰を折ってしまうことである。来週の金融市場は、これらの懸念を引き続き抱えながらの、神経質な動きを継続することだろう。

米国への対抗措置がなくなった中国は…

貿易摩擦に関して、欧州との間では7月25日に、実務協議の開始に合意して、市場に安堵をもたらしたトランプ米政権だったが、逆に中国に対しては非常に強い姿勢を維持している。

 

 

2日には、2,000億ドル相当の中国製品に課す関税について、税率を当初発表の10%から25%に引き上げることを提案していると発表した。関税を引き上げる理由として、人民元が対米ドルで元安に推移しているため、10%の関税では、措置としての効力が小さいことを挙げている。

 

2,000億ドルとは、米国の中国からの輸入額の4割に及ぶ巨額である。中国の米国からの輸入額は総額でも1,300億ドルしかない。同様の対抗措置を淡々とカウンターで出してきた中国だが、今回のトランプ政権の一手には、同じカードを持ち得ない。

 

中国の反応として、王毅外相は「関税導入という手段だけでは、米政府の主張する米中間の貿易不均衡の解決は実現しない」として、「米国は冷静になって国際社会の声に耳を傾けるべき」とのコメントに止まっている。中国はどんな次の一手を繰り出すかは注目である。

日本国債の利回りが上昇…円金利にまで波及するか?

金利上昇に関連しては、31日に日銀が発表したイールドカーブコントロールに関しての新たな方針が、市場にどう消化されていくかも、注目される。長期債(日本国債)の振れ幅の容認は、結果として、日本国債の利回り上昇という形で、市場の反応を見た。

 

加えて、世界的な需給環境の変化は、米国債利回りにも10年債で3.0%超への利回り上昇をもたらした。金利上昇が、景気の先行きへの懸念を深めることはあっても払拭させることはない。

 

日銀は3日も債券の買い入れオペを実施して、金利上昇圧力を抑える意図を示したが、一度梯子を外される懸念を持った市場を宥(なだ)めることは容易ではない。仮に円金利が上昇するということになれば、為替も反応する可能性がある。金利の落ち着きどころにも注目をしておきたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

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本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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