国民の住生活の安定・向上に必要な措置を政府が設定
日本の住生活の基本指針となる「住生活基本計画」とは、2006年に制定された「住生活基本法」に基づいて国民の住生活の安定や向上に必要な措置を講じるために設定されたものです。基本的な住宅施策にも関わるため、ここまでの説明のなかでも何度か触れましたが、「これからの住宅ニーズ」を左右するものですので知っておくとよいでしょう。
計画は現状に鑑みておおむね5年ごとに見直しを行うものとされ、2016年に現時点での、これからの8つの目標が具体的な指数とともに掲げられました。その内容は「居住者からの視点」「住宅ストックからの視点」「産業・地域からの視点」と大きく3つに分けられています。
「居住者からの視点」としては、これからの少子高齢化、人口減少社会の到来に際して、
①結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現
②高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
③住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保
などを目標に挙げています。
核家族化が進んで久しいですが、三世代同居や近居を促進し、子育て支援施設などのサポートを充実させることで「子どもを産み、育てたい」という環境を整え、希望出生率1.8の実現を目指すとしています。
高齢者が住む住宅にはバリアフリー化やヒートショック対策のほか、身体・認知機能の状態を考慮した「新たな高齢者向け住宅のガイドライン」も策定しています。
政府は「既存の住宅の活用が必要」との見解を示す
次に「住宅ストックからの視点」としては、「空き家」に関する指標を初めて設定したことで注目を集めましたが、目標事項としては
④住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
⑤建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
⑥急増する空き家の活用・除却の推進
などです。
空き家の目標値を設定することで、新たな施策を講じない場合と比べて約100万戸を抑制する目算です。それには既存の住宅の活用が必要になるため、質の向上と併せて、「住みたい・買いたい」と思えるような魅力を高めることや、既存住宅の流通を活性化することで資産として次世代に受け継がれていく流れを作り出すことが必要だとしています。
同時に老朽化、空き家化が進むマンションの建て替え、改修促進の重要さを挙げ、建て替え件数を増やすことも指標の一つです。
そして「産業・地域からの視点」では、「産業」に関する目標を初めて設定しましたが、住宅ストックビジネスを活性化し、既存住宅流通・リフォームの市場希望を倍増させ、20兆円市場にすることを目指し、⑦強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長、⑧住宅地の魅力の維持・向上などを目標に掲げています。
また近年増加している「IoT住宅」などの最新技術を取り入れて住生活関連ビジネスを創出することもポイントです。
そのほかにも災害への対策はもちろん、住宅は利用者にとって経済的な負担も大きくなるだけに、金融・税制の優遇を含め、多方面から安心な暮らしを支える計画を打ち出しています。
[図表]住生活基本計画 成果指標一