業績が絶好調でも不安は尽きない…孤独を抱える経営者
前回の連載では、経営者が会社の数字を知ることがいかに重要であるかをお伝えしてきました。
その一つの手段として、私が開発したITツール、Seamagがあります。私がどんな思いでこのツールを開発したのか、ここで詳しくお話をさせていただきたいと思います。
経営者とは孤独なものです。会社を守り、従業員を守り、事業を拡大していくためには、その孤独に勝たなければなりません。
私自身、経営者として、とてつもない不安に襲われることがあります。忙しく働いている昼間はそれほどでもないのですが、夜一人になると次々と不安が湧き起こってきて、感情を抑えきれなくなることがあるのです。
そんなときには、よく自分に問い掛けます。
「本当に俺はやれるのか?」
そして、自分に言い聞かせるのです。
「俺はやれる。必ずやれる」
それしかないのです。どんなに会社が大きくなっても、この不安は消えることはないでしょう。会社の業績が絶好調でも、不安がなくなるわけではありません。
人生を変えた、3つの「気づき」
自分はなにをしたくて、毎日、不安と闘っているのだろう──。そう考えることも少なくありません。
そしていつも考えた末にたどり着くのは、世界に気づきを与える〝なにか〟を生み出したい、ということです。その夢を実現するために「苦しくても闘っているのだ」と思うのです。
それは私自身の気づきでもあります。思い返せば、これまでに自分自身の人生を変える気づきは、3回ありました。
1つ目は、「目線」です。
自分が見ているものとほかの人が見ているものは同じではありません。景色は同じでも人が違えば見え方は変わる。以前の私は、自分が見ている世界がすべてで、自分の世界が正しいと思い込んでいました。
しかし、そうではありませんでした。見る人によって、見えるものは違う。相手の立場で考えれば、自ずと分かってくることです。それができるようになるまでに、時間がかかりました。
2つ目は、「本来無一物」という言葉です。
これは禅語だそうです。禅宗独特の言葉で、禅語はその意味を理解することで、日常のふるまいから生き方に至るまで、さまざまな気づきが得られるといわれています。
「本来無一物」は、「人間は生まれたときからなに一つ自分の物でなく、自分が持っている物は与えられたものである」ことを意味する言葉です。
この言葉と出会ったとき、私は難しいことは抜きにして、こう理解しました。
「失うことを恐れるな」
自分の持っている物が失われると思うと、人はそれを守ろうと必死になる。必死になるあまり、不正をしたり、人をだましたりします。そこまではいかない場合でも、失う恐怖心から、一歩も先に進むことができなくなります。
例えば、売り上げが下がっているのに、新しいことにチャレンジすることができなくなってしまいます。しかし、自分の手元にあるものは、本来はないものだと思えば、チャレンジできるはずです。
これは簡単ではありません。特に経営者であれば、とても勇気が必要です。
3つ目は、「天上天下唯我独尊」という言葉です。
これは、お釈迦様の言葉だそうです。本来は、「この世の中で一番尊いのは自分である。なぜなら自分という存在は、この世の中に一人しかいないからである」という意味です。私はこう理解しました。
「人と比べる必要はない、自分の人生は自分のペースで生きればよい」
これら3つの気づきに出会ったとき、人生のなにかが変わった気がしました。それは、人生観といってもいいかもしれません。
世界中の人々にそんな感動や喜びに触れるきっかけをつくりたい、そのためのサービスを提供したい──。私自身の経験を通して、次第にそう考えるようになりました。