データを見れば、倒産件数の減少が続いているが・・・
経営者として生涯関わりたくないのは、自社の倒産でしょう。それまで育ててきた、事業が失われることも残念ですが、倒産ともなれば一緒に頑張ってきてくれた従業員や取引先に多大な迷惑を掛けることになります。
しかし、実際には、小規模会社の倒産は増えています。東京商工リサーチのデータによると、2016年の全国倒産件数は前年比4.15%減少の8446件でした。
過去のデータを見ても、倒産件数は減少が続いています。リーマンショックが発生した2008年前後は増えていますが、それを除くと、2003年以降倒産件数は減っているのです。
しかし、会社の規模別に見ると、様子は変わってきます。2016年は上場企業の倒産はなく、資本金1億円以上の会社の倒産も71件となり、1991年以来の70件台にとどまっています。
一方で従業員5人未満の会社の倒産が全体の72.9%を占め、過去20年間で最高を記録しています。規模の大きな会社では倒産は減っていますが、代わりに規模の小さな会社の倒産が目立っているのです。
収益構造とCFの把握なくして、経営の成功はありえない
倒産の直接的な理由はさまざまでしょうが、その多くは、経営者が会社の数字を常に把握していれば防げたはずです。
確かに会社の数字をチェックするのは面倒です。しかし、それを怠れば倒産とは無縁ではいられなくなるのです。倒産するほどではなくても、会社を安定的に成長させるのは難しいでしょう。
「経営者に会計思考のない会社に将来はない」といっても過言ではありません。会計思考とは、会社の「収益構造」と「キャッシュフロー」を知り、利益と資金をどう増やすか考えることです。
収益構造の把握とは、自社の儲けはどのように生み出されているのか、その構造を把握しておくことにほかなりません。会社の利益は、取引先ごと、商品ごとに変わってきます。取引先の数や商品の数が多いほど、管理がしにくくなります。
しかし、複雑だからと管理するのを諦めると、収益はどんどん悪化していきます。業績の悪い会社の収益構造を分析していくと、ある部分で赤字を垂れ流していることが多くあります。
例えば、ある商品は営業利益がマイナスになっているにもかかわらず、誰もそのことに気づかず、赤字が続いているということも起こり得ます。これは商品ごとの収益構造を把握していないがために起こることです。
キャッシュフローとは、資金繰りです。どんなに業績が良くても手元に資金がなければ、人件費や仕入れ代金の支払いができません。場合によっては黒字倒産することもあり得ます。
経営者は、収益構造とキャッシュフローを常に把握しておかなければ、会社を成長に導くことはできないのです。
「1分間経営」の実行で機動力ある経営を
とはいえ、プレイングプレジデントである中小企業の経営者には、時間がありません。そこで1分間経営が必要になってくるのです。スマートフォンで会社の数字をチェックできれば、本業に費やす時間を奪うことはありません。
電車で移動中にささっとチェックして、改善が必要な部分が見つかればすぐに指示を出す。これを繰り返していくことで1年、2年経過する間には、業績が見違えるように変わっているはずです。
キャッシュフローの確認に関連して、融資枠にどれくらいの余裕があるのかを把握しておくと、機動力のある経営ができます。
新たな戦略を練るときには、多くの場合、資金的な裏付けが必要になります。その場合、銀行融資などで資金調達をすることになりますが、融資が受けられなければ計画は頓挫してしまいます。そこで自社の融資枠を把握しておけば、誤算が生じにくくなります。
融資枠を把握するというのは、言い換えれば自社の担保力を理解しておくということです。銀行が融資する際には、融資先の担保力を重視するからです。
銀行が担保として認めているのは、不動産、有価証券、保証協会の保証、預金です。預金が担保になるとは、聞いたことがないかもしれませんが、定期預金を担保に融資することがあるのです。