相続税に関心のある人が増えている。平成27年の税制改正で非課税限度額が引き下げられ、相続税の対象となる母数が大幅に増加したのが要因だ。税務調査の不安を抱く人も当然、増えていると思われるが、果たしてどんな人が税務調査の対象になりやすいのか? 相続税やその税務調査の実態に詳しい、税理士の服部誠氏に解説していただいた。

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相続税の課税対象者の割合は2014年→2016年で倍増

金額の大小に違いはあれ、誰にでも相続は訪れます。

 

数年前(2014年)までは、ほとんどの人にとって相続税は無縁のものでした。なぜならば、2014年までの相続税の課税対象者の割合は全国平均で4%しかなかったからです。

 

しかし、2015年以降の相続に関しては、税制改正の影響で、相続税の課税対象者の割合が倍増、2016年に発生した相続では8%強の課税割合となっています(2017年の相続税の申告事績は2018年12月に発表予定)。

 

【税制改正の内容】

相続税の基礎控除額(非課税限度額)の4割引き下げ

・2014年以前:5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

・2015年以降:3,000万円+600万円×法定相続人の数

 

現在の相続税の基礎控除額は、相続人が2人の場合で4,200万円、3人の場合で4,800万円です。自宅の不動産や預貯金を合わせると「軽く超えてしまう」人が少なくない金額ではないでしょうか。

 

さらに、土地の路線価はここ数年上昇し続けており、相続税の納税者・納税額はますます増加の傾向にあります。もはや、「相続税は一部の資産家だけの問題」ではなくなりました。

 

そして、その先に待っているのが「税務調査」です。

 

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税務調査とは、申告された内容に間違いがないか、質問し検査することをいいます。具体的には、亡くなった人(被相続人)の自宅を調査官が訪問し、遺族(相続人)にさまざまな角度から質問をし、申告書に記載された財産や債務等の内容や計算が適正かどうか、その根拠となる書類などを細かくチェックすることをいいます。

 

日頃、税務署とは無縁の人に税務調査の印象を聞くと、「緊張して心臓がバクバクした」「頭が真っ白になった」「不安で眠れなかった」といった回答が返ってきます。人生初めての局面に立たされるわけですから、不安になるのも無理はありません。

 

税務調査を好む人は誰もいません。できれば税務調査は避けたいものです。しかし、税務調査は断ることはできず、法律上、受けなければならない義務が課されているのです。

財産が高額ではなくても「税務調査」の可能性はアリ

2015年以降、相続税の申告納税者が急増したため、税調調査の実施割合は低下しましたが、それでも10%以上の割合で税務調査が行われています。他の税目と比べるとその割合の高さは際立っています(法人税の実地調査割合:約3%、所得税の実地調査割合:約0.3%)。

 

それでは、どのようなケースが税務調査の対象になるかというと、決して財産の多寡だけで調査先が選定されているわけではありません。もちろん、財産が多ければ不明な点も多くなることが考えられますので調査の確率も高くはなりますが、申告された財産が高額でなかったとしても税務調査が入ることはよくあります。

 

「税務調査」の入る可能性が高いケース

 

□ 家族名義の預金が多い

□ 取引銀行や取引証券会社が多数ある

□ 生前に多額の預金の引き出しがある

□ 多数の生命保険金の支払いがある

□ 生前に金地金の売買を多数(多額に)行なっていた

□ 相続人間で争いがあり、別々の申告書が複数提出されている

 

上記に1つでも該当する場合には、税務調査の候補先として選定される可能性が高まりますので注意が必要です。

申告から1年以上経った後に、電話予告が来ることも…

税務調査はある日突然、電話で予告されます。相続税の申告が済み、1年以上も経過したころにかかってくることもあり、多くの場合、驚きはもちろんですが、難しい対応に追われます。

 

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税金は払い終わっている(と思っている)わけですから、既に遺産を使ってしまっているケースもあります。また、相続した財産の多くが不動産で、相続税を払ったら現金はほとんど残らなかったという人も少なくありません。

 

いずれにせよ、今の日本では「相続税の税務調査は他人事ではない」ということを、頭の片隅には置いておきたいものです。

 

 

服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

 

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本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2018年7月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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