
自由度の高い金融市場で知られる香港ですが、仮想通貨はどのように取引されているのでしょうか。本連載では、香港における仮想通貨の取引の現状や規制を解説するとともに、香港の現地情報についてもご紹介します。※本連載は、小峰孝史が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。
\4月22日(土) 開催・WEBセミナー/
パンドラ文書を見て学ぶ
「海外法人・オフショア法人」の合法で賢い使い方
中国は2017年に「仮想通貨ビジネスの制限」を発表
数年前からBit Coinを中心に徐々に関心が高まってきた仮想通貨。その一方、消費者トラブルの発生、さらには、通貨高権(通貨を発行することのできる国家の権限)が侵されることへの国家権力の不安などから、仮想通貨を取り締まろうという動きも出てきました。
自由度の非常に高い香港ですが、仮想通貨についてはどうでしょうか?
2017年9月4日、中国人民銀行等が共同で、「トークン発行による資金調達のリスク防止に関する告知」を公布しました。この告知により、大きく、以下の2つが禁止されました。
●ICOを含むトークン発行による資金調達
●ウェブサイトによる、法定通貨とトークンの両替、仮想通貨間の取引、トークンの売買、清算機関としてのトークンの売買、価格設定、情報仲介等のサービス
この告知により、中国大陸での仮想通貨ビジネスが大きく制限され、この告知発表後、Bit Coinの価格も大きく下落しました。
香港では、これまで仮想通貨に関する規制はありませんでした。
香港に仮想通貨規制が存在しないことを最もよく表しているのは、Secretary of Financial Services and the TreasuryのK.C.Chan氏の以下の発言でしょう。

“Bitcoins are not widely circulated in Hong Kong and do not pose a significant threat to the financial system, so there is no need to introduce legislation to regulate virtual commodities trading or to prohibit people from participating in such activities.”
日本語訳すると、こんな感じでしょうか。
「ビットコインは香港で広範に流通しておらず、金融システムへの重大な脅威とはなっていないため、バーチャル商品取引を規制する立法したり、かかる行為に人々が関与することを禁止する必要は存在しない。」
一方香港は、新たな規制は行わず既存事項の再確認のみ
2017年9月5日、香港SFC(証券・先物取引監察委員会)は、ICOにより発行されたトークンにつき、声明を発表しました。
この発表された9月5日は、中国でICOを含むトークン発行による資金調達等が禁止された翌日というタイミングもあって、「中国大陸に続き香港でも、仮想通貨が禁止されるのか?」「ICOだけでなくプレセールも規制されるのか?」など懸念が一気に広がりました。
この声明の中では、以下の3つの性質を持つ仮想通貨は有価証券として規制されるとされました。(厳密に言えば、この3つの性質をもつものに限っている訳ではありません。)
1.仮想通貨が、会社の株式・持分を表す場合
2.仮想通貨が、会社の債務を表す場合
3.仮想通貨販売によって得た資金を一定の財物に投資し、得た利益を投資者に還元する場合
これは、仮想通貨に対して新たな規制を及ぼしているように見えるかも知れませんが、そうではないと思います。当たり前のことを再確認しただけです。
一番分かりやすい1(仮想通貨が、会社の株式・持分を表す場合)で考えてみましょう。
会社の株式・持分を、「XXX Limited、100株」などと書いて流通できるようにしたものが株券です。当然有価証券です。
もし、会社の株式・持分の「XXX Limited、100株」という内容を紙に書くのではなく、仮想通貨の上に表したとしたら、これは、株券ではないですが、内容的には同じく有価証券と言うべきでしょう。
つまり、1は株式、2は社債、3は集団投資スキームという、元々有価証券であり、仮想通貨の形式をとったとしても、有価証券の規制を免れられる訳ではありませんよ、と念押しをしただけ、とみるべきように思います。
新しいビジネスに対して、中国・香港の対比が改めて分かった2日間でした。
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【4/5開催】「特別受益」の基本知識と争族トラブルの事前防止策
【4/6開催】金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術