「温まりにくく冷めにくい」特性を持つコンクリート
RC造住宅には「寒そう」「結露が発生する」というイメージを抱いている人も少なくありません。RC造住宅は気密性が高く、湿気がたまりやすいという印象から、結露が発生しやすいと思われていたのです。
そもそも結露は空気中の水蒸気が急激に冷えることで発生します。そのため、外気の影響を受けやすい窓のそばや、温度差が生まれる浴室のまわりでよく見られるのです。
その点、RC造住宅で使用されるコンクリートは外気の影響を受けにくく、「温まりにくく冷めにくい」という特性があります。熱を物質内に蓄える「蓄熱性」が高い素材なので、一度暖房などで温まってしまえば、長時間一定の温度を保ち続けられるうえに、壁式構造の場合は気密性が高く、温められた空気が外に逃げないという特徴も持っています。
[図表]RC造壁の特性
ただし、長時間留守になるなどで室内の温度が下がってしまうと、温まりにくく冷めにくい性質が裏目に出てしまいます。帰宅後、暖房をつけても、なかなか温まりにくいのです。そのため、かつてコンクリート打ちっ放しの住宅では結露が発生するケースも見られました。しかし近年はさまざまな建材を利用することで、ほとんど発生しないレベルにすることが可能です。
快適な住まいに重要なのは「伝導」と「輻射」
例えば、私の会社ではコンクリートの持つそういったマイナス面をカバーする方法として「外遮熱」を推奨しています。簡単にいえば、外壁に遮熱材を取り付けることなのですが、この効果を理解するためには、まず住まいにおける熱の伝わり方について知る必要があります。
例えば、部屋が寒くなるのは室内の熱が逃げてしまうためですが、熱のエネルギーが伝わる方法としては、以下の三つがあります。
●伝導
その名のとおり、熱を伝える現象です。例えばフライパンで肉が焼けるのは、コンロの火が持つ熱エネルギーがフライパンを通って肉に伝わるためです(ちなみに、フライパン自体が温まるのは「蓄熱」によるものです)。
通常、熱は高温部から低温部に伝わっていく性質があるため、室内の暖かい空気は壁や床、天井に触れることでより寒いほうへと流れていきます。熱の伝わりやすさを示す「熱伝導率」は物質によって違うので、住宅の建材としてはなるべく熱伝導率が低い(熱が伝わりにくい)ものを選ぶことも大切です。例えば、鉄やアルミニウムなどの金属は熱伝導率が高くすぐに熱が伝わりますが、木材やコンクリートなどは熱伝導率が低く、熱を逃がしにくいため、保温効果が得られます。
●対流
空気は暖まると膨張し、比重が軽くなることで上昇していきます。室内で上のほうは温かいのに、足元が冷えることがあるのはそのためです。この場合、暖かい空気を移動させることで、部屋全体を暖めることができます。このように、熱を持つ物質自体を移動させることを「対流」といいます。
エアコンによる暖房はこの対流を利用したもので、風を送ることで部屋全体を温めているのです。当然ながら、隙間があると暖かい空気が風に乗って外へ漏れてしまうため、気密性が高い家のほうが効率的に温めることができます。
●輻射
「輻射」(ふくしゃ)とは、ある一点から放射状に放出されることで、「輻射熱」とは、空気中の電磁波によって運ばれる熱エネルギーのことをいいます。最も身近な例は太陽や電気ストーブです。いずれも触ってもいないのに熱を感じるのは、それぞれが発している電磁波を感じるためです。輻射熱は、それぞれが持つ蓄熱性と関係しており、蓄熱性が高いほうが、長時間輻射熱を放出できます。
このように熱の伝わり方には三つの種類がありますが、快適な住まいを考える際に重要なのは「伝導」と「輻射」です。暖かい空気は主に伝導によって壁や天井(屋根)へと伝わり、輻射によって室内や屋外へと放出されていきます。ですから、夏であれば屋外の熱い空気を室内に伝えないこと、冬であれば部屋の暖かい空気を逃がさないことが重要です。