前回は、RC造住宅のコンクリートの「蓄熱性」がもたらすメリットとデメリットを解説しました。今回は、木造住宅とRC造住宅における「断熱材」「遮熱材」の例を見ていきます。

木造住宅の断熱材となる、グラスウールや発泡ウレタン

木造住宅の多い日本で、夏涼しく、冬暖かい住まいを実現する方法として、断熱材の利用があります。「断熱材」は熱の移動や伝導をしにくくする素材で、外壁と内壁の間に熱を通しづらい断熱材を入れることで、室内の温度を調整する役割を持ちます。使用される素材としては以下の三つがあります。

 

●グラスウール

ガラスを溶かして作った繊維を分厚いマット状に加工した部材で、繊維により空気の対流を止めることで断熱性を発揮するものです。壁や天井裏、床下などあらゆる場所で使うことができ、施工が簡単なので、近年も根強く利用されています。ただし施工が適切でないとズレてしまい、断熱効果が低下するなどの問題点があります。

 

●発泡ウレタン

泡状のウレタンを断熱したい部位に吹き付け、ウレタンに含まれる空気により熱伝導を抑えることができる断熱材です。吹き付けたあとは固まるためズレなどの心配がなく、施工も比較的簡単で、近年、グラスウールに代わって普及してきました。

 

●板状ウレタンフォーム

通称FP板と呼ばれ、発泡スチロールのような板状の断熱材です。発泡ウレタンを用いて工場生産されるものであり、基礎や床下、屋根などの断熱に使うことが多くあります。

 

また、断熱材の取り付け方には内側に取り付ける「内断熱」と外側に取り付ける「外断熱」の二つがあり、得られる効果が違います。

 

●内断熱

壁などの構造材の内側に断熱材を入れて、外気温の影響を防ごうとする断熱方法です。施工が簡単で低コストですが柱や梁などの構造材からの熱伝導を防げず、気密性が低いので、断熱性能は低めです。壁の内側に湿気がたまり、結露が発生することがあります。

 

●外断熱

建物全体を外側から断熱材でくるむ断熱方法です。断熱材の外側に空気層をつくり、さらにその外側に仕上げ材を配置します。気密性が高いため断熱性能が高く、湿気がたまったり結露したりする心配はほとんどありません。建築コストは内断熱に比べて高めです。

 

ところが、ここで一つ問題があります。断熱材は熱を伝えにくくするために用いられるため、いわば「伝導熱」対策にしかならないということです。

 

前回、熱の伝わり方には「伝導」「対流」「輻射」の三つがあるとお伝えしましたが、私たちが室内で暑い・寒いと感じる原因の多くは、壁や床、天井から放出される「放射熱」にあるのです。割合でいえば、伝導が5%、対流が20%、そして輻射が75%だといわれていますから、輻射熱のコントロールが快適な住まいを実現するためのカギを握ります。

 

また、断熱材は熱をため込む蓄熱性が高い素材でもあります。ですから、暑さが厳しい真夏になると、日中、ゆっくりと日光の熱をため込んだ断熱材から輻射熱が放出され、夜になると家の中に熱がこもってしまうのです。いわば遠赤外線グリルでジワジワと焼かれているような状況です。

 

断熱材に蓄えられた熱は、その他の建材を劣化させる原因にもなります。例えば結露は温度差によって生じると前述しましたが、夏、暑いからと室内を急激に冷やすと、内壁と断熱材の間に温度差が生まれ、内部結露(壁の内側にできる結露)が発生することがあります。内部結露は周囲の建材のカビや錆びの原因になりますから、住まいの劣化を進めてしまうのです。

RC造住宅では、外側に「遮熱材」を取り付ける方法も

RC造のコンクリートも蓄熱性の高い素材ですから、打ちっ放しでは同様の問題が発生します。そのため、私の会社では熱エネルギーを反射することで建材に熱を伝えづらくする「遮熱材」を使用しています。

 

アルミが電子レンジの電磁波を反射するように、遮熱材を外側に取り付けることで、夏は日差しの熱を反射し、冬は室内の熱を再び室内に戻す効果が得られるので、外気の影響を少なくすることができるのです。

 

[図表]RC造壁の特性

 

現状ではまだ取り入れているケースはまれですが、今後は木造や鉄骨造を含めて、あらゆる工法で外遮熱が人気を博すものと私は考えています。

安心・快適な家を手に入れたい! 鉄筋コンクリートでマイホームを建てる

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磯崎 慎一

幻冬舎メディアコンサルティング

美術館やランドマークなどに使われ、高いデザイン性が認められながらも、「部屋に熱がこもりそう、寒そう」というイメージが強い鉄筋コンクリート造の住宅。 しかし実際には「夏は涼しく、冬は暖かい」という優れた居住性があ…

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