一見デメリットしかない相続財産だったが・・・
前回紹介した事例では、土地の現実の価値が、想定していた価値に比べて大きくマイナスになってしまいましたが、逆に、ケースによっては、工夫次第で、相続した土地の価値を大幅にプラスにできる場合もあります。
筆者が過去に扱った相続案件で、相続財産に含まれていた地方の農地の持分を放棄するよう、他の相続人に求められた依頼人から、それに応じるべきか否か相談を受けたことがあります。農地の放棄を求めてきた相続人は、被相続人が営んできた農家の跡継ぎで、農地以外の相続財産としては、約1000万円の預貯金とほかに時価600万円相当の宅地が残されていました。
農地全体の固定資産税評価額を確認してみると2万〜3万円程度であり、仮に売却したとしても代金は微々たるものであることが予想されました。また、依頼人が現物のまま持分を相続した場合には、毎年、その管理費を負担しなければなりませんでした。
農地から宅地への変更で大幅に価値がアップ
このように、たとえ相続したとしても、依頼人にとってあまりメリットがなく、むしろデメリットとなるおそれがあったので、当初は、放棄する方向で考えていたのですが、前述した宅地が、農地の隣にあることに気づき、ふと一つのアイデアがひらめきました。
「この農地を宅地変更できたら資産が増えるのではないか!」と。
すぐに地元の不動産開発業者に連絡をとって、宅地変更の可否を尋ねると、可能であるとの答えが返ってきました。宅地にして売却すれば、農地のまま売る場合に比べて、相続財産が2000万円増える計算でした。そこで、依頼人の賛同を得たうえで、農地を宅地に変更して売却することを跡継ぎの相続人に提案してみると、「そんなに増えるのですか!」と二つ返事で了承をいただきました。
こうして、宅地変更によって資産価値が大幅にアップした農地を売却して得た代金を分け合うことで、相続人全員が満足のいく成果を得ることができたのです。
このように、相続した不動産を、「○○に変えてみたら」「現状では、○○にしか利用されていないが、○○という使い道もあるのではないか」などと別の角度から眺めてみることで、それまで気づかないままでいた新たな価値を引き出せる場合があります。不動産を相続した場合には、ぜひ試しに、そうした視点からも検討してみてください。