建て主の「必要以上の現場介入」はトラブルのもと
前回の続きです。建て主が自分の役割を忘れて相手の役割に口をはさむようなことがあれば信頼関係は崩れ、トラブルに発展することもあります。しかし、初めて家づくりを行う建て主でも自分の役割をきちんと果たせば、家づくりは必ず成功します。
建築知識の専門的な学習──。建て主が起こしやすい間違いの一つです。知識を学んだ建て主の中には、さまざまな断熱工法を比較し、評論家のように建築業者と交渉する方がいます。
建築に関する専門知識を学ぶのは、建て主ではなく建築業者です。建て主が建築知識を学んでも、現場で役立つことはありません。もし、知識を習得した建て主が断熱工法を指定する、あるいは施工方法を指示するなどして、その家が快適にならなかった場合、全ての責任は建て主が負うことになります。
建築業者は建て主の指示にしたがって施工しただけなので、責任を問われることはありません。ウソのような話ですが、実際に起こり得ることです。
建築中はさまざまなトラブルが発生します。施工業者の怠慢や設計ミスは論外として、それ以外の要因の一つは、営業担当者との口約束、建て主による無理な設計変更、そして建て主の必要以上の現場介入などです。ときには建て主と建築業者との間に生まれた小さな不信感が大きなトラブルに発展するケースがあります。
建て主の役割は「どんな家に住みたいか」を考えること
こうしたトラブルを未然に防ぐには、建て主の役割と建築業者の役割をはっきり区別することが大切です。
では、建て主の役割について考えてみましょう。
建て主の役割は、どんな家に住みたいかを明確に考えることです。どんな工法を使うようにオーダーするのではなく、この家づくりを通じて、どのような暮らしを得たいか。それによって建築業者が受け止める内容、予算も変わります。