前回は、高額物品の売却に「競り上げ式オークション」が向いている理由を取り上げました。今回は、「オークション」で高値売却を実現するための条件を見ていきます。

一人だけ際立って高い評価をする人がいると・・・

前回詳しく紹介した競り上げ式オークションは、高く売るための優れた手法だ。しかしときにはこれに適していないケースもある。それは「一人だけ際立って高い評価をする人」がいるときだ。不動産を例にいうと、その人はその土地に強い愛着があり、2億円までは支払ってくれることが分かっている。それ以外の人のなかでは、せいぜい1億円までの支払いが関の山だとする。このときは競り上げ式をしないほうがよい。

 

話を整理しよう。いま入札者が二人いて、Aさんは2億円、Bさんは1億円までなら支払う意思があるとする。この情報を売る側は知っている(これは重大な仮定だ)。このとき競り上げ式を使うと、結果はどうなるか。競り上げが始まり、価格が上がってゆくが、その価格が1億円を上回ったときにBさんはオリる。ここで競り上げが停止して、Aさんが勝者となり1億円(あるいは1億円を少し上回る金額)を支払う。

 

しかし、このときはオークションをしないで、最初からAさんに「1億9900万円で買いませんか」と相対取引を持ちかけたほうがよい。うまくいけば競り上げ式オークションのときより約1億円高く売れる。売る側にとって「誰がいくらまで支払う意思があるか」は、きわめて金銭的価値の高い情報なのだ。ただし、現実的に、売る側がその情報を知っていることは決して多くない。

競合する二人以上の入札者を一定期間内に集められるか

物件によっては、オークションを開催しようにも入札者が集まらないものもある。分かりやすいのはへき地や山林などだ。欲しい人が現れないものは、オークションだろうがなんだろうが、販売方法によらず売れない。そこまでではなくとも、個性の強い物件や、活用の難しい土地は、買い手を探すのに何カ月もかかるのが通常である。

 

オークションを開くためには、二人以上の入札者を一定期間内に集めねばならない。一人目が現れてくれたあとで、その人に「二人目を待ってください」と何カ月も待ってもらえはしない。つまり、欲しい人がなかなか現れない物件は、オークションに適していない。

 

このときはオークションを開けない。そして多くの場合、まずは「これでどうかなあ」というくらいの値段で市場に出してみる。買い手が現れない様子だと、少しずつ値段を下げていく。不動産のチラシでだんだん値段が下がっていくやつだ。これは買い手が現れるまで、値段を下げ続ける(あるいはどこかで売るのを諦める)。これは見ようによっては、「その値段なら買う」人が現れるまで下げていく、「競り下げ式オークション」のようなものだ。ただし本物のオークションと違って、買い手を見つけるのに時間がかかる。

 

こう考えていくと、指値での販売と、オークションでの販売には、ひとつ大きな違いがあることが分かる。オークションのほうは、競合する二人以上の入札者を、一定期間内に集めなければならないのだ。それができない販売物はオークションに向いていないし、オークションを事業として展開するためには入札者の広いプールをもっていなければならない。何をどのやり方で販売するのが高値になるかを見きわめるのは、事業者の腕の見せどころである。

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