前回は、「第一価格オークション」「第二価格オークション」の仕組みを解説しました。今回は、高額物品の売却に「競り上げ式オークション」が向いている理由を見ていきます。

高く売るなら「競り上げ式オークション」だが・・・

オークションには無数の方式がある。どの方式を用いるかで結果が変わったり、案外変わらなかったりする。ではそのなかで、どの方式がよいのだろうか? もちろんこれは何を「よさ」の基準にするかによるが、ここでは「高く売る」ことを目標に考えよう。

 

不動産や宝飾品など、高額なものを売るときには、どの方式を使うかで収益が大きく変わることになる。1億円のものなら10%の変化で、1千万円が変わる。

 

結論からいうと、「競り上げ式オークション」が高く売れやすい。競り上げ式オークションがどのようなものかは、築地市場での競りを想像すると分かりやすい。これは入札者たちが一堂に会して、競り人が「1000円!」「1100円!」「1200円!」のように次々と競り上げていくものだ。もし「1200円」で一人だけが残るならば、そこで競り上げは停止してオークションは終了。二人以上残っているならば、競り上げは続く。なお、「一堂に会して」は、人間が実際に一箇所に集まる必要はなく、オンライン上に集うのでもかまわない。

 

前回触れた第二価格オークションを思い出そう。この方式では、競り上げ式と違って、入札者たちは一堂に会さない。各自は入札額を書いた紙を封筒に入れて、主催者に提出する。そして後日、主催者はすべての封筒を開けて、一番高い金額を書いた入札者を勝者として、二番目に高い金額を支払ってもらう。

 

実はこの第二価格オークションは、競り上げ式オークションと、ある意味で同じなのだ。たとえば3人の入札者(佐藤、田中、中村)がいて、土地を競り上げ式オークションにかける状況を考えてみよう。各自の「最大でこの金額まで支払ってよい金額」(最大支払意思額)は、「佐藤は9000万、田中は8000万、中村は7000万」だとする。

 

<第二価格オークションの結果>

前回述べたように、この方式は「正直が最善の策」となる仕組みだから、各自はその金額をそのまま入札額にすると考えるのが妥当だ。つまり佐藤は9000万、田中は8000万、中村は7000万を入札額とする。このとき第二価格オークションのルールより、佐藤が勝者となり、8000万円を支払う。

 

<競り上げ式オークションの結果>

競り人は、低い価格からスタートして、10万円きざみで価格を上げていくとしよう。

 

価格が6990万まで上がったとき、佐藤も田中も中村もまだオリていない。しかし次の7000万、あるいはその次の7010万のとき、中村は「もうこれ以上は支払えない」とオリる(どっちの価格でオリるかは趣味の問題である)。

 

ここで残っているのは佐藤と田中だ。競り人はさらに価格を上げ、あるとき7990万になる。そして次の8000万、あるいはその次の8010万のとき、田中が「もうこれ以上は支払えない」とオリる(どっちの価格でオリるかは趣味の問題である)。ここでオークションは終了だ。佐藤が勝者となり、8000万円あるいは8010万円を支払う。

 

大きな金額を扱っているので、10万円は相対的には小さな金額である。この金額を誤差として扱うなら、第二価格オークションと、競り上げ式オークションは、同じ結果を導くといえる。ただしこれは、最大支払意思額が「ブレない」ときにである。

最大支払意思額が「アップデート」される!?

それでは競り上げ式と第二価格では、どちらを使おうが構わないのだろうか。ここで注意すべきなのが、競り上げ式のもとでの「価値の更新」と「ヒートアップ」である。これらは最大支払意思額を「ブレさせる」ものであり、前節までの話では登場していなかった。

 

価値の更新とはこういうことだ。競り上げ式オークションのもとだと、競り上げが進む途中で、最大支払意思額がアップデートされる。たとえば佐藤がオリないさまを見て、田中は「佐藤はそんなにほしいのか。きっと俺が思うよりよい土地なのだな」と考えを変える。

 

ヒートアップは言葉どおりだ。田中がオリないさまを見て、佐藤は「負けてたまるか」と意地を張るかもしれない。また、そのさまをみた田中は、7000万円以上を支払ってでも勝とうとするかもしれない。

 

もちろんこのような「ブレ」は、入札者たちがそれぞれバラバラに入札をして、修正ができない第二価格オークションだと起きようがない。しかし、競り上げ式オークションだと開催の最中に、入札者たちが思考を進めたり、感情的になったりする。それが行動に影響を与え、結果として高値が付きやすくなる。

 

よって、とくに高額なものを売るときには、基本的には、競り上げ式オークションで売ることをおすすめしたい。ただし、なかには競り上げ式に向いていないケースや、そもそもオークションで売るのに向いていないケースもある。ここで大切なのが、経験にもとづく「どの方式が最も高値になるか」の見きわめなのだ。次回は、その見きわめについて述べよう。

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