「株式上場」と比べればはるかに簡単で敷居が低い
ICOとはInitial Coin Offeringの頭文字をとったもので、新規上場株式を表すIPO(Initial Public Offering)になぞらえてつくられた言葉です。
ICOとは企業や人が、オリジナルの仮想通貨を発行し、出資者を募る仕組みです。
ICOの場合、一から新しい仮想通貨を作るケースもあれば、ビットコインやリップル、イーサリアムなど既存の仮想通貨を活用し「山田さんが作ったイーサリアムベースの山田コイン(仮)」などを作るケースもあります。仮想通貨の発行事業者では、自社の仮想通貨を活用したICOサポート事業をしているところもあります。
仮想通貨はこれからも爆発的に種類が増えていくでしょう。これはビットコインやイーサリアムなどの「仮想通貨そのもの」が増える以外に、ICOによる派生型の仮想通貨も増えていくからです。
ICOのメリット
ICOの発行者、投資家それぞれのメリットを考えてみましょう。
【発行者のメリット】
①「株式上場」と比べればはるかに簡単で敷居が低い
現在日本に上場企業は3000社以上ありますが、上場するためには厳しい上場基準がありますし、上場するための手間暇、コストは当然大きいものになります。一度上場したとしても基準を満たせない場合、上場廃止になるケースもあります。ICOは株式上場よりも、こういった手間がかかりません。やろうと思えば、ICO自体は誰でもできます。
②「銀行融資」と比べてもはるかに簡単で敷居が低い
「株式上場」で資金を集められるほどの事業規模がない会社の場合、頼りは銀行の融資ですが、銀行から融資してもらうのも当然厳しい基準をクリアしなくてはなりません。さらに、銀行融資とは違って、ICOであれば購入者に対し返済の必要はありません。
【投資家のメリット】
投資家のメリットは株式投資と同じです。ICOにより、購入した仮想通貨の価値が上がれば利益を得ることができます。
【ICOで気を付けること】
これは、第1回で挙げた「仮想通貨を購入するときのポイント」と全く同じです。ICOの発行者が何をしようとしているのか、集めた資金で何をしようとしているのかを見極めましょう。「国」も「事業」も「人」もわからないICOに投資をしては絶対にいけません。
あとを絶たないICO詐欺の実態とは?
残念ながらICO関連の詐欺も横行しています。
ICOで新たな仮想通貨が作られる際には「ホワイトペーパー」と呼ばれる仮想通貨の理念や目的などが記載された書面が作られます。ですが、ホワイトペーパーで書かれていた景気のよさそうな事業が実際には行われていなかった……、などがよくあるICO詐欺です。
なお、現時点で、法的には「ICO詐欺」とは何か、というものはまだ定義されておらず、被害者が被害を受けたと思ったら詐欺とみなされています。
ちなみにICOではビットコインやイーサリアムやリップルなど既存の仮想通貨をベースに、新たな仮想通貨を作るケースもあります。しかしその場合、既存の大手仮想通貨が、その新規仮想通貨の価値を担保しているわけではありません。日本円が「日本円で詐欺を働く人」の詐欺内容を担保しないのと同じで、あくまで通貨は媒体にすぎないのです。
ICOはIPOほど難しい基準がありません。「手軽にできる」ということはメリットでもありますが、それだけ「事業として志がなさすぎる」企業や個人が混ざりこみやすくはなるという点は注意が必要でしょう。
前項で「仮想通貨投資で一番やってはいけないこと」として、「仮想通貨を全部買う」を上げましたが、「目についた上場株式を全部買う」よりも「目についた仮想通貨を全部買う」の方が、玉石混合の「石」の割合は確実に増すでしょう。
有象無象のICOですが、まだICOはVALU同様黎明期の仕組みであり、体制も整っていません。既存の金融システムに頼らずに個人が資金を調達できるICOの仕組み自体は意義があります。全否定せず、長い目で見ていきたいですね。