思惑とは逆の値動きをすると「含み損」が発生
資金以上の取引ができて、下落局面でも儲けられるなんて、いいことづくめのようにも見える信用取引ですが、メリットばかりではありません。思惑通りの値動きをすれば利益が大きい反面、意図とは逆の値動きをすると損失も非常に大きくなってしまいます。
現物株であれば、最悪の失敗をしたとしても資金がゼロになるだけですが、信用取引では資金額を上回る投資をしているため、元手の額を超える損失を出すおそれがあります。
信用取引の後で思惑とは逆の値動きをしてしまうと、含み損が発生します。含み損の額は証拠金から差し引かれて評価され、投資に対する証拠金の割合が一定水準を下回ると、証券会社から追加の証拠金(追証)を求められることになります。
そして、たとえ追証を差し入れても、相場が戻らなければ後から入金した追証も含めすべての資金を失ってしまうこともあるのです。
追証を入金できなければ強制的に反対売買をさせられるうえ、多くの場合はそのあとも損失が残り、それは証券会社に対する借金になってしまいます。
信用取引で失敗すると資金をすべて失うばかりか、新しい借金まで背負って市場から強制退場させられることにもなりかねません。挑戦するならそのしくみとリスクを十分理解し、連載第3回で紹介している損切りのルールを厳重に設定したうえで、慎重な取引を心掛ける必要があるでしょう。
一般的に「信用取引」=制度信用取引のことを指す
また、信用取引は証拠金を担保に株を借りてきて取引するので、金利など各種のコストがかかります。期間は長いほどこうしたコストはかさむので、なるべく短期で勝負をつける必要があります。
ちなみに、信用取引には6か月の期限がある「制度信用取引」と、期限のない「一般信用取引」の2種類があります。制度信用取引は6か月の期限内に反対決済をする必要があるのに対し、一般信用取引には期限がありません。ただし、一般信用取引の多くは買いからしか取引ができず、空売りができるのは一部の証券会社に限られます。
一般的に「信用取引」というと制度信用取引のことを指し、一般信用取引はその名前とは裏腹にむしろ特別な信用取引であると覚えてください。
現物株と同じ市場で扱われるため、信用取引を一切しない投資家でも、信用取引の動向をチェックしておくと市場の動きを予想するのに役立ちます。詳しくは第9回で解説していきます。