契約書はすべてに優先され、様々な条件を盛り込める
前回の続きです。
では、購入した物件を賃貸に出すときはどうでしょうか? アメリカにおける賃貸借契約は、オープンというよりも”フェア”といったほうが適切でしょう。
まず、すべてに優先するのが契約書になります。その契約書に記載されたすべてのことについて、オーナーは借り主に要求することができます。もちろん、借り主も同様です。
本連載の第7回では、アメリカでは単年度契約が一般的と述べました。しかし、これもはじめの契約次第です。1年といわず、3カ月契約でも半年契約でも構わないのです。
また、オーナーはさまざまなことを契約書に盛り込むことが可能です。ペット可とする場合でも、「猫はOKだが、犬はダメ」とすることもできます。ペットを飼うなら別途、数百ドルの家賃を設定するということも可能です。契約期間満了前に退去する場合でも、契約期間内の家賃を請求するという条項や、次の借り主が見つかるまで家賃の80%の金額を請求するといった項目を盛り込むことも不可能ではありません。
もちろん、入居希望者が条件の緩和を求めてきた際には、妥協点を探って、それを契約書に盛り込むというかたちになります。条件が折り合わなければ、別の入居希望者が現れるのを待つのみです。何しろ、アメリカ全土の空室率は10%未満。カリフォルニア州のロサンゼルスなどの人気都市になると、わずか3%程度です。法外な家賃設定にしない限り、多少オーナーのわがままを盛り込んでも、何カ月も入居者が現れないということは基本的にありません。
「違反行為・賃料改定」などにおいても強い権利を持つ
そもそも、アメリカでは日本と異なり、オーナーにも契約に基づく強い権利があります。家賃の滞納等の違反行為を犯した借り主には、速やかに強制退去手続きを取ることも可能です。
日本では、オーナーチェンジ(賃貸中)物件の内見はほとんど不可能です。私が初めてカリフォルニアのオーナーチェンジ物件を内見した際、借り主が普通に住んでいるにもかかわらず、現地エージェントが靴のままズカズカと室内に入っていったときの衝撃は忘れられません。日本であれば、家賃が3カ月滞納された段階で入居者に立ち退くよう告知し、それでも家賃が支払われず、退去しない場合などに限って、裁判を通じた強制退去手続きを取ることができるようになります。
しかし、アメリカでは2カ月ほど滞納されれば、強制退去を告知するのが一般的です。それも10万円程度支払って強制退去専門の弁護士を雇えば、あらゆる手続きを代行してくれます。
また、契約更新のたびに賃料改定交渉を行うのも一般的です。といっても、日本のように入居者が「家賃を下げてほしい」などと持ちかけるわけではありません。オーナーのほうが「次の更新の際には3%家賃を引き上げる」と値上げの告知を行うのです。